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反抗期太郎

いつもケル村に行って、いろいろ仕事をした後、なんだかんだ日本の家に帰って、家族でご飯を食べるのが日課になってるんだけど、最近息子の様子がおかしい。


しきりに「ねぇちゃん達だけずるい」とか「俺も異世界に行ったら活躍できるのに」とかブツブツ言ってるので、あまり良い傾向ではないとは思ってるんだけど、まだ小学6年生の息子が異世界でどこまで対応できるのか?とても不安に思ってるので、なかなか行動に移せなかった俺。


ただ、この前「俺異世界で一人で生活できる!俺家出する!」なんて言い始めたもんだから、とうとう堪忍袋の緒が切れて、思わずグーで殴りそうになるのを抑えて、説教かましたんだけど、それでもガンとして言うことを聞かなかった息子。


ここまで折れなかったのははじめてだったんで、「わかった、明日。学校から帰って来たら、異世界に連れてくから実力見せて父さんを納得させてくれ!」と言って、説教を終わらせたんだ。


その後、カミサンとイデア、マネックスと話をして、勇気を異世界に連れて行き、現実を見せてやらないといけないな、という事を言うと、


カミサンは「まぁ~ほどほどにね」とあきれ顔で一言。


イデアは「ゴブリン退治かなぁ?」と一言。


マネックスは「隣の村までお使いでもさせてみたらどうですか?」と一言。


うん、俺、全部やらせようかと思ってるんだけど、鬼かな?と言うと、三人して「「「鬼だ!」」」という事だったので、改めて自分が言い出したことの恐ろしさをわかってもらおうと思った次第です。



で、帰宅後、少し早めに帰ってきた息子を連れ、マネックスに頼んで移転の魔法をかけてもらって着いた先は、俺が耕している畑。まだまだ開拓が進んでおらず、中途半端に畑が出来てたんで、開拓のお手伝いをしてもらおうと思い、早速勇気を使いまくる。


いや~、実は、あそこに生えてる木を切り倒して、根っこを掘り返してから、畑を作るのって本当に大変なんだよなぁ~。俺もここまでの畑を作るのにまる一日かかったから、勇気が出来るのであれば、俺よりも広い畑作ってくれよ。


そういい、鍬を持たせて木がある場所に向かわせる。

鍬も持ったことのない勇気だったんだけど、自分が「活躍できる」と言った以上、本当に活躍して見ろよ!という大人げない俺の言葉になんとか鍬を振り上げて、そのまま、振り上げた方向に倒れる勇気。


土まみれになった体を見ながら、どうしたらいいのかわからずこちらを見ているが、「活躍出るんだろ!やれよ!」と突き放す俺。


「くそっ!」なんていっちょ前に文句をたれる息子を見ながら、畑を耕していると、遠くに緑色のモンスターが見えたので、「勇気!あっちにゴブリンいるから倒してこい」と一言。


ようやく、へっぴり腰で鍬を持ち上げて振り下ろす事が出来つつあった勇気が「えっ?」と、驚いた顔をしてるので、「だーかーらー、あそこにいるゴブリン倒して来いよ!邪魔だからさ」と一言言うと、「武器ないし・・・」と言い訳するので、一度だけ見本見せてやるからと言い、俺はそこらへんにある石を持ってゴブリンに向けて投げ込む。


すると、石は一匹のゴブリンの頭に命中したらしく、その場に倒れ込んだ。

それを呆然と見ている勇気に「やってみろ」と言うと、石を掴んで投げたのはいいけど、本気で命中させる覚悟もなければ、運動能力もないので、石は明後日の方向に飛んでいってしまい、ゴブリンは逃げてしまったんだ。


「活躍するんだろ?どこで活躍できるんだ?あ”?」と言いながら、勇気に鍬を持たせて、また開墾の手伝いをさせようとすると、「疲れた」というので「甘えんな!最後までやり切れ!」と突き放すと、泣きながら滅茶苦茶に鍬を振るい始めたので、ちょっと遠くから見守っていると、孤児院の子達が勇気に近寄る姿が見えたので、俺はちょっと隠れて見守る。


「ゆう兄ちゃんも同じ事されてるんだね」という子達に、勇気が「えっ?」とびっくりした表情を見せると、数人の子達が「俺らも、おじさんに「僕はもっと出来る子!魔物も倒せるし、他のお手伝いも出来る!だからもっともっといろいろさせて!」なんて言ったら、たぶんだけど、ゆう兄ちゃんと同じことをさせられたんだよね」というような事を話している。


「だってさ・・・俺だってねぇちゃん見たいにいろいろやってさ、褒められたいもんよ・・・ねぇちゃんたちは異世界にいたから魔法が使えるし、いろいろ出来るから褒められる・・・俺は学校でしかいろいろ出来ないから褒められないもんよ・・・」なんてぼそっと言ってる息子。


でも周りの子は「本当にそうなの?」と一言。


「えっ?」と勇気。


「本当に学校でしか出来ないの? 自分が出来る事一生懸命してる? 出来ないと思ったらなんとか出来るようにいろいろな人に教えてもらったり、自分自身で挑戦して見たり、いろいろな事試してるの?」なんて周りに言われて、「う~ん・・・学校から帰って来たら疲れたって言ってゲームしかしてないかも」とか「父さんが何してるかわからないで、ただ見栄張ってただけかも?」なんてしょんぼりと言う勇気。


それを見ている子達も「こんな事言ってるけど、これっておじさん、兄ちゃんから見たらお父さんに言われたことなんだよね」と、照れ笑いしているよ。


うん、結構スパルタだったと思うけど、俺、孤児院の子達に同じ事したなぁ・・・


シスターから相談されて、俺のやってる事一日かけてやらせたあと「どうだった?」と聞くと、「大人じゃないから全然出来ない」とか「武器がないから出来ない」なんて事を言い出したので、「本当に自分が出来る事をすべてやったのか?」なんて事を言ったんだけど、それを覚えてくれてるのは嬉しいな。


日本で暮らす分だったら、勇気見たいにぬるい性格でもなんとかやっていけるのかもしれない。

でも、危険と隣り合わせで暮らしているここの子供達には、絶対に通用しないなと思っていたので、刺激的な説教をしたんだけど、少しは伝わってくれてるようで安心したよ。


ま、そのぬるい勇気なんだけど、その言葉を聞いて何か思ったのか?子供達に別れを告げて、俺のところに来て一言「生意気な事を言ってごめんなさい。ボクにチャンスを下さい」って頭を下げてきたんだよね。


もちろん、この行動だけでも反省の色は見えたので許してやるか~なんて思ったんだけど、ここで甘い顔をするとつけあがりそうだったので、「チャンスってなんだよ!」と言うと、「中学生までもっと自分に出来る事を増やして、きっと今日出来なかったことを出来るようにして見せる!それまでの時間を下さい」っていったので、「そう!それでいいんだ!頑張れよ!」と言って頭をなでる俺。


せっかくなんで、親子一緒に木を切り倒して、根っこをどかして更地にするまでやってみたんだけど、今度は俺が切り倒した木の跡を鍬でどかそうとしたり、倒れた木の破片を片付けようとしたりと、自分が出来そうなことからやろうとしてたんで、少しは自分が出来る事は何か?なんてことを考えながらやってるのかな?と思い嬉しくなった俺がいましたよ。


帰りに、倒れているゴブリンから小銭をもらい、ゴブリンの死体を肥料と一緒に埋める俺。


地球でない異世界ではこれも必要な事なんだ、と言うと、何か思うところがあったのか?うなずく勇気がいました。


異世界だからと言って、いい事ばかりじゃない。

辛い事は沢山あるけど、それを乗り越えてみんなに幸せになってほしい。

勇気にも今日の出来事をきっかけにして、自分自身を見直してもらえたら幸いと思う、今日この頃の俺でした。

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