銀色の人 その2
マネックスのかばんから追い出されて、疲れもあってすぐに寝てしまった俺。
日が昇るか登らないかという、朝っぱらに起きてしまったもんだから、何もすることがないなぁ~と思いながら近くに置いといた麦茶のペットボトルを片手に外に出る。
すると、玄関近くで、アデルがぼけーーっと空を見上げてたんで声をかけると、「うわっ!おっちゃんいついたの?」と驚かれて苦笑い。
なんかあったの?って声をかけるとアデルがおもむろに、昨日会ったことを話し出し、その内容に俺愕然・・・
カミサンが寝ていて、俺がマネックスの鞄にいた時かな?そんな偶然のすれ違い・・・俺いらないんだけど・・・
ちくしょーなんて思いつつ、一応確認しようと思って、スマートフォンを取り出し、イデアの写真を見せると・・・
「あ、この子!すっげぇーーー美人で可愛くて、俺本当に本当にびっくりしたんだよ!!」なんてはしゃいでるアデルに「あ、それ、俺の娘」という俺。
「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇ??!!!! マジっすか!!!!!!!!」と、驚きを隠せないアデルの頭をひっぱたきながら、「うっさい!子供達起きちゃうだろ!」と言いながらお母さんも近くに寄ってきたので、丁度いいや、と思い話をしていく・・・
銀色の人が異世界の俺の家に現れた事、いろいろあって子として迎え入れようとした事、責任感が強い銀色の子が、自分だけ幸せなれないとここに戻ってきた事、それを追ってここに来て銀色の人を連れ戻そうとしたこと・・・
あとは成り行きで今に至ってしまったんだけどね。と言うと、「気持ちはわからなくはないけど、また無茶苦茶な事やってるねぇあんたらは・・・」とお母さん。
まぁ~それは同感だけど、自分の子を大切にしたいって親心はわかってもらえますよね?というと、お母さんはにっこりしてうんうんうなずく。
ま、まぁ~そんな無茶苦茶な事をやっても許してくれて、それ以上に無茶苦茶な事をやった妻がいるからできるんですけどね~なんて言うと、さりげなくノロケもねぇ~ご馳走様~と言いながら、あはははと笑うお母さんを見ていると、本当に安心するから不思議なもんだ。
そんな雑談をしていると、カミサンが頭をぼりぼり掻きながら起きてきた。
「今何時~?」と目をこすりながら起きてくるカミサンに、うんおやじ~なんて昭和の親父ギャクを入れつつも、ここの時間なんてわかんないよーと言うと、「確かにその通りだねぇ・・・でもオヤジはないわー」というカミサン。
とりあえずスルーしないでくれてありがとう。
朝っぱらからで申し訳ないけど、俺は村長たちと打ち合わせがある。
約束の食料も置いてこないといけないから、魔法のかばんとマネックス借りくよ!というと、カミサンは「じゃあ私はお母さんとお留守番かな?」と言い、料理本を片手に台所に行こうとして・・・ってぉぃ!ちょっと待ったカミサン!
「えっ?ナニナニ?」と驚いているカミサンに、料理本の存在を聞くと「だって異世界で料理することになったら何をどう料理したら良いかわからないし、ちょっとでも参考になるかな?って思って持ってきた」との事。
偉い!偉いぞカミサン!と抱き着くと「なになになに?」と恥ずかしがってるんだけど、俺は全然気にしないでお母さんのほうを見て「お母さん!これで一つ約束クリアーですよね?」と言うと、笑顔でサムズアップするお母さんの姿。
これでお母さんとカミサンが、料理の事でいろいろ出来るので安心したよ・・・
それにしても、この数日、本当に時間が経つのが早すぎて、驚いているよ・・・
イデアがうちに来てから一晩経ち・・・
イデアの服を買おうとショッピングモールに行ったらCM出演を頼まれて2日。
イデアがいなくなってマネックスと出会ってどうにかしたので1日。
異世界についてアデルやいろいろな人と出会って、子供達を見つけて一晩して、今日で2日目。
今日含めて、あと3日で自分の住んでる世界での本業が待っていると思うと、なんともめんどくさい話なんだけど、さすがに本業ほっぽり出してこっちに専念するわけにもいかないし、できる限りの事はやっておこうと、頬を叩いて村長宅へ向かう。
ちょっと早いかな?なんて思いながら村長宅に行くと「開いてるから入って」という事だったのでお邪魔する。
村長を探すと、机の上でいろいろな諸手続きをやっつけている最中らしく、頭をぼりぼり掻きながら書類に向かっていたので、こっちも仕事しようと思い、あらかじめ村長に話していた場所に荷物を置いて行く。
マネックスには朝早く起こして申し訳ないというと「思念体ですから大丈夫ですよー」と言いながらもあくびをしていたので、昨日整理した通りに部屋に品物を置いてほしいというと、魔法のかばんからどんどん商品を置いて行く。
思ったよりも荷物が多く、入りきらなくなってしまったため、いろいろなところに置きまくってしまったけど、まぁ~勘弁してよ・・・と思っていると、荷物を見た村長がびっくりしてる。
「まさか本当にここまで用意してくれるとは・・・本当にあんたは神様仏様じゃぁ・・・」と感動しながら泣いているよ。信用してなかったんかーーーーーーい!
ま、手も空いたし、他の手伝いでもしようかな?なんて思ったら、村長がいろいろな書類を持っていたので「住民票」をコピーしてあげる。
マネックスにかばんからプリンタと紙出してちょ!とお願いすると、かばんから にゅっ とプリンタが出てきてくれたので、再度お礼を言ってからおやすみ~というと、かばんから手だけ振られた状態で出て、そのまま消えてった・・・本当朝っぱらから悪い事しちゃったなぁ・・・と反省。
で、住民票の下書きをプリンタに読ませて、とりあえず50部ずつ印刷をかけてほっといていると、村長が「すごい魔法ですなぁ・・・」と感心しながらお茶を持ってきてくれたので一服。
一緒に来てくれたアデルとちょっとほっとしていると、村長が何やら書類一式を持ってきてくれたので、お茶を飲みながら確認しようとしたんだけど、全く読めなかったのでアデルに頼むと、「これ山の権利書だよ」との事。
必要事項を読んでもらい、自分と村長、立ち合い者としてアデルのサインをし、晴れてあの山は俺のモノになったわけで・・・これでいろいろ面白いことが出来る!と喜んでいると、二人して「あっちの計画もよろしくですよ」と悪い子の顔になっているので、OKOK言いながらそっちの準備もする俺。
残された時間も少ないことだし、もうちゃっちゃとやっちゃいますか~!!!




