水質調査①
□◇■◆(幸助)
幸助は朝早くからリアと二人でリアの家の庭に並んでいた。
リアの弟は部屋に閉じこもっている。昨日会ったが、いつも通り具合が悪そうだった。ご自愛ください。
これからリュジーアに汲んできてもらった水を調べる。リアの家に泊まり、そのまま調査をする流れだ。
木製のバケツや樽にいっぱい汲んで運んできてくれたようだ。気合が入っている。
クラトゥ村の水を受け取るときのリュジーアは相変わらず元気いっぱいだったので、幸助は少し嫌な気持ちになった。
最初の実験としてリアの育てている植物に汚染水かけてみると、少し時間が経って花は萎え、やがて枯れた。即効性はないものの、悪影響のある毒か何かで汚染されていることがわかった。
リアは植物を魔法を使わずに育てているので、わが子のように手をかけていたのだろう。悲しそうな顔をしていた。
リアには申し訳ないと思ったが、実験ということで許してもらおう。しかしこれでもう植物での実験は終わりでいい。次の実験だ。
「本当にこれを飲むのですか?」
「ああ、人体への影響を調べる必要があるからな」
次の実験は、実際に人間で試してみるというものだ。
被験者は幸助。観測者はリア。
「いくら私が蘇生魔法を使えるからといって、目の前で死なれるのは気持ちのいいものではありません」
幸助自身も不安がないわけではない。しかし実感はないとはいえ一度死んでいる身。ここで死んでも悔いはない。うん、多分。
それにリアが蘇生の呪文を使えると聞いていたので、まあ大丈夫だろう。うん、多分。
「汚染の具合と魔物の実力がある程度分かるかも知れないからな」
「そうですけれども……。わかりました」
リアの目つきが変わる。
「勇者様の覚悟を無駄にはできません。それに私にとっても村人の救出の準備になりますから」
「浄水の魔法があればそれも覚えておいてくれ」
幸助が庭に運ばれている樽を指差す。
「あの水を使って練習してくれ」
「わかりました。しっかり調べて身に付けておきます」
幸助はコップに汚染された水を汲む。
これを飲むと死ぬとわかっていて飲まなければいけない。
リアが蘇生させてくれるとわかってもやはり覚悟がいる。




