異世界の朝②
一度鞄を置き、昨日からの流れを確認する。
「君が馬車に轢かれそうになったのを俺が助けたら、お礼がしたいと言った。だから俺は泊めてもらった。その中でそういうことになった。それだけのことだろう」
「思っていた展開と違う!」
幸助としても思っていた展開と違っている。言えることは面倒な展開になったということだ。
「君がどんな展開を想像していたかは知らないけれど、俺はこれで失礼するよ」
幸助が鞄を持ち直そうとしたとき、髪のきれいな美女が急に立ち上がる。
「私はレスティ。魔法剣士よ。勇者様の冒険に付き合うわ。よかったら名前を教えてもらえるかしら?」
髪のきれいな美女はベッドの上に立ち、親指を立ててポーズを決めている。
さっきも描写したが、もう一度言う。彼女は裸だ。シーイズネイキッド。
幸助は心の中でお礼を言いつつも冷静に対応する。
「情が移るといけないから、名前はお互い言わないでおこう。君の名前も忘れる」
幸助は鉄則をしっかりと守る。
「ありがとう。君との出会いで、また一つ勇者として……いいや、人として大きくなれた。それじゃあ」
幸助は鞄を持ち、ドアノブに手をかける。今度こそ本当にさようならだ。
「ちょ、ちょっと! 待ちなさぁぁぁぁぁぁぁあああああい!」
ドアを開けると、外は晴れやかで日差しが気持ちよく、過ごしやすい気候だった。
新たなる一日が始まると思うと軽やかな気持ちになる。
後ろで大きな声が聞こえるが、それ以外はすがすがしい日だと心が弾んだ。