招集命令③
「え、ちょっと待って。俺、レスティに連れて行かれるの?」
「そうね、しょうがないわね。私が連れて行ってあげるわ。二人はここで待っていてね」
レスティが二人にマウントを取る。幸助への手紙なのだから俺に朝伝えてればよかったものを、マウントを取りたいがために、ここクルミカフェで、みんなの前で、発表をしたのだろう。
「それは違うのではないでしょうか」
リアが反論する。
「勇者様は住所を持っていません。そのため、共に行動をしているレスティさんの家にたまたま届いたのではないでしょうか。私の家でもトリストちゃんの家でも良かったと思いますが、たまたまレスティさんの家にたまたま届いたのだと思います」
何度たまたまと言うのだろう。それだけ強調したいということか。
「だ、だから何よ」
「ですから、これはレスティさん宛てではありますが、勇者様の召致命令ですので、実質このパーティ全員に対する召集命令と考えるのが妥当ではないでしょうか?」
「さすがリア姉! その通りだにゃ」
トリストも加勢する。
確かにこれはリアの言うとおりだろう。パーティ全体に対する召集命令と考えるのが妥当だ。
それに王様との謁見になると、何があるかわからない。
「レスティ、ここはみんなで行こう。俺も人が多い方が安心だ」
「勇者様……私だけでは心細い?」
「そういう意味ではない。何があるかわからないからな。人数が多い方が何かと便利だろう」
「ゆ、勇者様がそう言うならそれで良いわ」
レスティが折れた。
レスティ自身、最初からこうなるとわかっているのだろう。
王様に会うにあたって、事前に準備は必要だろうか。謁見方法とか、王様についてとか、調べておく必要があるかもしれない。
「それにゃら早速出発だにゃ!」
トリストが自分の分の代金をテーブルに出す。
「そうですね。王様を待たせるわけにはいきませんからね」
リアも伝票を確認してお金を用意する。
「それじゃあ会計を済ませてくるわ」
レスティがお金を集める。
三人とももう出発する気だ。そんな楽観的で大丈夫なのだろうか。
レスティが伝票と集めたお金を持ってレジへ向かう。
幸助の食べた代金は泊めた人が払うことになっている。このルール制定にも幸助は関与していないが、メリットが大きかったので、特に異論はなかった。
つまり幸助は、この世界で家賃と食費は免除されることになる。
「さあ私達も行きましょう」
リアが出立を促す。
トリストは出発の準備はできているようだ。
王様との初めての謁見に不安を感じながらも、幸助も三人を追う形で席を立った。




