追跡④
「勇者様! 僕ちゃんが寝てる間に消えちゃうにゃんて酷いにゃ!」
猫族の子供のような女の子が現れ、勇者様の前で止まった。
「ずっと探したにゃ。もう離れにゃいでくれにゃ」
乱入してきた猫族の女の子は小柄で、不覚にもかわいいと思ってしまった。
リアとかいう女と同じパターンであるため、大体察しはついているが、この女の子について勇者様に詳しく説明をしてもらう必要がある。
「この子は誰なのかしら? 説明してもらえる?」
と、レスティ。
「そうですね。勇者様、これは説明が必要です」
と、リアとかいう女。
レスティはリアとかいう女との戦いをいったん置いておく。今はこの猫族の女の子について二人で問い詰める。
「あのですね、これはですね、いろいろと訳があるんだけど……。ええ、まあ、その、簡単に言うと、二日目に泊めてもらった子です」
レスティの先ほどの疑問があっけなく解決した。やはり予感していた嫌なものだった。
「ちゃんと名前で呼んでほしいにゃ! 僕ちゃんの名前はトリストって言うにゃ。君たち……誰だかわからにゃいけど、僕ちゃんは勇者様と今後一緒に旅をする人生の相棒にゃのだ。心も体も共に相棒だにゃ」
トリストとかいう女はない胸を張って主張する。
どうやらこの勇者様は転移三日目で三人の女を抱いたようだ。一体この勇者様は何をしに転移してきたのだろうか。
そしてこの勇者様を転移させたやつの顔も見てみたい。どうせ大した奴じゃないだろう。
それにしてもこのトリストとかいう女は見たところまだ子供のようだ。背も低いし、胸も小さい。どう見ても幼い。
「にゃんだその目は!」
レスティの視線を感じたのか、トリストとかいう女が声を荒げる。
「僕ちゃんだって十八歳だにゃ! 立派にゃ大人の女だにゃ!」
トリストとかいう女がいろいろと言っているが、「大人」も「女」も「な」の部分は「にゃ」と発音している。猫族特有の話し方だ。
「トリストって言ったわね。残念だけど、私たちも勇者様と一夜を共にしているのよ。あなただけが特別と思わないで」
レスティは言い合ってもい方がないと判断し、ここにいる三人が同じような境遇であるということを、トリストとかいう女にも共有することにした。
「にゃんだって!?」
トリストとかいう女はレスティの言葉に驚くも、勇者様に抗議をする。
「どういうことだにゃ!」
「いやあ、まあ、そうだな、ここは一つ、冷静になろう」
勇者様が頭を掻きながら言う。
「「「あんたが言うな!」」」
三人の声が揃う。当たり前だ。どの立場でものを言っているのだろうか。
女性三人でにらみ合っていたはずが、勇者様のデリカシーのない発言で、三人の視線は勇者様に絞られた。
肩をすぼめ、縮こまる勇者様は、上目づかいでこちらを見てくる。少しかわいいと思ってしまったが、表情に出さないように気を付ける。
勇者様の次の発言を待っているのか、誰も話し出さない。
そんな嫌な空気の中、何かに気が付いたのか、勇者様がふと顔を上げ、大声で叫んだ。