事情聴取⑤
「え、俺の意見は?」
「「「必要ない!」」」
一人は語尾が「にゃい」だった。
「あ、は、はい」
まあこれは仕方ないなと幸助も思う節がある。
「それではこれで決定しますね。勇者様、今夜は私のお家で過ごしましょう」
「リア、勇者様を泊める際のルールも決めておかない?」
レスティはドリンクを一口飲む。
「夜勇者様と肌を合わせるのは禁止にしましょう」
「そうですね、色仕掛けで選ばれたって思われたくないですものね」
「にゃ! 確かにそうだにゃ! そんなこと思われたくにゃい! でも添い寝はいいかにゃ?」
「それくらいはいいんじゃない?」
「そうですね、添い寝はセーフにしましょう」
「キスはどうにゃ?」
「それは……だめじゃない?」
「うーん、肌を合わせるわけではないですが、唇を重ねるのも禁止にしましょう」
どんどんと話が進んでいく。
「俺も当事者だけど、ルール制定には参加できないのでしょうか?」
幸助は勇気を振り絞って質問をしてみる。
「「「できません」」」
「あ、は、はい」
撃沈。
「それから、お昼にはどこかに集合して、パーティとして活動しましょう」
「それじゃあとりあえず、明日はこのクルミカフェでどう?」
「僕ちゃんは問題にゃい」
「私は賛成です」
「それじゃあは決定ということで」
「仰せのままに」
ルールが制定されたようだ。そのルールによると、今夜はリアの家に泊まり、明日はトリスト、その次はレスティの家。俺には拠点がない。そして昼にはみんなで集まり、パーティとして活動をすることになった。
パーティの活動……乗る気はしないが、俺が状況打破のために勢いで言ってしまったのだから仕方がない。また何かしら機会があったら、この状況を何とかして変えよう。
それぞれが会計を済ませるために伝票を見る。テーブルで集金してまとめて払うようだ。
幸助はコーヒーとサンドイッチを頼んだが、お金やはり足りてなかった。
三人がそれに気がついたようだ。
「え、お金持ってないのに頼んだの?」
レスティが呆れたように言う。
「え、うん」
「にゃんだって!?」
「転移されたばかりで、ほとんど一文無しなんだ」
幸助は悪びれもなく言う。
「困りましたね。それじゃあ私が払います」
リアが女神のように見えた。
「あ! いやいや、私が払うわ」
今度はレスティまでうれしいことを言ってくれる。
「にゃ?」
トリストは首をかしげている。
「レスティさん。今日は私に家に泊めるのですから、私が払います。そして私が養っていきます」
あ、そういうことか。代金を持つことで、優位に立とうとしているわけですか。
幸助としては無料で食事ができるので誰でもいいと思っている。
「にゃ! それじゃあ僕ちゃんも払いたいにゃ!」
一悶着あったが、レスティとトリストが折れたようだ。
「じゃあとりあえず、ここはリア、あなたが払ってちょうだい。明日以降は明日決めましょう」
三人は納得したようだ。リアがトリストとレスティから代金をもらい、会計を済ませる。
「それじゃあ勇者様、行きますよ」
リアは幸助を引っ張る。
クルミカフェを出ると、外は暗くなっていた。街灯に明かりが灯り、昼間と違った街並みに見える。
クルミカフェを背に三方向にそれぞれの家があるようだ。ここは街の中心にあるらしい。
「リア、くれぐれも。くれぐれもよ」
釘を刺すレスティ。
「また明日にゃ」
能天気なトリスト。
「わかっています」
落ち着いた表情のリア。
歪な関係だが、俺のパーティだ。パーティって誕生日とか、ハロウィンとか、楽しいイメージだが、これはハードモードなパーティだ。はあ……先が思いやられる。
幸助は自分の行いが招いたことだということを失念していた。




