王との謁見②
扉の向こうは広い部屋だったが、十メートルくらいだろうか、まだレッドカーペットは続いていた。
その先には一段高くなっているところがあり、立派な椅子に王様が鎮座していた。王様がどんな人かは知らなかったが、雰囲気ですぐにわかった。
王様の少し手前まで歩くと、レスティが止まった。それにあわせて幸助たちも止まった。
レスティが片膝を立てて座ったので、三人も真似をする。聞かなかったこちらも悪いとは思うが、こういう作法があるのなら、先に言っておいてほしかった。
「我が国の王、グランルージュ王。このたびはお招きいただき感謝申し上げます」
レスティが普段とは違ったトーンで王様に挨拶を始める。
「我が名はレスティ。そしてここに勇者と二名の従者を連れてまいりました」
「わざわざ来てもらってすまなかったのぉ。レスティよ、顔を上げぃ。他の三人も緊張するでないぞぉ」
物腰柔らかな好々爺といったところか。威厳をあまり感じない人物だ。
「はっ。ありがとうございます」
レスティがお礼をいい、顔を上げたので、三人も例に習って同じく顔を上げる。
しかし二人の話の内容的には、レスティの従者として三人が城までやってきたような気分になる。
「今回来てもらったのにはわけがあるのじゃぁ。まあ訳もなく呼び出すことはないんじゃがぁ」
王様はけらけらと笑っている。
「それじゃあ連れてまいれぇ」
女性はこういうお年寄りをかわいいと表現することがあるが、幸助にはよくわからない。犬とか猫とかならかわいいと思うが、お年寄りをかわいいというのは失礼ではないだろうかと思ってしまう。ただ、思うだけなので、そういう人を咎めたりすることはないが。
王様の合図で使いが奥の部屋から一人の男を連れてきた。
「勇者様っ! お助けくださいっ!」
ものすごい勢いと圧でものを言う男だ。初対面相手に距離感の間違った声の張り方をしていると思った。
「な、何でしょうか……」
勇者様といわれたので幸助は答えるが、威圧感で及び腰になる。
「私はっ、リュジーアと言いますっ! 勇者様っ! 私の村のっ、クラトゥ村でっ、多くの人たちがっ、突然っ、病にっ、かかりましたっ! 最初はっ、原因がっ、わかりませんでしたがっ、調べてみたところっ、魔物が出没っ、していることがっ、わかりましたっ!」
スタッカートなしゃべり方で聞いていて疲れる。
小説だったら読みにくいだろうし、作家も書くのにストレスがかかるだろう。
このリュジーアという男はしゃべるのに慣れていないのだろうか。
「勇者よぉ、頼みを聞いてくれぇ。褒美は弾むぞぉ」
王様はねだるように言う。
これも女子はかわいいと言うのだろうか。おじいさんのおねだりをかわいいと言うのだろうか。
「え……ああ……そうですねぇ……」
できることなら受けたくない。とりあえずはぐらかす。
「それにクラトゥ村の管理は孫のルヴィがしておるのじゃぁ。祖父の顔を立てておくれぇ」
「そ、それは、大変ですねぇ……」
「勇者様っ! 私たちのっ、村をっ、お救いっ、くださいっ!」
勇者へのRPGっぽい依頼が入ってしまった。やはりできれば避けたいと思う。
「勇者様、困っている人たちを助けましょう」
リアは治癒士だからこういった状況では力になりたいと思うのだろう。
「これは僕ちゃんたちの出番だにゃ」
案外トリストも乗る気だ。魔物退治がしたいのか、その後の褒美が目当てなのかは計りかねる。
「勇者様っ! 死者もっ、出てっ、しまってっ、いるのですっ! どうかっ、お助けっ、下さいっ!」
リュジーアが頭を下げる。
「えーっと……あの……」
幸助がどう断ろうかと考えごねていると、今まで黙っていたレスティが剣を床に勢いよく突き立てた。大きな音が鳴ったので、レスティ以外の三人はビクッと肩を震わせた。




