水質調査②
「治癒魔法の回復魔法ってどんな原理なんだ?」
幸助は不安を紛らわせるためにリアに話しかけ、時間稼ぎをする。稼いだとしても、飲むことは避けられないので、意味はない。
回復魔法や蘇生魔法、解毒、などを総称して治癒魔法というらしい。リアに教えてもらった。勉強になる。日本だったら何大学の何学部の何学科の何教授から教えてもらうことができるのだろうか。学費が高そうだ。
「原理ですか? そうですね……なんて答えればいいのでしょうか……?」
「生き物の回復は自然治癒が基本だろ? それを早めるために薬を飲んだり、手術をしたりする。それでも一瞬で治るってことはない。つまり自然治癒を助けるのが治療だ」
一度幸助はコップを置く。
「魔法の場合はどうなのだろう。たとえば、細胞の再生を早める効果があったり、薬のような成分が体内で生成されたりなど、回復魔法を受けた身にどんな変化が起きるかってわかっているのか?」
「そ、それはわからないです。とにかく治るだけです」
「じゃあ蘇生魔法はどうなんだ? とにかく蘇生するだけか?」
「ええ、特に原理はわかりません。ですが、死亡してから時間が経てば経つほど失敗のリスクは高まります」
「なるほど。生き返るには新鮮な肉体あるいは細胞の方が良いってことか。やはり自然治癒力の活性化が回復と蘇生の原理だろうか……。だとすると回復のし過ぎは過活性により身体の細胞がどんどん劣化して寿命が縮まってしまう可能性があるのではないだろうか」
「寿命が縮まるということは聞いたことがありませんが……」
リアが呆れ顔で言う。
「魔法に物理法則なんて意味ないか。まあいいや。じゃあ最後に一つだけ……回復、蘇生魔法を受けて副作用はないか?」
「副作用ですか? 回復魔法なら副作用はないと思いますが、蘇生魔法に関しては、蘇生後、眩暈や頭痛を起こす例は聞いたことがあります。ただそれは副作用と言うより、死亡時の症状の程度に影響されるようです」
「そうか、それは覚悟をしておこう」
安心を得るためにリアから話を聞いたが、特に気持ちに変化はなかった。むしろ蘇生後に自分がどうなっているか不安になった。
「それじゃあリアは杖を構えて蘇生魔法の準備をしておいてくれ。そろそろ始めよう」
幸助は汚染水の入ったコップを再び手に持つ。
「は、はい……」
「それじゃあ……いただきます」
幸助は水を一気に飲み干した。
「ぶはぁ」




