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お妃候補? その2

う~ん・・・いろいろ思うところはあるんだけど・・・


まずは、嫁入り前の女性に傷をつけるのもどうかな?なんてぼそりと言うと、「あ、その紋章はケルディア様であれば取り除くことが出来ますので、一度魔王城までおいでいただければ大丈夫です」とアサヒナさん。


ただ・・・あまりに突然の事なので、すぐに返事は出来ない。


だけど、ある程度の配慮をしてくれている気持ちもわからないでもないし、アサヒナさんの立場というものもあると思うから、一度手紙か何かで返事を書くので、それをお持ち帰りいただくことで今回はご遠慮いただけないか?というと、アサヒナさんは「ありがたいです、是非お願いしたいです」との事。


イデアにも、「一番はイデアの気持ちなんだけど、相手が正直な気持ちを言ってくれてるんだから、それに対してなんらかの返事はしないといけないと思うんだけど、どうかな?」と言うと、う~ん・・・とうなりながらも「ちょっと考えさせてほしいな・・・お母さんのところに行ってくる」と部屋を出てしまった。


とりあえず、俺はこのお城の事も含めて何らかの返事はしたいと思ったので、アサヒナさんに手紙を書くよというと、「もし良かったら、この水晶に向かって話をしていただければ、画像と音声が相手に伝わるので・・・」と言ってくれたんだけど、俺、今水着の上にタオル羽織ってるだけなんだよね・・・


さすがに失礼かと思うので、ちょっと着替えてくるわーと言うと、「すいません、私もちょっと寒くなってきたので着替えてきます」とアサヒナさん。


あ、すいません・・・あとでゆっくり温泉浸かってください・・・というと、いえいえ~と言いながらカウンターに向かっていくので、準備が終わったらこちらに来てくださいと言って俺も部屋を出て着替えに向かう。


途中でイデアとカミサンに会ったので、水晶で記録をとることができるから、俺はこの施設の説明をするために記録撮ってもらうよ、と話をすると、カミサンが「魔族とか言われて、よくすぐに話を聞いて信じたりするものね・・・」と呆れてるよ。


まあ、おっしゃる通りだけど、もし俺らが最初に想像していた悪者的な魔族だったら、力ずくで連れ去るだろうし、この建物だってあっという間に占拠されていたと思うんだよね。


それに、なによりさ、アサヒナさんの気と言うか・・・なんか全身から力強い何かが出ているのが見えるから、きっとかなりの力の持ち主なんだな~って思ったから、それとは対照的な誠意ある行動を見て、彼の事信じちゃったんだよね。と言うと、不思議そうな顔をするカミサン。


「まあくん、そんなの見えてたの?」なんて言われたんで、逆に誰でも見れるもんじゃないの?って言うと、「それが見れたら、アサヒナさんが入ってきた時点でここは大混乱よ!」って返される俺。


ただ、アサヒナさん気を抑えてるし、そこら辺は配慮してくれたんじゃないの?と言ったらさ、着替えを終えたアサヒナさんが「闘気漏れてましたか・・・まだまだ修行が足りませんね」と眉間を抑えてる。ぼそっと「だから俺ってこういうの合わないって言ってたのになぁ・・・」なんて愚痴を言ってるあたりまだまだ大人になり切れてないところもあるのかな?なんて思えて、ますますこの青年に好感を持った俺。


とりあえず、水晶に向かってこの施設の説明しようと話をしてみる。


・この施設のオーナーであるムラヌシマサキ=異世界人 である事。

・この施設の外見は城であるが、使用用途は温泉施設である事。

・外見は異世界人の私の希望からお城になっているが、戦い目的で建てたモノではない事。

・暴力的なものがなければ、是非当店をご利用頂ければと思うので、一度ご来店ください。とPR。


念のため、この施設の内容と料金体系、注意事項などを書いた紙をアサヒナさんに持ってもらい、正直にここの感想を伝えて頂けると嬉しいと念を押してみたりして・・・


次にイデアも・・・と思いながらも、「どうする?俺が代わりにいろいろ言っておこうか?」と言うと、散々迷って、「お父さんとお母さんと一緒なら・・・」と言ってくれたので、俺とカミサンはイデアの脇に座ってイデアの手を握る。


そして、イデアが正直に今の心境を語りだす。


「アザが出来るまで、私は人間の奴隷として生きていました」


「アザが出来て、しばらくしてから恐ろしいことが起こり、それと同時に魔法が使えるようになっていましたが、その時は恐ろしさのほうが先に来ていて、自分がどうなってしまうのか?という不安しか考えられませんでした。」


「それを救ってくれたのが、今いる二人・・・お父さんとお母さんです。」


「今は二人と弟のゆうくんのおかげで「生きてて良かった」って思っていられていますが、まだまだ私は誰かに頼らないと生きていけない弱い存在だと思っていますし、いろいろな事を学んで大きな人間になりたいと思っていますので、誰かを好きになったり結婚したり・・・という事は考えられません」


「自分が自分らしく生きていくため、いろいろな経験をして大きくなっていくために、まだまだ時間が欲しいと思っているので、お妃さまというお話は考えられません・・・ごめんなさい」


「けっして魔族がどうこうというわけではなく、自分の問題なので・・・すいません」


・・・と、時々言葉に詰まりながらも、しっかりと自分の意思を伝えられたと思ったので、よくやったな・・・偉いな・・・とぼそっと言うと、えへへへと笑うイデア。


そんな様子を見ていたアサヒナさんも、ほっとした様子をしていて「真剣にお話下さって本当にありがとうございます。これで私の使命は果たせましたので、安心して国に帰れます」と頭を下げ、イデアに対しても「怖い思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」と詫びを入れていたので、こちらも一安心。


イデアも「誤解してました、ごめんなさい」と言うのを聞いて、アサヒナさんほっとしたのか「こんなに美しくて心が綺麗なお嬢様に嫌われたままだったら、私は心が折れたまま国に帰ることになっていましたよ・・・」とぽろっと言った言葉に顔を赤くするイデア。


やだやだやだ~なんて恥ずかしそうにぺしぺし俺の腕を叩くイデアを見て、とりあえず一安心の俺とカミサン。


「もう一回暖かくしてから帰ります。また機会を作って遊びに来ますので、よろしくお願いします」というアサヒナさんに、温泉名物として売り出そうとしている温泉茶まんじゅうを数箱持たせて手を振る俺・・・もちろん俺の自腹だよ!・・・これでお客様増えたら最高じゃん!


なんかほっとしたら寒くなって来たよ・・・俺もひとっぷろしにいくかな?

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