表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/80

偵察に行ってきます その2

三回目の移転の魔法になると、なんとなく慣れてきたのか?到着時には意識を保っていられた俺。


早速手荷物を持ち、カミサンの指示通り歩いていく。


俺の恰好は、安定の青系Tシャツにステテコ。黒系のスニーカーにキャップ。

それに、黒系の登山用のリュックと、念のため背負子を持ってきたんだけどね。


「やっぱり、私歩く」

「いや、このほうが早いし、俺全然重くないんだよね・・・さぁどんどん指示出して!」


と背中からのカミサンの声を半分無視してガンガン歩いていく。


背負子にカミサンを座らせ前にリュックを持っているんだけど、こちらに来てから、全く重さを感じないまま荷物を持つことが出来ているんだ。


俺が住んでいる場所でリュックを持った時、「や、やばい!これ、自分で持てるかな?」なんてちょっと心配になり、荷物の半分を魔法のかばんに入れさせてもらったんだ。


だけど、この調子だったら全く問題なく持てるのと、何かの取引があった時に荷物が軽すぎると怪しまれるので、元に戻したんだ。


なんでかな?って思ったんだけど、「地球では、人は重力を受けているけど、異世界では重力がないため、超人のような身体能力を発揮できる」という様な物語をどっかで見たことがあるんで、たぶんそれかな?なんて思ってる。


深く考えても仕方がないし、カミサンの負担が減ればそれでいいや~って思ってるから、ま、結果オーライだね。


そんな事を考えながら、カミサンと「降りる降ろさない」論争を繰り広げてると、俺らの後ろからガシャガシャ音をたてながら、馬車が走ってくる。


以前息子と一緒に牧場で馬車に乗ったことがあったが、その時の動力はトラクターのような機械仕掛けのものだったんだけど、今目の前にしているのは、当たり前かも知れないけどお馬さんが動力の正真正銘の荷馬車。


俺、感動してしまったよ!


ま、まぁ、そんなん見ながら堂々道の真ん中歩けないので、端に避けて歩いていると「お~い、おまえさん方、乗っていかんか?」と、気の良さそうなおっちゃん御者さんが声をかけてくれた。


「「言葉通じるな(ね)!!」」

と夫婦そろって笑ってしまったら、こちらを見ていた御者さんが不思議な顔をしたのに気がつき、慌てて、すいません、行き先は何処ですか?と聞くと、「メリアデス領のケル村だぞ」との事。


カミサンに、イデアの魔力の方向と一致している事を確認していると、こそこそ話しているのを見て勘違いした御者さんに「あんだ、あんたら金ないんかい?」とあきれ顔されてしまった。


そんなに俺ら貧乏に見られたんかねと、ちょっとイラっとしたが、まだ、こちらのお金もわからないから、下手に魔法のかばんからお金を出してぼったくられるのも嫌だなぁと思い


「これから塩を売りに行こうとして、その金で何とかしようとしたんだけどね」


なんて話したら、馬車のホロの中から「おっ!塩売りかい! 御者のおっちゃん!おいらが金払うから乗せてやってよ!」と声が聞こえ、中から無邪気な笑顔で男の子が顔を出した。


年にしたらまだ20歳にもなってないだろう褐色の若者だが、白を基調とした長めの外套と、下は紺色のすらっとしたズボンに身を包んでいるので、身分が高そう。


ただ、よくよく見ると白い外套の肩部分が大きく擦り切れていて、他にも綺麗に着ているものの、すり傷などがちょこちょこ見えるから、きっとこれが彼の一張羅なのだろうと心の中で思って見たりする。


彼にお礼をいいつつ「良かったな、運良く金出す奴が見つかって」という御者の言葉にまたカチンと来ていると、「まぁまぁ気にすんなって、あのおっちゃんも金もらうために働いてるんだからさ」なんて言われ、若者に諭されて恥ずかしいなと思ってしまった。


ささどうぞ~と言われ、彼が自分の荷物を動かしてくれ、俺らのスペースを作ってくれたところで荷馬車が動き出したのだが、改めて彼を見ると、足元には両手でやっと抱えきれるかどうかの、大きくて四角い植物で編んだであろう籠が置かれていた。


さっき片手でひょいっと持っていたのを見ると、きっと彼は行商の帰りなのかな?なんて妄想をしていたら、カミサンがツンツン脇をつっつく。


あ、妄想が過ぎたな、俺。


「助けてくれてありがとうございます。改めて、俺、マサキと申します。こちらは妻のユキです。」


そう軽く自己紹介をしたら、彼が苦笑いして「う~ん、正直固っくるしいの苦手なんだよね、敬語なしでお願いできないかな?おいらアデルってんだ、短い間だけどよろしくな」と握手を求めてきたので、こちらも笑顔で握り返す。


実は俺もなんだよねと言いながら、お近づきの印として持っていた飴ちゃんを二つ渡してみる。


ひとつはミルク味、もう一つは黒飴を紙で包んで両脇を締めた状態で渡したんだけど、どんな反応するのかな?なんて思っていたら、


「うをっ!なんだこれ!めっちゃくちゃ甘い!こんなに小さいのにしっかり口の中に味が広がって・・・この白いのは”うしちち”の味に似てるけど・・・甘いのなんだろう?・・・この黒いのはわからないな・・・でも両方ともうまいなぁ・・・こんなの食べたことないや!・・・すげえや・・・すげぇや・・・」


なんて、あっちの方向に行ってしまいそうな感じだったので、ぉーいなんて言いながら話をしようとすると、一瞬”あっ!”なんて言ったかと思うと、急に「あんなうまいの食べたからついつい夢中になっちゃったよ!」なんて頭を書いて照れている。


何気に御者がこっちをチラ見してるけど、お前にはやらねぇ!!


そんなアデルと言う少年の様子を見て、「あ、こいつ悪い奴じゃなさそうだな」と思いながら、いろいろ聞いてみようと思い、話をしていく。


荷物見てたんだけどさ、今行商の帰りとかかい?もし良かったらさいろいろ教えてくれないかな?

正直言うとさ、俺、突然ここに飛ばされてきちゃって、ここの常識とか全くわかんないんだよね、なんて言うと「そうだろうね、アンタ異世界人でしょ?」とアデル。


おお~「異世界」って言葉がすらっと出てくるあたり話が早いや~と思った俺は、アデルに、ケル村についたら、飯おごるから、本当にいろいろ教えてくれ!こっちもいろいろ話したりするからさーと、さらに飴という餌で釣りながらお願いする。


「しょうがないなぁ~もう~」と言いながら、満面の笑みを浮かべて了承するアデルの表情を見て、とりあえず常識GETだぜ!と思った俺。


相変わらず御者はこちらをちらちら見ているけど、謝るまでぜってぇやらねえ!!!


そう思いながらも、荷馬車は揺れながら、目的地に向かっていくのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ