モノホンは違うね
話は戻って朝方からなんだけどね、
昨日からガチャガチャうるさかった戸を開けると、開いた戸の真ん前で気絶して倒れてる人がおるのよ。
倒れてるギルドマスターの自業自得の結果だから、それに関しては何とも思わないけど、どうにも耐えられないのが臭い。
何回も気絶もし失禁したり、吐瀉なんかもしてしまったんだろうね、部屋からなんとも耐え難い臭いが漂ってきたので慌てて部屋のあちらこちらを開けたよ。
モンスターの死骸はね、マネックスが持ってる魔法のかばんが間に合わなかったから、部屋の窓から裏手のグラウンドに投げ込んだんだけど、迷惑だったよね。本当にごめんよ、初心者冒険者のみんな!
「まぁ~なんだ、良くもまぁこうやって寝てられること」
なんて嫌味を言いながら、ギルドマスターをずりずり引きずるギルドの窓口社員を見ながら、なんとなく手持ちブタさんになってしまったんで、なんとなくそこらへんの掃除を始めてみました。
床や机を水拭きしまくっていたら、ギルドの社員さんに申し訳ないと言われてしまったんだけど、考えてみたらここまでやらかしたのは俺のせいなので、せめて匂いが消えるまではきっちり掃除させてください!とお願いしながら床拭きをしていると、気が付いたら手の空いてる社員さんが手伝ってくれてるの。
本当にありがたくて、笑顔で掃除をしていたら、戸を叩く音が聞こえてきたので、はーい空いてますよーなんて言うと、ガチャリと戸が開く音がして「失礼するよ」という声と同時に、50代半ばくらいの白髪の紳士が入ってきたんだよね。
その姿を見た社員は「ギルド長!!!大変失礼しました!今お茶入れます!」なんて慌ててるので、俺結構戸惑っちゃったんだ。一応俺お客様で被害者なんだけど、考えてみたらギルドにも所属してない他人だから、ここで掃除してること自体おかしなことだと思っちゃったのよ。
んで、お邪魔かな?って思って外に出ようとしたら「しばしお待ちいただけませんか?ムラヌシさん」って止められちゃったんだ。
なんで俺の事知ってるですか?って聞くと、後で改めてお詫びをしたいと思いますが、と前置きをし、
「この度はこちらのギルドがお客様にご迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんでした。全ギルドの代表として、お詫びいたします」って頭を下げて俺に謝ってきたんだよ。
だ、代表の方なんですか?‼
思わぬ人物の登場に、俺、本当にびっくりしちゃって、慌てて頭上げてくださいなんて言っちゃったよ。
思い返してみても、異世界に来てからこうやって真剣に謝罪を受けた事ってなかったから、人種世界関係なく、誠意をもって対応してくれる人もいる事に嬉しく思っていると、これから被害者の方に集まっていただき今後の話がしたいということだったので、ギルド長と呼ばれてた方と一緒に泊まっていた宿に行く。
丁度朝ご飯が終わり、各自が適当に話しをしていたところだったので、ギルド長さんに話をしてもらったところ、みんな誠意をもって対応してくれてる人かも?という事を感じたらしく、まずはきちんと話を聞いてもらいたいという思いから、ギルドに行くことにした。
少し広めの会議室のような部屋に、
・冒険者被害にあった馬車大破組
・馬車大破組の後ろにいた俺らの馬車組
・スケット街の区長さん達数人
が集まり、ギルド長さんとギルドの社員さんとの話し合いがはじまりました。
ギルド長さんの謝罪の言葉から始まった話し合いは、ほぼ被害者一同の訴えに沿ったものでした。
・元ギルドマスターの解任。
解任理由はギルドを私物化し、隠ぺい行為迷惑行為などを多々行ったことによるもの。
・一般市民に被害を与えた冒険者にはペナルティを課す。
・新ギルドマスターに関しては、この地で働いていた冒険者から選出する。
当面の間はギルド本部から人を呼び、ギルド候補が決まったら引継ぎをする形にする。
・区長などから上がっていた、街の様々な仕事はすぐに受けられるように手配する。
今まで迷惑をかけていた分、依頼料は勉強する。
まずはここまで聞いて、街の区長さん達はにこにこ顔で帰って行く。
元々、陰で冒険者さんが仕事を受けていたことには感謝していたので、これで依頼がしやすくなって良かった!と喜んでいる年配の皆さんの笑顔が印象的でした。
次に俺ら冒険者による巻き込まれ被害に対しては、
・被害額などを算出してまとめたものを見てくれ、それに沿った保証プラス、慰謝料として一人500G(約5万円)をつける。
次に、この話がまとまり、俺以外の馬車に乗っていた方と、馬車の関係者の方々は納得して席を立つ。
特に馬車が破損した御者さんに達に対しては、馬車の販売等にも便宜を図るということだったので、馬車の関係者、護衛の皆さんは、どうせならといろいろ案内してもらい、良い馬車を購入するようだ。
みんなに良かったね!と話をしながらも、「あなたのおかげでうやむやにならなくて本当に良かった」と言ってもらえて嬉しく思っていると、最後に残った俺に対して、ギルド長さんは「改めてありがとうございました。あなたのおかげでお互い穏やかに話を進める事が出来ました」って頭を下げてきたんだ。
俺何もしてないですよ、なんて話をしたら、馬車に乗っていた客でありながら、
・人命救助
・モンスター退治
・被害者への食事等の提供
・深夜の警備、街までの護衛
これらをすべてこなした貴方が何をおっしゃってるんですか!ってかえって怒られちゃったよ!
それらについては、うちの家族が協力してくれたのもあるので、というと、丁度タイミングよく、カミサン、イデア、マネックスの三人がギルドまで来てくれたんで、それらについての保証について話をする。
こちらからの提案は、
・食事を提供した時にかかった費用の負担。
・俺、カミサン、イデア、マネックスに、ギルドに入るテストを受けさせて欲しいというお願い。
・くじ賞品を探して頂くための依頼書を受付して欲しいというお願い。
この三点を出してみたところ、快く承諾してくれました。
まずはくじ賞品を見せてみると、叩いたり、魔法で品物を鑑定などした後に「各冒険者ギルドに通達を出しましょう」と言ってくれて、依頼料や報酬はギルドのほうで出すということまで言ってくれたので、言葉に甘えることにしたよ。
この後も金銭面の保証についてのやりとりだったり、家族でテストを受けてみたり、今回の陰の功労者である勇気に、ギルド長からお礼を言ってほしいというお願いをしたところ、手紙を書いてくれたので、それらを持って俺らは日本に帰ることにしたんだ。
ギルドの代表の方が自ら動いてくれなかったら、今頃どうなっていたことか・・・本当に有難い。
やっぱり、モノホンの代表は違うな!
最近、日本にいる事が少なくなったから、日本が恋しくなってきたのもあるんだけど、そろそろ日本でも商売したいなって思ったんだけど、何を売れば良いのか?真剣に考えたいって思ったんだ。
お金はあるけど、稼いで養ってるっていう実績が欲しい。
そんな贅沢な思いを胸に日本に帰る俺。
さて、ホント真剣に考えないとな~




