アデルくんの授業 その1
御者のおっちゃんがよだれを垂らしながらこっちを見ているのを、断固無視しながら、アデルとカミサンと三人で話をしていると、馬車がケル村に到着したらしく、降りるように言われた。
荷物を降ろしながら、御者のおっちゃんが残念そうにこっちを見ながらため息をついているのを見て、飴ちゃん2つくらい大人げないなと反省。
わざわざ声かけてくれたじゃんと思い直し、おっちゃんも飴ちゃん食べるかい?と言うと「ありがとうありがとう!」と涙を流しながら受け取り、大事に口に入れて感動しているよ。
おっちゃん、これから人を小ばかにするような態度とっちゃだめだよ!というと、ものすごく反省しているようだから許してあげる。俺心が広い!えっへん!
馬車を降りると、木製の民家が木の間にちょこちょこ建っていて、少し奥を見ると少し高い山が二つ、さらに奥を見ると奥に行けば行くほど高い山がそびえたっているのが見えた。
まるで天然の要塞だなぁ~と奥に連なる山々を見ていたら、アデル曰く、本当に要塞としての役割を果たしているのかも?との事。う~んよくわかんないや、後で聞いて見よう。
まぁ~立ち話もなんだし、ちょっと小腹も空いたからなんか食べようよと言うと、アデルが一軒の食堂を案内してくれたので、そこに行く。
着くと同時に「お帰りアデル!」と言いながら恰幅の良い女性がアデルを抱きしめている。
「恥ずかしいよ母さん」なんて言いながら、こっちをチラ見するアデルを見て、いつか勇気もこんな表情するのかな?なんて思っていると、アデルにお母さんと呼ばれた女性がこちらを見て「あらお客さんかい?いらっしゃいな」と笑顔で対応してくれた。
こんにちわ。アデルさんにはいろいろお世話になりまして~と世話話をしながら、良かったらお勧めの料理食べさせてもらいたいんですが、今大丈夫ですか?なんて言うと、「あ、じゃ急いで作るから空いてる席に座ってね」といって台所に向かって行った。
空いている場所が多いので、どうしようかな?とカミサンと合わせてると、アデルが「こっちがいいよー」と案内してくれた。
案内してくれた場所は、村の山々が綺麗に映る窓際の席。
目の前に広がる自然の光景に、思わず「綺麗だね」とつぶやきながらカミサンと椅子に座り、ほっと一息ついていると、程なくして、お母さんが料理を持ってきてくれた。
肉とジャガイモとニンジン、玉ねぎが煮込まれている、汁多め具材少なめの肉じゃがを想像するような料理が出てきたので、早速「いただきます」と言って夫婦で頂く。
ただ、塩も胡椒も利いていない素材の味をしっかり生かした料理だったので、微妙な顔をしてしまったところ、アデルから「やっぱりな」と言われ、申し訳ないと謝る。
まぁ~仕方がないんだけどね、と言いながらアデルも出された料理を食べながら、ここの食糧事情から講義?授業が始まったりする。
【身近な食糧、食品について】
やっぱりここでは塩、胡椒は貴重らしい。
山が多く、周りに海もないため、自分の領土ではただでさえ貴重な存在だが、以前は、貴重でも必要なものとして前領主が、他の領主などから大量買い付けをし、各地域に分配することで、どこでも庶民がなんとか手の届く範囲で塩を手に入れることが出来た。
だが、前領主が亡くなり、前領主の息子が領主になったところ、急に塩が手に入りにくくなってしまったらしく、あっという間に塩が高級品になってしまったという。
山が多いという事は岩塩の可能性もあるのでは?と話すと、「岩塩って何?」という顔をされてしまったので、この世界では塩=海という固定概念があるのかな?と思い、話をさえぎってしまったことを謝り、続きを話してもらう。
話ながら食べている、煮込み料理を例に挙げて話してもらったんだけど、じゃがいもと玉ねぎは取れやすく庶民の食卓にあがりやすい。
肉は山にいる害獣を倒すハンターみたいな職業の方がいて、その人達から購入することが出来るので比較的口に入りやすい。
ただ、ニンジンや他の野菜になると、このケル村では少ししか育てていないため、他の村などから購入することが多いとの事。
地域差はあるけど、どこの村や町もそこそこ活気があり、今までは共助共演で助け合って生活をしていたのだが、最近は塩がいきわたらなくなったのをきっかけに、他の村も自分の事を守ることに精一杯になってしまい、交流がおざなりになってしまい、食糧事情が徐々に悪くなってしまっているらしい。
【通貨について】
G(金)とS(銀)とC(銅)が基本らしい。
Gでも金でもいいらしいんだけど、そこらへんごっちゃになってるみたいね。
1G(金)=100円
1S(銀)= 10円
1C(銅)= 1円
ほとんどの人がジー、エス、シーと言ってるらしい。
ほとんどのお金は硬貨で、基本、裏には国王様の肖像画がある作りになっている。
1Cは、軽い茶色の小さな丸い形のコインに”1C”と書いてあり、
1Sは、銀色の厚みのある丸い形のコインに”1S”と書いてある。
1Gは、金?黄色?の金属の小さな丸い形のコインに”1G”と書いてある。
あとは、50Gコイン(5000円)と100Gコイン(1万円)・・・それ以上の硬貨を使ってやり取りをすることは一般社会でほとんどないということなので、とりあえずそれだけ覚えておきたいと思ったんだけど、たぶん、自分でお金の計算する時は日本円でやるんだろうなぁ~って思うんだ。
あまり大きな取引ってないかもしれないし、あったとしても、誰かにぶん投げると思うから、基本的な知識として覚えておけばいっかな?って思ってるよ。
ちなみに今目の前にある煮込み料理は2G5S=250円らしい。
個人的には塩コショウをもう少し加えて4Gあたりで出せば、大行列が出来る名店が誕生するだろうに、と思ってしまったのを見て、カミサンは苦笑い。
また口に出たか俺・・・もう嫌っ!




