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異世界初心者  作者: 寿々喜 節句
第一章
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王との謁見③

「このレスティと、勇者一行が、王様の命を受け、クラトゥ村の魔物を退治し、生活用水の再生を行います」



 おいおい、勝手に決めるなよと、心の中でレスティに叫ぶが、王様とリュジーアが目を輝かせているので、もう取り消せないと判断する。



「よいぞぉ。よくぞ言ってくれたぁ。それではぁ、この件は任せるぅ」

 王様はレスティの返事に満足そうだ。



 まあ仕方がない。不本意だが依頼を受けることにしよう。


 考えを切り替えなくては。どうしたら最善を尽くせるか。



「勇者様、話は済んだから行くわよ」

 レスティがこちらに小さい声で話しかける。

「あれ? 私が決めちゃったから機嫌悪くしちゃった?」



 ちゃんと考えたいのでレスティをとりあえず無視する。


 この依頼をしてきたリュジーアという男はなかなか元気な男だ。体育会系っぽくて、あまり話をしたくないタイプだ。



「寝ているにゃ?」



 トリストも声をかけてくるが、気が散ってしまうので、返事はしない。


 村全体に被害が及ぶ、水の汚染の再生という課題……。



「勇者様……具合でも悪くなりましたか?」



 リアもこちらを伺ってくるが、無反応を突き通す。


 死者が出るほどの被害と、魔物の強さ……。



「レスティ、クラトゥ村はここからどれくらいの距離なんだ?」

 幸助がレスティに尋ねる。


「え、そうね。馬車で片道四時間くらいかしら?」


「僕ちゃんなら全速力で走れば片道一時間だにゃ」

 話を聞いていたのか、トリストが言う。



 幸助はもう一度考える。



「どうしたんじゃぁ? 勇者よぉ」



 王様の問いかけにはさすがに答えなければまずいだろう。



「王様、この依頼を受けるにあたって、少し準備をさせていただきたいと思っております」


「なんじゃぁ?」

 突然のお願いに戸惑った様子の王様。


「クラトゥ村の帳簿などを見せていただきたいのですが……」


「帳簿じゃとぉ? そんなものが必要なのかぁ?」

 王様はきょとんとした表情をしている。



 その表情には幸助も思わずかわいいと思ってしまった。女子の気持ちが少しわかった。



「はい。準備として必要です。クラトゥ村の会計簿や住民台帳、詳細な地図、そのほか村に関する資料を見せていただきたいです」


「秘密が多いんだけどなぁ……。まあよぃ。見せられる範囲で見せよぉ」


「ありがとうございます。そしてもう一つ」

 幸助はリュジーアに顔を向ける。

「君に一つ頼みがある。村の川の水を汲んできてもらいたい」


「それくらいっ、お安いっ、御用ですっ!」


「できるだけ多く汲んできてくれ」

 幸助はリアを指さす。

「その水はこちらのリアの家に届けてくれ」


「はいっ! 喜んでっ!」

 リュジーアはお酒が飲みたくなる返事をする。



 考えられる準備はできた。あとはモノが揃うのを待つだけだ。



「それでは王様、吉報をお待ちください」



 これでここにもう様はない。帰ろう。


 四人は王様に頭を下げて、謁見は終了した。



「よろしくぅ」

 約束を取り付けたとみると、王様は用は済んだといわんばかりに席を立ち、奥の間へ消えていった。



 使いの男がこちらに近づいてきて、早くこの部屋から出るようにと、幸助たちを促した。

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