追跡③
「やっと見つけました、勇者様! ずっと探していたのですよ。私は心配で心配でたまりませんでした」
急に現れた女はそういいながら勇者様の胸に飛び込んだ。
「ちょっと! 誰よこの女!」
レスティは状況が掴めず、勇者様に問い質す。
「何でしょうかあなたは?」
勇者様に聞いたつもりだったが、急に現れた女が話し出す。
「あなたには聞いていないわ」
「私は勇者様のこいび……勇者様にお供する治癒師のリアです」
ずうずうしくも急に現れた女が言う。
「あなたこそどちら様でしょうか? 勇者様に気軽に話しかけないでいただけますか?」
「何よ! 私は勇者様の未来のおくさ……勇者様のパートナーの魔法剣士のレスティよ」
二人でにらみ合う。
急に現れたリアとかいう女はなかなかスタイルがいい。身体にぴったりの白い服が曲線美を描いている。スカートにはスリットが入っており、きれいな太ももが見える。それに顔もなかなかかわいいではないか。特に瞳がかわいらしいと思う。
まだ私も負けてはいないと思うが、ライバルとしてはそれなりに手ごわそうだ。
それにしても私を抱いておきながら、ほかの女に手を出していたとは……。
「「勇者様どういうこと!?」」
レスティは勇者様に問いかけたが、同時に目の前にいるリアとかいう女も同じように思っていたようだ。声が重なった。
「え、あ、いや、あの、その……」
「「はっきりしなさい!」」
状況がわからない。いや、わかってはいるが、説明してほしい。
リアとかいう女は気にくわないが、今はとりあえず勇者様に問いただす必要がある。リアとかいう女も同じように考えているのだろう。二人で言い合うことはせず、勇者様に説明を求めている。
「は、はい。すいません。えっと、あの、実は転移一日目に……リアって言ったっけ? を助けたお礼に家に泊めてもらい、三日目に……レスティで合ってる? を助けたお礼に家に泊めてもらって……。まあ、そうですね、ええ、そういうことですね、はい」
やはり昨日と言っていることが違っている。行く当てがないから泊めてほしいと言っていたが、転移されたから泊まるところがあったようだ。目の前にいるリアとかいう女の家に泊まっていたようだ。
しかし察するに、このリアとかいう女も勇者様を泊めた翌日に今朝と同じように、勇者様に出て行かれてしまったのだろう。
え、同じように? まさか……同じように!?
「ちょっと待って、え、一応聞くけど、この女とヤッてないわよね?……って、うそ。え、やだ、ヤッたの!?」
勇者様の目が泳いでいる。バタ足のしぶきが飛んできそうなほど泳いでいる。
「下品な言い方しますね。私と勇者様は心だけでなく、体も繋がっているのです。この先勇者様は私と共に暮らしていくのです」
勇者様に聞いているのにリアとかいう女が割り込んでくる。
「……」
唖然とするレスティ。言葉が見当たらない。開いた口が塞がらない。
「……ま、まさか、勇者様。この下品な女とも寝たのですか?」
レスティの様子を射て察したのか、リアとかいう女も勇者様に詰め寄る。
レスティとリアとかいう女とのやり取りの間、勇者様は終始きょどっているだけだった。
「勇者様が答えないなら私が答えるわ」
ここでリアとかいう女に後れを取るわけにはいかない。
「そうです、寝ました。それはそれは愛の深い、素晴らしい夜でした!」
嫌味たっぷりにリアとかいう女に伝える。
「勇者様! 私がいながらそんなことをしていたなんて!」
レスティの言葉を聞いて、リアとかいう女が勇者様に訴えている。
リアとかいう女も被害者なのだろう。少し同情してしまう部分もある。
このリアとかいう女は、勇者様に逃げられてからこうしてまた会うまで二日かかったようだ。
ん? 二日かかった? あれ? 二日目は? 二日目はどうしたのだろう? どこに泊まったのだろうか?
「あの、勇者様……。二日目はどうしたのかしら?」
レスティは嫌な予感がした。
「えーっとね、それはね、いろいろとあってね……」
勇者様はなかなか答えようとしない。
勇者様が勇者らしからぬ挙動をしていると、遠くからまた大きな声と共に女が現れた。