クリーンの神様とトイレ その1
「私、クリーンの魔法を統括しているクリーナと申します。もう耐えられないんです、助けてください!」
・・・・ん?
・・・・何言ってるんだろう?
と、勇気よりもちょっと大きい女の子を目の前にして、かなり悩んでしまった俺なんだけど、クリーンの魔法を統括??魔法って統括するもんなの?・・・そもそもこんな小さい女の子が統括って・・・女の子の妄想にしてはなんだか偉そうな感じだし・・・なんなんだろう?
って思っていると、なんかやたら臭い・・・
女の子を前にして失礼だから言えないけど、めっちゃ肥溜めの匂いがする・・・
窓口でさ、たまに風呂に入ってないだろ?ってくらい、めっちゃおしっこの匂いがしているお年寄りなんかいるんだけど、あの匂いがまだ優しく感じられる・・・そんな強烈な奴が目の前から漂ってきてるんよ・・・
銀色の人が拾ってきた子供達なんかもそれなりだったけど、比じゃない!
これはやばいもんだ!と思ってさ、「ち、ちょっと待っててね」と言うと、女の子が絶望って感じの表情をしたので、「大丈夫!絶対に戻る!おっちゃん約束守る!」と言いながら、慌ててカミサンのところに走る俺。
「ん?なんか匂うんだけど、大丈夫?」というカミサンに「緊急事態だ!すぐに来て!」と言いながら手をひっぱり女の子とのところに連れていき、悪いけど、一番最初にこの地に到着した場所にこの子を移動させてくれ!と懇願したところ、あまりの臭さから状況をさっしたカミサンも慌てて移転の魔法をかけようとしてる・・・
ぉぃぉぃ、悪いけど女の子の手を繋いでくれ!俺も一緒に行くから!と言うと、「忘れてた」というような顔をして、女の子と俺の手をつなぎながら移転の魔法を使い、一番最初についた森の真ん中に移動したんだ。
前に来たときには、森の真ん中にあった原っぱという感じだったんだけど、到着していろいろ遊んだ時に出たぬるま湯が溜まっていたみたいで、目の前にはぬるま湯が溜まってできた温泉っぽいものが出来ていて、水があふれ出ている状態・・・これは好都合!とばかりに夫婦でいろいろ準備をしていく・・・
もう悠長な事は言ってられないんで、夫婦で女の子にお願いしたんだ・・・
「頼みます!一緒に体流しましょう!風呂入りましょう!」って!!!
・・・・
あまりの迫力に、女の子も駄目とは言えなかったのか?駄目と言わせないくらいの迫力がこっちにあったのかはわからないけど、恥ずかしさをこらえながらも服を脱いでくれたので、俺とカミサン急いで彼女を洗ったんだよね。
素っ裸の女の子を大人二人が念入りに洗う・・・
見る人が見たらとっても危ない光景だと思うんだけど、こっちは必死よ!
匂いからさ、絶対に一度では落ちないであろう激臭がしてさ、あのまま話してたら窒息死でもしちゃうんじゃないかな?って思うくらいだったんだもんよ!
さすがに俺は彼女の裸を見ないようにして髪の毛だけを洗ってるんだけど、髪の毛もなんかごわごわで、こりゃ何回も洗わないと駄目だなぁ・・・って長期戦の覚悟。
訪問入浴のお仕事を週一でしているカミサンは、身体担当になってくれてるんだけど、「ちょっと強めにこすってますけど、大丈夫ですか?いい匂いしてきましたね~」なんて言いながらだらだら汗を流してる・・・やべぇここにもプロがいるよ!
・・・・
それを何回繰り返したことだろうか?
・・・・
俺も腕がしびれてきたんだけど、徐々に彼女の髪の毛につやが戻ってきたり、程よい香りが戻ってきたのを感じて、今度は服を・・・って思ったんだけど、見た途端「駄目だこりゃ!」って思っちゃって諦めたよ・・・
カミサンも俺の様子を見て、自分の新しい服を用意しつつ、「もう耐えられない!」って服を脱ぎだして温泉に入っちゃった・・・ごめん!俺もなんだ・・・と俺も服脱いで入ったら、もうどうでも良くなってきて、3人素っ裸のまま温泉に入ってゆっくりしちゃったんだよね。
女の子も最初は恥ずかしがってたんだけど、徐々に良い香りに包まれていく自分に驚きながら、「すごく良い香り・・・私から良い香り・・・」とべそかいていたので、結果としてはやってよかったのかな?
ただ、強引にお風呂に入らせたことを夫婦で謝ると、クリーナと名乗っていた少女は「いえ、私がいけないですし、恥ずかしさよりも私を綺麗にしてくれたことが嬉しいので、大丈夫です。」と言ってくれたので、ほっと一息。
せっかくなんで・・・とこのまま風呂に入りながら話を聞いてみたんだけど、
その内容にびっくりでさ、俺、最初理解できなかったんだ・・・
カミサンが必死に理解しようとしてくれたから助かったんだけど、俺だけだったら訳も分からずキレてたかもしんないよ。
で、彼女が言うには・・・
この世界にはいろいろな神様がいて、いろいろなモノをつかさどってるんだけど、彼女は「空間」をつかさどる神様の部下らしいんだよね。
とある時から、急に彼女の職場にいろいろな汚いものが入ってくるようになって、なんでか原因を調べてみたところ、それがこの世界の人達が使っている「クリーン」という魔法のせいだとわかったらしい。
急いで魔法をつかさどる神様に事情を話したところ、慌てて魔法の仕組みを替え、人達の世界で使用されて天界のオフィス?に届いた汚いものを一度分解してから、人の世界に戻すという仕組みをつくりあげたらしいんだけど、その時すでに遅く・・・東京ドーム何個分?というくらいの量の汚いものが溜まっていたらしいだよね。
で、魔法をつかさどる神様はこれ以上何も出来ないと立ち去り、空間をつかさどる神様は空間を広げることで汚物を遠ざける事は出来たモノの、汚物の処理自体が出来なかったため、汚物の処理を一番下っ端である彼女に投げた・・・という事らしい。
それからが彼女の地獄の始まりで・・・
汚物の処理をするために、最初はそのまま世界に戻そうとしたんだけど、一滴汚物の滴を垂らしただけで、人間の世界に穴が空いてしまったため大怒られされ、仕方がなく、汚物を区分けしたり熱処理をしたり、なるべく臭いが出ないように炭などの脱臭効果があるもので囲ったりしてたんだけど、どうにも減らすことが出来ずにいたところ、たまたま人間の世界で呟いてた俺の声が聞こえたらしく、気が付いたら目の前に立っていたらしいんだ。
うわぁ・・・他人ごとに思えねぇ・・・




