城内見学①
□◇■◆(幸助)
四人は使いの男の指示に従い部屋を出る。
その後は城の中を少し見せてもらい、昼食をいただけることになった。
昼食にしては遅すぎるが、王様からの心遣いだと使いの男は言っていた。
それに普段食べられないものが食べられるということで、遠慮なく甘えさせていただくことにした。
城内の見学中は誰もが「すごい」「きれい」「高そう」と語彙力の低い感想しか言うことができなかった。
しかしシーフであるトリストだけは意味合いが少し違った。幸助はそんなトリストの悪い手癖がでそうになると、周りに悟られないようにそっと諌めた。
一通り城内を見学させてもらうと、最後に食事の間に案内された。
使いの男が、扉を開けようとしたとき、中からリュジーアが出てきた。今まで食事をしていたようだ。
「はっ! 勇者様っ! この度はっ、村のっ、救出をっ、引き受けてっ、くださりっ、ありがとうございますっ! 腹ごしらえをっ、させてっ、いただいたのでっ、これからっ、村にっ、戻りますっ! すぐにっ、水をっ、汲んでっ、戻ってっ、まいりますっ!」
「お、おう。た、頼むぞ」
眉をひそめながら幸助は返事をする。
文節に「っ」を入れるリュジーアに幸助は温度差を感じているが、そんな気持ちは伝わることもなく、彼は勢いよく去って行った。
しばし沈黙が流れた。
「よ、よし。飯にしよう」
幸助が仕切りなおして、扉を開けた。
食事の間は広く豪奢なものだった。
高い背もたれの椅子、長いテーブル、といったイメージ通りの城の食堂だった。テーブルの上に置いてある磨き上げられた食器類は、どれもどんなに働いても買うことのできないほどの高価なものだろう。
幸助たちが入ってきたのを確認すると、支給係が食欲をそそる匂いと共に料理をワゴンで運んできた。普段食べることのできない高級な食材を使った料理だ。
幸助は席に早速席に着いたが、三人がなかなか席に着かない。料理が贅沢で呆気に取られているのだろうか。支給係が配膳するタイミングを見計らっている。
「今日は私の家に泊まったんだから、隣は私でしょ」
レスティの主張。
「今日は私の家に泊まる予定ですので、私が隣です」
リアの主張。
「とりあえず、僕ちゃんが隣に座ればいいにゃ」
トリストの主張。
幸助の隣を誰が座るか争っているようだ。
「そんなに俺の隣に座るのが大事なのか?」
呆れる幸助。
「テーブルが大きいから三人俺の向かいに座れよ」
あーだこーだ言う女性陣を否応なく向かいに座らせる。それに合わせ支給係が料理を配膳する。




