女神③
「さっきも言ったけれど、ここは死後の世界なの。そして君がここに連れてこられたのは、別の世界へ転移してもらうためよ」
にこっと笑ってスタイルのいいサイコな女が言う。
「私はその役割を果たす女神よ」
「それは今流行りの異世界転生ってやつか?」
自分のことを女神と言ったことはスルーする。自分を女神呼ばわりするなんて、恐らく高飛車なタイプだ。下手に出るとこちらがやけどする可能性がある。
「話が早いわ。さすが読書家ね」
スタイルのいいサイコな自称女神が楽しそうにしゃべっている。
「そう、その通りよ」
「読書は趣味だけど、異世界転生ものは読んだことがない。それにそもそもライトノベルは俺の趣味ではない」
どこで仕入れた情報だかわからないが、一部誤りがあるようだ。
「え、そうなの? 異世界転生もの知らないの? 君のプロフィールの趣味の欄に読書って書いてあったから、てっきり知っているのかと思ったけど……」
スタイルのいいサイコな自称女神が書類を指でなぞって目で追っている。
「誰だよ、そのプロフィール作ったやつ。確かに俺の趣味は読書だが、俺が好きなのはミステリーだ。麻耶雄嵩とか二階堂黎人とか」
スタイルのいいサイコな自称女神の持っているものは幸助のプロフィールらしい。
いつの間にやら個人情報が流出しているようだ。これは由々しき事態だ。
「それは異世界転生ものではないの?」
「ではない。知らないのかよ。螢とか人狼城の恐怖とか最高だぞ」
「あ、ああ、そうよね。そうそう、最高よね」
スタイルのいいサイコな自称女神が知ったかぶりをしている。
「で本当に異世界転生ものを知らないの?」
「本屋にはよく行っていたから、異世界転生ものが流行っているのは知っているが、詳しくはない」
幸助の言葉にスタイルのいいサイコな自称女神は戸惑いを隠せない様子だ。
「ま、まあいいわ。概要が掴めているようならとりあえず問題はないはずよ」
スタイルのいいサイコな自称女神がこほんと咳払いをして足を組みなおす。その際にパンツが見えた。水色だった。いいセンスだ。ありがとう。次の機会にも期待したい。
「それでは君を異世界へ転移させます」
「転移? 転生ではないのか?」
「そう、転移よ。転生というのは魂や記憶だけが転送されて新しい生命として異世界で成長していくものを言うのよ。転移は魂、記憶、肉体全てが異世界へ転送されることよ」
スタイルのいいサイコな自称女神が得意げに話す。
「今回の君のように死んだものを転送するときは転生が一般的だけど、私が担当する場合は赤ちゃんから始めるのは大変だろうってことで、慣れた身体を生成して死んだ直前の状態でお送りいたします」
ご覧のスポンサーの提供で、みたいなテンションで魂をお送りしないでほしい。
「それは女神様なりのお気遣いなのだろうか……」
「うふふ。そういうことよ」
死んだのなら知らないまま無と帰したかったというのが本音だ。そして転送されるのであれば転移より転生がよかったと思う。一からやり直したかった。ありがた迷惑ってやつだ。
「ありがたい話でしょ?」
女神なら感づけよという言葉が出かかったが、のどのところで間一髪止めることができた。