城内見学③
「今回のクラトゥ村の依頼だが、準備が必要だ」
幸助はコーヒーを置く。
「王様にも色々言っていたわよね」
「ああ、そのことも含めて話をする」
幸助は目の前の三人を一瞥する。
「準備として、水質調査、現地調査、資料調査を行う」
「調査ですか……?」
リアが不思議そうにしている。
「まず水質調査だが……リア、君と行う」
「は、はい……。だから先ほどリュジーアさんにクラトゥ村の水を私の家に持ってくるように言ったのですね」
「ああそうだ。治癒士って回復とか蘇生ができるんだろ? 解毒とかはどうなんだ? 川の水の浄化とか」
「解毒はできますが、浄化はどうでしょうか……勉強しておきます」
「よろしく。それじゃあリアの家に泊まった翌日に水質調査を行う。目的は、汚染の具合と、汚染した魔物の特定と、その強さの計測。さらに汚染水の再生の方法を探る。リュジーアからクラトゥ村の水が届き次第、調査開始だ」
「わ、わかりました」
リアが小さなこぶしを作る。
「そして現地調査だが、これはトリストにお願いする」
「ぼ、僕ちゃんの仕事かにゃ」
指名され驚くトリスト。
「ああ。簡単な仕事だ。普通は馬車で四時間のところ、トリストなら一時間くらいなんだろ?」
「そうだにゃ! それくらいは余裕だにゃ」
半信半疑だったが、ドヤ顔をするトリストを見るところ、これは事実なのだろう。どんだけ早く動けるのだろうか。
「俺がトリストの家に泊まる日……明後日か? その午前中にクラトゥ村に行ってきてくれ。そして昼には戻って報告してほしい。村では観察以外何もしなくていい。後で見てきてほしいことのリストを渡すから、それに沿って確認してもらえばいい」
「わ、わかったにゃ」
初めての依頼で緊張し始めたのだろうか。トリストの顔が強張る。
「そしてレスティ、君とは資料調査をする」
「さっき王様に頼んでいたあれね」
「そうだ。持ち出せないようであれば城でやるしかないが、できるならレスティの家がいいと思っている。まあ、一通り目を通して覚えるだけだ」
「わかったわ。直ぐに出発しないのが気になるけど、まあ準備は必要ね」
「まあな。直ぐに助けたほうがいいのかもしれないが、俺らがやられては元も子もない」
「そうですね。私達がやられては本末転倒ですものね。それにもう夕方になりますし、今出発しても到着は夜中になるでしょうから、すぐにという訳にはいきませんね」
「たしかにそうね。夜中の外出は禁止されているものね」
「そう言っていたな」
レスティの家に泊まったときに聞いていた。
「確か午後十時から午前九時までだったよな」
「そうよ。約百年前にこの街を魔王が襲って以来禁止事項になったのよ」




