ヲタッカーズ7 アキバ洗脳作戦
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
時空海賊、ギャング、宇宙人の聖都侵略が始まった!
聖都の危機にアキバのCharlie's angels
"ヲタッカーズ"が立ち上がる!
オトナのジュブナイル第7話です。
今回は、深夜の秋葉原で超古代人に洗脳された人々が行進を始め、軍が秋葉原を包囲封鎖する緊急事態となります。
超古代人の洗脳が電波に拠るモノと分かり"ヲタッカーズ"は"萌えスピーチ"で洗脳を解くコトに成功するのでした。
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 真夜中の死の行進
あの夜、君は見ただろうか?
彼方此方の路地から集まった人が大きな奔流となり中央通りを行進スルのを。
深夜のアキバにこんなに大勢と驚くホド。しかも全員無表情と逝う不気味さ。
聖都アキバに何が起きたのか?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
不可解な行進が行われていたのと同時刻、中央通り裏の路地にある雑居ビルの地下では…
「最終確認は完了。御命令を」
「"魂"を解放せよ」
「了解」
コンソールのエリズ指揮官がスイッチオン。
彼女は、秘密組織"ジャドウ"の指揮官だ。
「警告。煉獄ロックの解除まで残り2分。私は最終プロトコルα」
"ジャドウ"基地の全域が警戒態勢に入る。
同時刻、捕虜収容エリア通称"煉獄"では…
「見ない顔の衛兵だな。私はクシィ。古代火星王朝の女王。ココを開けょ」
「女王たる確かな証を」
「無礼な。今、ソレを証明する」
突如ゲートが開く。
忽ち血飛沫が飛ぶ。
「無抵抗とは諦めが良いな」
衛兵の死体を避けながら"煉獄"から基地へと足を踏み入れたクシィ女王に、基地の緊急システム"最終プロトコルα"が話しかける。
「"ボカン"発動中。ダノンの仲間に加わり、ダノンに忠誠を誓うならば、クシィは、この地球で再び女王となるコトが出来る。私は最終プロトコルα」
「余は…テリィたんに結婚を断られた女でアルぞ」
「警告。煉獄ロックの解除まで残り1分。私は最終プロトコルα」
「余は…喜んでダノンに忠誠を誓おう」
クシィは"煉獄"の廊下に跪き、胸の前で両手を合わせ忠誠を誓う…ところが次の瞬間w
「超古代の女王様!貴女の仮釈放は取り消しよっ!」
黒のセパレートタイプのコスに黒髪の"ムーンライトセレナーダー"登場!
古代エジプト女王vs悪の女幹部!スーパーヒロイン同士が肉弾相打ち激闘!
「ふふん。汝の力は、この程度なのか?」
「うるさいわね!"稲妻キネシス"!」
「効かぬわ。余がテリィたんと結ばれておれば妾の分際が!」
禁句をガヤられ、瞬間怯んだミユリにロメロスペシャルが決まり宙高く吊り上げられる!
「ぎゃあああっ!」
絶叫するミユリ目掛けロケット弾が命中!
ん?塩弾頭の"パンツァーファウスト"?
エリズ指揮官が援護射撃!
しかし…塩?悪魔祓いかw
「エリズ指揮官!貴女は洗脳されてるの!目を覚まして」
「警告。煉獄ロックの解除まで残り15秒」
「警告。残り5秒」
「ああぁ…やむを得ないわ。テリィ様には内緒で秘密兵器を使います!"ロケットパンツ"発射!」
「ぐあっ!」
「4,3,2…煉獄ロックの施錠解除は中止。"魂"の解放は回避されました。私は最終プロトコルα」
「む、無念…おのれ"ムーンライトセレナーダー"!覚えておれ!」
捨てゼリフを残し命からがら逃げるクシィと失神して転がるエリズは焦げて真っ黒ケだw
お尻に食い込む"ロケットパンツ"を直しなつつセレナーダーは勝利の雄叫びをあげる。
「…でも、ごめんなさいね。エリズ指揮官」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ミユリさん!僕を呼ばズに"ロケットパンツ"撃ったンだって?!ズルいぞ!アレほど次に使う時は呼ぶって約束したのに!」
珍しく気圧されミユリさんは防戦一方だ。
ココぞと仏頂面をキメる僕に御機嫌を取らねばとアタフタするミユリさん。あぁ爽快だ←
「だってロメロをキメられ大ピンチで…とにかく!"ジャドウ"全ステーションに"ボカン発動中"との機械音声が流れてました」
「何だろう?その"ボカン"って?この真夜中の分列行進と何か関係がアルのかな?」
「恐らく。で、調べモノはやはり図書館かなって思って…ホラ、司書メイドさんが巨乳だし」
僕への御機嫌取りモードで心にも無いコトを口走るミユリさん。あぁ爽快だ←
その巌窟には地球が冷え固まって以来の全図書が収蔵されて、しかも司書が…
「エアリ、いないの?」
「御用?あら、ミユリ姉様。テリィたんとお揃いで」
「"ボカン"について記された"裏肢体文書"を探してルンだけど…って、貴女!そのメイド服は何よっ?!私達が来るコト知ってたわねっ!」
何食わぬ顔のエアリは、白の肩出しメイド服でタワワなバストを思い切り強調しているw
「エヘヘ。だって、どうせ調べ物なら楽しい方がハカどると思って。あぁ胸が重いと肩が凝るわ。微乳のミユリ姉様が羨ましい(火に油を注ぐなw)…ところで!"裏肢体文書"ですか?ソレだけはダメかも。私には権限nothing」
「誰の権限なの?」
「創造主。なぜなら…"裏肢体文書"は、私の肢体に刻まれた文書だから」
「おおっ!カラダに刻まれた文書!しかも"裏"となると、かなりのワクワクだな」
「お黙り…じゃなかった、お静かにテリィ様。でもね、エアリ。貴女には地球の全記録を残す使命がある。禁を破り、今、話さなければ、地球は滅び、人類の記憶も潰えるの。貴女は、守るべきモノを守れなくなるのょ?だから、お願い。地球を、人類を助けて」
「わかったわ…テリィたん、その手を私の胸の谷間に…」
脇でミユリさんがスゴい顔をして僕を見る。
僕は"人類のために"巨乳の谷間に手刀を…
エアリは目を瞑り深呼吸をして語り始める。
「"ボカン"は、子孫人類を救うために、超古代文明が発案した計画の名称。超古代、回復不可能なほどに資源は枯渇し、政治家達は対策に苦慮した。その時、超古代文明が打ち出した独自の解決策が"人類ボカン計画"なの。人々に自分の考えを植え付けるための技術ょ。しかし、その発明者達は、反太陽系文明の人々を洗脳しようとした罪で処刑されたわ」
「それで?」
「今、アキバは崩壊しようとしてるけど、未だ止められる。そのためにはヲタクに信用されてる"ヲタッカーズ"が必要。テリィたんの出番ょ」
「ずっとスタンバイしてたのか。計画を発動して地球を救う日が来ると…しかし"ボカン"って"人類ボカン計画"のコトだったンだ(補完じゃなくて)」
「"ボカン"を悪用すれば、太陽系のみならズ、全宇宙を隷属させられる。この技術が知れ渡れば、宇宙の均衡が崩れ去ると超古代人は知っていた」
「阻止する方法を教えてょエアリ」
「ごめんね、テリィたん。"人類ボカン計画"は、発動したら止められない」
第2章 アキバからの世界征服
スマホの対話アプリに軍人が映ってる。
「秋葉原への道路は全て封鎖した。この脅威が収まるまで、電気街全域を完全に隔離状態に置く…コチラはレイン将軍だ」
「"ヲタッカーズ"テリィです」
「テリィたん!アキバ防衛秘密組織"ジャドウ"のエリズ指揮官は?」
「生きてます。無事ですょ」
「真っ先に何者かに洗脳されたのだろう?」
「YES。ウチのヨメにパンツァーファウストを打ち込んでくれましたwとにかく!打開策が見つかるまでアキバの封鎖をお願いします。今まで、僕達は決して良い関係にあったとは逝えませんが」
「全てを水に流し、今は全力を尽くすのみ。テリィたんにもソレを期待スル。がんばれ"ヲタッカーズ"グッドラック」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
封鎖されたアキバから脱出スル最後のバス。
命からがら逃げ延びた車内の人々は無口だ。
「座っててください、王女」
見かけは幼女を連れたヤンママだ。
和泉橋でバスが停車し緊張が走る。
タブレットを手にした女性士官とサイレンサー付き機関銃を構えた兵がバスに乗り込む。
「重大事件の被疑者2名の行方を追っています。非常に危険な人物です。何か情報があれば報告を願います」
女性士官は、被疑者の画像をタブレットで示しつつ、最前列から順に乗客に見せて回る。
ヤンママが太腿のホルダーから拳銃を抜き、ポケットの中で構えたが女性士官はスルーw
「確認完了。次の車、行くわよ」
その時、幼女の目が赤く光るw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
昼下がりの御屋敷。
封鎖されたアキバに屹立スル高層タワーの最上階にいる。
メイド服のミユリさんはカウンターの中でグラスを磨く。
「あの行進ゾンビだけど、僕達の声は聞こえてて、意識もあるハズなのに反応がない。こーゆー時こそ、ヲタク同士の連帯が必要なのに」
「ヲタクに街に戻って来て欲しいわ。ソレでなくてもコロナでインバウンドが街から消えて寂しいのに。みんな、早く目を覚ましてくれないかしら」
「今は、もうヲタクの笑顔を取り戻したいだけだな」
何て、とりとめのない会話をしていたら…
「東山クンに伝えて。私は、年寄りとは付き合わないの。特に既婚者とはね。あら、ミユリ。また"ムーンライトセレナーダー"に変身したンだって?」
「ジュリ?洗脳されてないの?」
「洗脳?私が誰かに従うタイプに見える?母の逝うなりで着た振袖が幼馴染と被って以来私は誰の意見も聞かナイの」
スマホ片手に入って来たのは常連のジュリ。
ストリートギャングを仕切るヘッドの妹だ。
「あのな。アキバの全員が宇宙人の信号に操られ、ゾンビになって街中を行進してルンだぞ」
「ソレで、いつもより街が静かなのね。やっと"セクシーボーイズの恐ろしさが浸透したンだと思ってた…あら?空の彼方で動く、あの点は何?」
「人が空を飛んでる?ロケット兵装備だわ。きっとマタハね」
ジュリが指差す先の空に、点のような人が飛んでいるのが見える。
"ヲタッカーズ"のマタハだ。彼女はロケット兵装備で空を飛ぶ。
「きっと助けに来てくれたンだわ」
「スーパーヒロインが?ねぇねぇ。彼の電話番号、教えてょ。友達になりたいわ」
「そんなコト逝って、ストリートギャングにリクルートする気でしょ?」
ところが…
アキバ目掛けて飛来したマタハだが、突如ガラスの壁にブチ当たったように空中で停止。
見る間に今度は一直線で地上へ降り、街を埋め尽くす行進ゾンビの波に飲まれて消えるw
「マタハ?!何?どーしたの?」
「何ょ?貴女のトコのスーパーヒロイン、中央通りをゾロゾロ歩いてる連中と一緒に歩き出したわょ!」
「"ボカン"だ。マタハは洗脳された」
「何ょその"ボカン"って?スーパーヒロインも洗脳されたらお終いなの?」
「所詮はヲタクだからなwその点、僕はスーパーヒーローじゃないが遂に出番が来たみたいだ」
「テリィたんの脳は洗脳しても頑固な汚れが落ちないのょね?確かに、最後まで生き残るのはゴキブリだし」
「元気そうだな、ジュリ。今日は美人に見えるょ」
「とにかく!私も一応、スーパーヒロインなんですけど、テリィ様と逝い、私と逝い、ゴキブリやジュリと逝い、なぜ洗脳されナイのかしら?」
真昼間のバーで、一同で頭をヒネる。
「あ、わかった!わかったわ!」
「何ょジュリ。どんなおバカなコトでも私は怒らないから逝って御覧?」
「"幸福を呼ぶ邪念ブロッカー"よっ!」
何だ、その"幸福を呼ぶ邪念ブロッカー"って?美味しいのか?あ、もしかしてソレは…
「ホラ!テリィたんもミユリ姉様もスマホにつけてくれてる!私が青森のパワースポット大森山に登った時のお土産のペンダントっ!ダイヤの中に"邪念ブロッカー"が入ってるの!」
「"ダイヤの中"じゃなくて"ダイヤ型のペンダントの中"だょな?確か"邪念"はともかく電磁波も遮断スルからスマホにつければ電話してもガンにならないって…」
「美しい上に機能的なのょね」←
「僕としても、ジュリの痴性…じゃなかった知性が失われるのは寂しいからな。子供の脳の発達にテレビCFが影響スルみたいな?」
「テリィ様、笑いゴトではアリません」
「モチロンだょミユリさん。恐れていたコトが起き真剣ソノモノだ。アキバを封鎖してるレイン将軍も逝ってたけど"人類ボカン計画"を進める何者かは、真っ先にアキバ防衛秘密組織"ジャドウ"を襲ったらしい。恐らくソレは通信システムが目的だ。"ジャドウ"のコンピュータ衛星"シドレ"経由でアキバのヲタクの脳に神経信号を送ってるに違いナイ」
「その神経信号を"私のブロッカー"で遮断してるから、この3人は無事なのね?!」
「うーん認めたくナイが…とにかく!何とかして衛星システムを妨害して神経信号を遮断しなくては」
「テリィたん、何か上手い作戦を考えてょ」
「わかった。"悪"を撃滅しよう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃"悪"のアジトでは。
「アレキサンダー大王は、世界地図を見て嘆いたと聞く。もう征服する土地がナイとな。ソナタもか?ダノン」
「そうだ。秋葉原シティは手に入れた。"ヲタッカーズ"すら洗脳出来た。今や、何者も敵ではナイ」
「しかし、余の娘を何者かが連れ去った。そして、あの街には余の義理の姪もいる。反撃しようと待ち構えているハズだ」
「クシィ。汝は娘や姪を買いかぶっているぞ」
「そーゆー汝も、愛する奥方の遺体が月のカケラと共に宇宙を彷徨っておる。汝も何事かを見くびった。汝は余に娘と姪を殺せと申すか?」
「生きてる限り我等に反抗する。"ジャドウ"の魂の解放も邪魔しおった」
「大勢に影響は無いではナイか?」
「汝が姪を殺さぬ限り、戦いは続く。彼女を始末すれば、汝は余の妻となるであろう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同じ頃"善"のアジトでは。
「そ、その子は誰?ヤンママみたいなお前は何者?」
「御無礼致します。少々説明が難しく…あ、お下がりください!」
ヤンママが連れてた幼女の目が赤く光るw
「何なの?!」
「私どもには、時間がありません。実は逃亡中なのです」
「どーゆー意味?」
「今、秋葉原シティは全住民が神経電波によって洗脳され大変なコトになっています。"ヲタッカーズ"も犠牲になりました」
「スーパーヒロインも洗脳されたの?彼女達を相手に回して、どう戦うつもり?」
「御協力頂けるならお話し致します」
「殺しはダメょ」
「解決策を探る余裕は無いのです。殺される前に殺すしかない。甘い考えは捨てざるを得ません…ん?誰かが警備を突破した!」
目前の空気が揺らぎ、次の瞬間、全身黒のラバースーツに身を包んだ男が現れる!
ヤンママが太腿のホルダーから拳銃を抜き迷わズ全弾撃ち込むがビクともしない。
さらに緑色に光るナイフを手に襲いかかる。
ところが、突如ナイフを握る手が逆を向く。
驚くヤンママの胸にナイフが刺さって逝くw
両目と口から断末魔の光が溢れ彼女は絶命←
「コレで邪魔者は消えた。"ヲタッカーズ"も屈した。汝もそうなる」
「お前とは、戦いたくないわ」
「戦うまでもない。そこの幼女ともども汝は消える運命にアル」
「…何もわかってないのね」
「汝の負けだ。私の妻には先見の明があった。結局、我が妻の勝利だ」
「コレが勝利なの?単なる裏切りじゃナイ。私は、彼女の最後に立ち会ったわ。許し合ったの。絆を取り戻したのょ」
「黙れ。コレが妻の望みだ。余が誰もが望む善で満ちた平和な秋葉原を実現した」
「笑止。コンなの単なるB級ゾンビ映画だわ」
「超古代の民と同様の終わりを迎えたいか?あの時、帝国臣民は、スターや政治家のスキャンダルにのみ注目し、地球の問題に無関心だった。ソレに比べ、秋葉原の二本足は曲がりなりにも生き残るチャンスを得たのだ」
「洗脳したヲタクに地球温暖化を解決させるの?ソレは名案ね」
「民族や政党の衝突も消滅スル。"人類ボカン計画"は、素晴らしい計画だ。全員が一丸となり、共通のゴールに向かって働き、地球を救うのだ」
「救う?奴隷にしたいだけでしょ?人類を軽んじないで。この地球を救いたいのなら協力して」
「コイツらに?愚かな。昔から二本足は大衆心理を煽るコトだけに腐心してきた。だから、簡単に洗脳できたのだ。既にロボット化されていたも同然だったからな」
「詭弁だわ」
「メディアに操られた、群体たる二本足は"ボカン"により、初めて想像力と思考力を一本化し、飢饉や病気、異常気象の撲滅に捧げるコトを許されたのだ」
「ヲタクの知力を利用して世界の問題を解決するの?秋葉原をシンクタンクに?しかし、ソンなやり方で問題は解決出来ないわ」
「既に、私は秋葉原から犯罪を1夜で無くした。スーパーヒロインに地球は救えない。二本足には"ボカン"が必要だ。計画は順調。地球を変えると言う、妻の夢は間も無くかなう。先ず秋葉原。そして…いずれ地球は我々のモノとなる」
「ダノン、目を覚まして!」
「私は、秋葉原を救った。次は、世界を救うのだ」
第3章 アキバのサードインパクト
僕の会話アプリが立ち上がる。
「テリィたんか?秋葉原封鎖部隊の司令官、レイン将軍だ」
「"ヲタッカーズ"テリィです」
「調査部別班が"人類ボカン計画"を闇で進める秘密結社の存在を突き止めた」
「まさか…"ゼーレ"ですか?」
「惜しい。1字違いで"ゼーム"だ」
「税務署みたいだな」
「しかし、あくまで結社は隠れ蓑で、彼等は超古代に地球で栄えた"プラズマ人類"の末裔らしい」
「"プラズマ人類"?」
「YES。有史以前の超古代、地球には物理的な実体を伴わない"プラズマ生命"の文明が栄えていたのだ」
「何と。第3章まで来ていきなりステーキ…じゃなかったイキナリ厄介な設定が出て来ると話がこんがらがるな。特に伏線も張ってナイし」
「わかった。結論を急ごう。我々は既に"対プラズマ生命用兵器"を開発した。コレを未明に使用し事態を終息させる」
「兵器?どんな兵器ですか?まさか"汎用人型決戦…"」
「いや。爆弾だ。"逆振動爆弾"だょ。"プラズマ生命"の持つ生命振動を相殺する兵器だ。"ジャドウ"の装甲飛行艦"エンカイ・ゲイ"が秋葉原上空に運び爆発させる。今後50年間"プラズマ人類"は秋葉原には近づけナイ」
「ヲタクへの害はナイの?」
「爆弾だから多少の犠牲はやむを得ない」
「具体的にはどのくらい?」
「試算では約8%。秋葉原駅の乗降客数を約50万人とすれば、8%なら約4万人が死ぬ。しかし、ココで食い止めなければ世界人口約70億人がゾンビになる」
ミユリさんが耳を疑い、聞き直す。
「アキバに爆弾を落とす気なの?」
「首相官邸からの命令だ。他に手はない。さもなければ、他の街も"プラズマ人類"の軍門に下る。ソレは許されない」
「爆弾があると脅してみては?」
「"プラズマ人類"のメンタリティは、未だ解明されていない。彼等と正気ベースでの交渉が成立スル保証は無い」
ミユリさんはガックリ肩を落とす。
祈るような目で僕を見る。出番だ。
「僕に計画がある。こうしてる間にも、人類が終わりかけてる。首相官邸は"ヲタッカーズ"に協力するか?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
約25分後。
「テリィたん?レイン将軍だ」
「"ヲタッカーズ"テリィです」
「首相官邸は、君の判断に賛成した。お墨付きは得た。作戦を進めろ」
「ROG」
「神の御加護を」
「将軍。アキバのヲタクが信じる神は神田明神だけだ。そもそも、神が存在するなら、人類はこんな苦境に陥らない。でも、将軍。心から感謝します」
「…私の両親が今回の封鎖の混乱の中で死んでね。ソレ以来、誓ったンだ。誰かを守り救う時は許可を待たない。即行動だ。君がヲタクを助けるために飛び出すように、私も行動したまで。テリィたん、俺と君は似た者同士だ」
「レイン将軍」
「何だ?」
「光栄だけど…一緒にしないでくれ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
再び"悪"のアジト。
「汝の娘と姪は、もはや敵ではない」
「殺めたのか?その手で?」
「汝を喜ばせるために、敢えて生かし、愛する者を失う苦しみを味わわせるコトにした」
「汝は、余の喜ばせ方を心得ておるな…共に次の動きを考えようぞ」
「秋葉原の次は池袋。その後は中野ブロードウェイ。大阪の日本橋。名古屋の大須…」
「全国区に出馬中の野党政治家みたいでアルぞょ。かような小さき野望は、ソナタには似合わぬ。ソナタはもっと大物ぞ」
「秋葉原の二本足どもは、自己を捨て懸命に地球を救おうとしている。下等種族だが創造性は豊かだ。創意工夫も見られる」
「思い通りである。だが、汝は躊躇っている」
「何を?今や、余は秋葉原の支配者だ」
「違う。ソナタは、全宇宙の支配者なのだ。既に銀河系全体を支配できる兵力を手にした。ソナタの命令だけを聞く巨大な軍隊だ。星1つを領土にして満足するコト能わズ。ソナタの庇護を求め全宇宙がひざまずく時が来る。私と同様、誰もがソナタを神として崇める日が来るのだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そして、摩天楼にある御屋敷。
「ココの眺めはいつ見ても大好き。私の部屋からは見えなくて。人で賑わう芳林公園の景色も好き。母親はベビーカーを押し、子供は遊ぶ。でも"プラズマ人類"の馬鹿な計画でみんなが犠牲になる。かつて、戦いの方法を間違え、滅んだ文明があった。文化も家も親も子も全てが宇宙から消え去った」
「その恐怖を感じる気持ちはわかるょ」
「恐怖。そうなの。私は恐い。恐らく誰もが怖いハズ。誰もが恐怖に支配されてる。でも、支配されるだけではダメなの。勇気を出して立ち上がらなきゃ。私も恐怖に駆られ、いくつも過ちを犯した。でも、心を強く持つ方法を、この街で教わったの。人を信じるコト。最後にはヲタクが勝つと信じるコト。おかげで私もヲタクを受け入れた。偉そうな助言は出来ないけど、私がこの街から得た教訓は"萌えは恐怖に勝る"。私は頑固者よ。そんな私をこの街は変えた。だから、私もこの街のヲタクを変えられるわ。暴力や電波によってではなく」
「ミユリさん。君が無理だと考えるなら作戦は中止スルょ?」
「…パパが出て行った日は、人生最悪だった。あの時、2度と帰らないかもしれないパパを止められなかったけど…テリィ様、今宵は違うの」
「ありがと」
「テリィ様の助けがあれば戦えます。私を洗脳から守って」
「ROG。メイド長」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
外神田2丁目のスマホTV局"ワラッタ"。
「ココの機材使えるの?」
「さぁ使えるハズだけど?コロナでスポンサーがハズれてズッと放置されてたアキバ初のスマホTV局ナンだけど?」
「せっかくアキバの封鎖を突破して潜入して来たのに、昔のトロフィーを磨かされルンじゃかなわないしw」
"ワラッタ"の制御卓に陣取りボヤくのは、フリーのプロデューサー"スズキくん"だ。
「ハイ。みんな、本番3分前だ」
「私は、ヲタクを元気づけに来た。前向きで萌えに満ちたスピーチをスルわ。洗脳されたヲタクの心に響くスピーチをね」
「うまくいく?」
「"ボカン"の信号に便乗スル。設備が最新式でなくて助かった」
「え?何で?」
「だって、アナログ放送が使える。プラズマ野郎に見つからズに"ボカン"の周波数に合わせられる」
「へぇ。やるわね」
「コッソリと信号にオンして萌えのスピーチを世界に向けて送信するンだ」
「お題は"萌え"ね。でも、この状況でヲタクに届くかしら」
「ミユリさんなら大丈夫。ソレに成功すると言う科学的根拠も見つかった」
「と逝うと?」
「首相官邸が昨夜招集した専門家会議に拠ると"ボカン"の神経電波は、ヒトの扁桃体と前帯状皮質の連携を断つコトによりヲタクを操っていたらしい。ソコは、ヒトに"萌え"を感じさせる脳の部位だ」
「ソコに外部から強烈な"萌え"を付与するコトで、扁桃体と前帯状皮質の断裂を強制的に補完させるのね?」
「YES。今、中央通りを行進してるヲタク連中は、目や耳は働いてるけど自分を制御できズにいるだけだ。でも、既に一部の連中は、脳内のスイッチが切り替わって感情が蘇り、"萌え"を感じ始めてる。ミユリさんの呼びかけは、必ずやヲタクを救う」
「ソレも全部、あくまでも、この機材が生きてたら、の話だ。ミユリさんのスピーチを独占放映し、在アキバの全スマホに強制的に送信スル」
「うーん"スズキくん"って、ホントに天才だな。準備完了?ミユリさんもスタンバイ出来た。3秒前、2秒前…放送中」
メイド服のミユリさんが語り始める。
「聖都アキバのヲタクの皆さん。メイドのミユリです。私の声が届いていますか?今日、アキバは攻撃を受けました。ヲタク全員が、史上最大の悪に襲われたのです。ヲタクは意思を、個性を、魂を奪われた。ヲタクは今、打ちのめされ、絶望し、自分を見失っています…」
第4章 光の中で
「…そして、アキバは、愛に満ち、ヲタクは助け合っています。私もヲタクに支えられてきた。今のミユリがいるのは、アキバのおかげです。私に、生きる使命を与えてくれた。強くしてくれた。だから、私はアキバが大好きです」
中央通りを飛ぶ偵察ドローンの画像に拠れば明らかに行進に動揺が走ってイルとのコト。
「私達の中には、消せない灯りがある。ソレはヲタクの"魂"です。今、みなさんの"魂"が必要なの。どうか"萌え"を取り戻して。"萌え"さえあれば、女の子は誰でもヒロインになれる。何度打ちのめされても、風に向かって立ち、最後に打ち勝つコトが出来るわ。心に"萌え"を。愛する人には、いつかまた会えるから。例えこの世にいなくても…みんな、愛してるわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「秋葉原に潜入した全偵察ドローンからの映像だ。潮が引いてる!中央通りを行進してた連中の隊列は今や総崩れだ!彼等は、もはや行進していない!」
「昭和通りも同じです!ヲタクが…ヲタクが次々と正気に戻って逝く!」
「作戦中止の暗号は?…スーパーヒューズ!スーパーヒューズ!装甲飛行艦"エンカイ・ゲイ"、レイン将軍だ。作戦は中止!繰り返す、作戦は中止!爆撃するな!秋葉原は正気に戻った!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃"リアルの裂け目"にアル"悪"のアジトでは、ダノンとクシィが地団駄を踏むw
「"人類ボカン計画"は失敗だ。余が甘かった。だが、偉大な洗脳技術を無駄にされてたまるか。あんなメイドの小娘に」
「汝、御身を責めズ大いなる野望を保て。地球には征服すべき街が他に、いくつもアル。正義の味方ぶるヲタクのいない街が」
「余にどうしろと?」
「ケリをつけるが良い。ヲタクを皆殺しに。そして、ミユリだけを残せ。死んだアキバの女王として」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そして、御屋敷では…
「マタハは?未だ目覚めないの?」
「早く意識が戻ると良いけど…洗脳が解けたとワカルまで拘束したママの方が良いかもクスクス」
「エアリ!何てコト逝うの?ケガ人に手錠をかけるつもり?」
「私は、アキバを守りたいだけょミユリ姉様」
「悲しいけど、その考えがヲタクを一般人から遠ざけるの。アキバから去らせるの」
「そっか。ごめんなさい」
ソコへ軍服姿の御帰宅だw
コスプレでなくモノホン←
「おっと。お取り込み中だったかな?」
「おかえりなさいませ、レイン将軍。でも、他に逝くトコロはナイのですか?部隊に戻り傷ついた兵士を癒すとか?」
「そりゃ軍医の仕事だ。私は現場主義でな」
「現場って?もうアキバの洗脳は解けましたけど?」
「さっき、首相官邸と話した。テリィたんに感謝していた。"ヲタッカーズ"の勇気ある行動も賞賛されている。我々は、結束した方が強くなれる。今後、我々は仲間だ。隠しゴトはナシだ。秘密は得策ではない。むしろ、我々の努力を損なう。団結しよう。今回、我々は"プラズマ人類"の野望を挫いたが、まだ"悪"は存在スル。秋葉原は、依然大きな危機に直面したママだ。なぜなら"悪"は、この国だけではなく、世界中にいるからだ。そして宇宙にも」
やれやれ。厄介な方向へ話が転がって逝く。
僕はミユリさんに目配せして流れを変える。
「じゃ将軍のオゴリで乾杯だ。メイド長、シャンパンを」
「かしこまりました、御主人様」
「では、私が乾杯の音頭をとらせて頂こう…"ヲタッカーズ"に」
レイン将軍がシャシャリ出る。
「待って…ココは"家族"にでしょ?将軍」
「何でだ?」
「だって…家族は愛で繋がってるからね」
だから、家族に乾杯。
おしまい
今回は海外ドラマでよくモチーフになる"洗脳"を軸に、洗脳技術を継ぐ超古代文明人、その後妻の座を狙う古代火星の女王、アキバ防衛組織の指揮官、秋葉原を封鎖する将軍などが登場しました。
海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、第3波到来でロックダウン寸前の秋葉原に当てはめて展開しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。