事情聴取①
□◇■◆(幸助)
クルミカフェは日本のカフェと遜色なかった。
メニューも聞いていた通り日本語表記がある。しかしここの通貨は円ではないため、数字は読めたが、単位は分からなかった。それに相場もわからないので、価値が把握できない。
四人だったが、六人掛けのテーブルを使わせてもらった。三人を一列に座らせ、正面に幸助が座る。
一同はとりあえずそれぞれドリンクを頼む。コーヒーがあったので、幸助はそれを注文する。会計は誰かが払ってくれるだろう。
ドリンクが各自に届いたのを確認すると、幸助はコーヒーを一口飲み話を始めた。
「それじゃあどこから聞こうか」
幸助がコップをソーサーに置くと、ガチャリと音が鳴り、女性陣三人はビクッと肩を震わせた。
「そうだな、三人が俺に対して妙な近づき方をした理由はなぜだ」
「「「……」」」
俯く三人。誰も話さない。
「質問を変えよう。えっと、トリスト」幸助は一番話しそうなトリストをターゲットにする。「なぜタイミングを計ったように俺の転移に合わせて小芝居を打てたんだ? それとも毎日のようにあの茶番が繰り返されているのか?」
「にゃ!」
また指名されビクつくトリスト。
話したくなさそうな表情をしているが、幸助の目を見ると観念したのか、レスティとリアの顔色を伺いながら話し始めた。
「そ、それはだにゃ……、アイテムがあるにゃ……」
リアがポケットから砂時計のようなものを出しテーブルに置いた。
「転移察知のアイテムです」
幸助はリアの出したアイテムを手にとり、いろんな角度から見てみる。
ガラスの中に青い砂が入っている。それが木の枠で固定されている。しかしガラスは球体であり、くびれはない。砂が落ちて何かを測ると言うわけではなさそうだ。砂時計のようなものではあるが、砂時計ではない。
「私もよく原理は知らないんだけど……。近くで転移があると、質量変化が起きるらしいの。それに反応して砂がガラスの中を舞うのよ。だからタイミングがわかったのよ」レスティの言葉に他の二人もうなずく。
結局よくわからないが、そういうことなのだろう。受け入れる他なさそうだ。
「僕ちゃんも持ってるにゃ」
トリストの持っている物はリアのより一回り小さいものだった。
「なるほど。まあいいやそれなりに納得はできた」
一つ疑問が解消できたので、幸助は店員を呼びサンドイッチを頼んだ。手持ちのお金に少し足りないが、勝手に頼む。誰かが払ってくれるだろう。
「それにしてもチープなやり方だよな。馬車に轢かれそうになるところを助けてもらおうなんて。三人ともが安直な考え方なんだから様無いよな」
「しょうがないじゃない」
チープと言われ気に触ったのか、レスティが反論する。
「これが手っ取り早いって思ったし、過去に例があったんだもの」
「まあいいけど。引っかかったのは俺だしな」
様がないのは幸助かもしれない。
店員がサンドイッチを早速運んでくる。
「そんなに俺と組みたいのか……というより、なぜ俺が勇者だと分かったんだ?」
「この世界の服を着ていないからです。この世界に転移される勇者様は変わった服を着ていますから、すぐに分かります」
リアも顔を上げ話をする。
「そりゃそうか」
幸助は自分の服を確認する。
「俺の世界じゃ地味なほうだけどな」
一芝居打った理由と、計ったようなタイミングの理由がわかった。
幸助はサンドイッチを食べはじめる。
女性陣も幸助につられ、料理を頼む。
しばらく食事タイムになり、会話が止まった。
一段落したところで幸助が一つ疑問をぶつける。