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弟がゲーム世界から帰ってきたらしい

サクサクと暇つぶしに読んで貰えれば

 四月、社会人になって会社に入社してから三年、仕事にも慣れ意識もお腹もたるんできた気がする


 「まだ四月なのに暑くないか……温暖化怖いわー」


 まだ四月だっていうのに外の気温は三十度、夏かよ

 ブツブツいいながら駅から会社への道を歩いていると、携帯の着信音がなる

 画面を見ると母からだった、反対押し切って上京してから口聞いて貰えなかったのに、今更なんだ?


 「もしもし史子!あのね……隆文の意識が戻ったらしいの」


 隆文?あぁ隆文か、五年前突然自宅でゲームしていた所、意識を失い、それから五年間病院で植物人間状態

 原因は分からずじまいだが、同じ日、同じゲームをしていた人が他に百人程、同じ様な状態らしい


 「あぁ本当に意識戻ったんかなぁ……」


 その日会社に説明した所、会社は3日の有給を出してくれた、有給消化しちゃってくれって事らしい

 正直私は隆文が意識戻ったのか半信半疑だった

 母は私より出来の良い隆文が好きだったし、意識が無くなったと聞いた時はショックで、一時期カウセリングも受けていた

 母の妄想なんじゃないか、なんて思っている


 二時間ほど電車に揺られて実家のある埼玉まで、戻ってきた

 埼玉から会社は通える距離だが、東京への憧れも含め一人暮らしをしている


 「高橋史子さんですか?201号室ですよ」


 受付のナースさんが部屋を教えてくれた、上京してから来てない為、すっかり忘れてしまっていた


 「失礼します〜」


 丁寧にノックしてから病室に入る、弟の病室なのに畏まり過ぎな気もするが、三年も顔を見てないのだ、少し他人な感じがしてしまう


 「ふみ姉ちゃん久しぶり〜」


 病室のベッドの上で隆文がブンブン手を振っている

 案外元気じゃないか、心配してた家族一同に謝れ


 「まぁ久しぶり、五年もたって、意識戻るとは思って無かったよ」

 「俺頑張ったからね〜」


 頑張ったって何じゃい、無意識の中で生命を掴んだとか?

 そんな感情論は私は信じないタイプなんだ、頑張ったのはお医者さんとナースさんだろ


 「ふみ姉ちゃん何の話だって思ってるでしょ〜」

 「五年間グースカ寝てた弟に頑張った言われて姉ちゃん怒りそうだよ」

 

 まぁまぁ聞いてくれよ〜とニマニマしている隆文を見て、何となく嫌な予感がした、姉弟の勘だろうか


 「俺実はゲーム世界に居て、その世界救ってきたんだよ」

 「寝ている間にお前の中二は終わったよ」

 「ひっでぇ!信じてくれねぇ!」


 誰が信じるかそんなもん、VR MMOの世界旅しました〜なんてラノベか


 「信じられるかそんなもん、母さんには言うなよ」


 母さんに言ったら、今度こそメンタルが限界を迎える、アウトだ


 「言っちゃったけど信じてくれたよ?」

 「私達のお母さんは現実逃避が得意なようだね」


 母さん、現実を見てくれ、この状況から逃げないで


 「父さんには殴られたけどね」

 「良かった仲間がいた、私も一発いい?」


 ちょっと待って!と慌てる隆文を睨んでおいた、まぁ説教は父さんに任せればいいだろう、私の分野じゃない


 「で、そのゲーム世界で何したんだ?」

 「まぁ色々世界救ったりしたんだけど、一つ凄い思い出に残ってるのが、俺と同じゲーム世界に巻き込まれた女の子がいて、その子と、まぁ付き合ってた……かな?っていってぇ!」


 全言撤回、家族が心配してる間にリア充やってた奴に姉の拳を喰らわせておく、これは家族の義務だ

 隆文の奴が涙目になっているが、知らん


 「世界救った方が惨めなものね」

 「ふみ姉ちゃんの悪役臭が増してるよ!怖い!」


 悪役臭ってなんだよ、悪役臭って

 寝てる間に語彙力まで低下したか?


 「まぁふみ姉ちゃん、その子めっちゃ良い子なんだよ、現実世界でも会えたらいいねって約束してるんだ」


 まぁ五年間ゲーム世界とは言え付き合っていたのなら、まぁこれからも付き合えば良い、なんかゲーム世界を肯定している自分がいる、あぁ嫌だ


 その時また部屋の扉からノックの音が聞こえてきた

 母さんか父さんかなぁ


 「taka君久しぶり!!」


 そう言って現れたのは身長百八十越え、ムキムキナイスボディな、ボディービルダー(?)お兄さんだ


 「隆文知り合い?」

 「えっ知らないんだけど……」


 「taka君酷いじゃない!ゲーム世界で五年も付き合ってたじゃない!」

 

 あぁ私は全てを察した、そう弟はあくまでゲーム世界に居たのだ、すなわちネット世界

 弟はネットにいるこの存在を知らなかったのだ


 「お二人の時間をお邪魔したら悪いから私は帰るね」

 「えっちょっ……ふみ姉ちゃん!?」

 

 弟の叫びを聞き流しつつ、謎の優越感に浸るのだった


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