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異世界初心者  作者: 寿々喜 節句
第一章
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追跡②

「あ、君か」

 勇者様はレスティを確認すると素っ気なく答えた。


「君か、じゃないわよ! 私をおいて出て行くなんてひどいじゃない!」

 息も切れ切れにレスティは勇者様に訴える。


「こういう関係をずるずる続けるわけにはいかない。俺も辛いがお互いのためだ。ありがとう」

 勇者様がさわやかな笑顔で手を振り別れを告げてくる。


「ちょ、ちょっと! こういう関係ってどういう関係よ!?」


「身体だけの関係のことだが?」



 は? 何を言っているのだろうか? 信じられない。サイテーな勇者様だ。


 しかしこんな酷いヤリチン男なのに、本人を目の前にすると恰好良いと思えてしまう。さっきまでの怒りはどこへやら。むしろ胸が高鳴っている。夜を共にしたからだろうか。



 だめだだめだ。正気に戻れ。



「それだけの関係になったつもりなんてないわよ」



 知らない間にそんな関係になってしまっていたようだ。どうやら都合のいい女になっていた。これを機に自分の行動を改めないといけないと心に誓う。



「君が心配をしてくれているのはわかる。それは素直に感謝しよう。ありがとう。しかし俺はこの世界では勇者という役割があるらしい。だからやるだけのことはやろうとおもう。いや、やらなければならない。君を巻き込むことはできない。優しい君を俺は忘れない。さようなら。また逢う日まで」


「え、え、え、待って待って。何それ?」



 何かよくわからないけれど語っている。勇者様がなんか語っている。



「別れはいつでも悲しいものだ。しかしその別れを積んで成長するものだ。ありがとう。君のおかげで成長できた」

 勇者様がしみじみ言っている。


「おいおいおいおい、何良い話っぽくしているのよ」



 なかなかのくず男っぽい勇者様だ。


 しかし勇者には変わりない。ここで引くわけにはいかない。レスティは続ける。



「まあ冷静に話し合いましょうよ、勇者様。転移されたばかりでしょ? 行く当てはあるの? お金だって持っていないんじゃない? 私はこう見えて一応、上流階級なのよ。だから勇者様一人くらいは養っていけるわ」



 一度感情を抑え、冷静に話をする。



「それは魅力的な提案だが、何とかお金は微量だがある。そして泊まるところも行き当たりばったりではあったけど、困ることなく見つけられている」



 昨日言っていたことと違っている。どういう事だろうか。



「ちょっと待ってくれる? 確認したいんだけど」


「なんだい?」


「あの、昨日は行くところがないって言っていなかった? だから私の家に招待したんだけど」


「え、あ、うん? あれ? そうだったっけ?」

 目が泳ぎ出す勇者様。

「あ、ああ、そうそう。それは前の世界の話だった……。あはは」


「はいはい」

 レスティは適当にあしらう。

「詳しく説明してもらえるかしら?」


「え、いや、詳しくも何もないんだけどなぁ……」



 しどろもどろする勇者様にいざ問い詰めようとしたところに、背後から大きな声と共に女が現れた。

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[良い点] 佐井君なかなか闇が深いな… レスティかわいい
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