打ち上げ②
「まあまあ、一応依頼を達成したわけだしさ、楽しく飲まないか」
話題を変えるにはこのタイミングしかないと思い、幸助は話を遮る。
「……そうね。でも今度は私が活躍してみせるわ」
「私だって負けませんよ」
「僕ちゃんだって」
残念ながら、話を大きく変更することはできず、今度は意気込み合戦が始まった。
前回の打ち上げもこんな感じだったのだろうか。これで朝まで飲んでいたと思うと気が持たない。むしろつぶれていてよかったとも思う。
「そうですか。それは素晴らしい心づもりだと思いますよ。ええ、頼もしい限りです」
幸助は一人で飲むことにした。
「俺はクラトゥ村でゆっくり過ごしたいよ」
今クラトゥ村はは番兵が盗賊の一件の調査をしているだろう。落ち着いたら移住したいと考えている。
「あ、そうそう。クラトゥ村の件なんだけど、私のところにいくつか問い合わせがあったわよ」
レスティのテンションがいつも通りになった。
「勇者様がいるなら住みたいって言っていたわ」
「それはチラシを描いた甲斐がありました」
とリア。
「それはチラシを配った甲斐がありました」
とトリスト。
「それはチラシを計画した甲斐があった」
と幸助。
「甲斐があったのは確かね。それでどうするの、勇者様」
「もちろん、クラトゥ村に移住するつもりだ。三人はどうするんだ?」
「私は弟がいますので……」
リアの弟は体が弱い。簡単には引っ越しができないのだろう。
「私も息子がいるし、アパートの管理もあるから……それに今の家のほうが住みやすいし……」
「僕ちゃんは向こうに行くにゃ。早くあっちの家に住みたいにゃ」
トリストだけがクラトゥ村に移住するようだ。まあこれは自由に選択したらいい。幸助が強制できることではない。
「ちょっと待って。勇者様が家を持ってしまったら、もう私たちの家には泊まりに来なくなっちゃうの?」
「そうですね、それはどうなのでしょうか?」
「気ににゃるにゃ」
「まあ今まで通りでいいわよね」
「いいと思います」
「変わらにゃくていいにゃ」
アピール合戦をしていた三人は、こういう時には結託して一つの結論に至る。




