絶望……そして希望5
「ようやく成功いたしましたわ!」
目の前のいかにもお姫様な人物は私たちを見るなり嬉しそうに頬を綻ばせていた。
クラスメイトはただ茫然としていた。
まるでその場で時が止まっているかのように。
それは至極当然のことで、現状を冷静に判断して周りをしっかり見れてる自分が異常なんだと思う。
とはいえ、ここでお姫様に対して私が開口一番を務めようものなら後々に面倒なことになると思い、私も口を開こうとはしなかった。
「あ……そうですよね。えーっと皆様、わたくしのお姿は見えていらっしゃいますでしょうか?」
いつまでも動きのない私たちを疑問に思ったかのような表情を浮かべた後に、ああなるほど!と言ったような顔になれば、恐る恐ると言ったように質問をしてきた。
そこで初めてクラスメイト達に動きがあった。
「な、何なんだよここ……。」
「落ちたと思ったら……えっと……え……?」
「いってえ!夢じゃねえのか!!?」
「誘拐!?ちょっと!どうなってんの!!?」
まあ予想通りというかなんというか。
冷静になっている自分からしたらやたら滑稽なのだが……まあ気持ちも分かるので深くは考えないことにする。
「みなさーん!みなさーーーん!はい注目してくださーい!」
そんな様子の私たちを見れば逆に安心したようで、お姫様は手を叩きながら大声を出しながらも嬉しそうだった。
しばらくしてクラスメイトたちは静かになった。
怯えている者、警戒している者、三者三様ではあったが……。
「お話を聞いていただけるようで何よりです。まずは自己紹介させていただきますね?」
お姫様はクスクスと笑った後にくるりと一回転してスカートの裾をちょこんと上げて自己紹介を始めた。
「私はここクレアリーナ王国が女王であるメイビス・クレアリーナと申します。皆様には世界の脅威である魔のつく者を討伐していただく勇者となってもらいます。」
私がお姫様だと思っていた人は女王様だったみたいだ。
話しの内容はなかなかに許容し難いものではあったが……。