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ばかやろう

すっかり寝過ごしてしまった。


今は朝の9時。


みんなを起こそうとしてベッドを見る。


カミサン、勇気。



・・・・・



あれっ?イデアがいない。



朝風呂でも入ってるのかと思ったんだけど、音もしないので、風呂を覗いてもいない。当然トイレにもいないので、カミサンと勇気を起こして知らないか聞くと、わからないとの事。



合わせて、イデアの荷物がない事に気がついたので、もしかしたらショッピングモールに遊びに行ったのかも知れないと、自分たちに言い聞かせながら、ホテルをあとにしようとする。


慌てて出ようとすると、フロントさんが「預かりものがある」と言う事だったが、気が動転している俺らにそれを見れるはずもなく・・・


「申し訳ないが、家に着払いで送ってください!たぶん服だと思います」と言い、そのままチェックアウトする。


ホテルからショッピングモールまでは近いが、つくまでものすごく時間がかかった気がする。


ショッピングモールの職員口から、広報さんか、企画部さんに会いたいむね話をすると、企画部さんが来てくれたが、イデアは見ていないし、ショッピングモールにいたら誰が気がつくとの事。


納得しつつも、お礼を言い、もし、イデアが来たら待たせて、こちらに連絡が欲しいと頼み、ショッピングモールが空くのを待ち車を回収する。




正直、あとはあまり覚えていない。


ただ黙って家に帰り、荷物を降ろしたあと、三人で椅子に座って、何も話せないまま時間が経っていった。


・・・・


・・・


・・



ふと、スマートフォンの画面を見ると、イデアと勇気、そしてカミサンが写っている写真が沢山出てきた。


みんなでバタバタしてる移動時、撮影で沢山の洋服に囲まれあたふたしてるイデアや、撮影班のお手伝いをする勇気、へっぽこな演技をする俺や、そんな様子を見るカミサンまで。


いったい何処に行ってしまったのだろうか?


そう思っていると、見慣れない動画のデータが見えたので、何気なく見てみると、そこには、真剣な顔をしたイデアが写っていた。




「聞こえていますか?」


「見えていますか?」


そう言いながら、画面をコツコツ叩くイデアを前に一瞬ほっとしたが、それが録画されているものとわかったが、落ち込むのを抑えて画面を食い入るように見る。


いつの間にか、カミサンも勇気も画面を見ている。


「私、この二日間、とても幸せでした」


「慌ただしくて、いつも何かあったけど、そこには必ず温かい何かがありました」


「私の中身を見てくれて、私の言葉を真剣に聞いてくれる人がいて、私の事を大切にしてくれる、そんな人が沢山いました」


「私はとても幸せでした。」


「だけど、私だけ幸せになってはいけないんです」


「私と同じように育った子達が、私の周りには沢山います。私だけ助かり、その子達の事を忘れる事は、私には出来ません!」


「私には魔法が使える とユキさん、ううん、お母さんは教えてくれました。信じれば出来る事、沢山教えてくれました」


「思い立ったらなんとやらって、マサさん、ううん、お父さんは行動で示して教えてくれました。考えて止まるならやりながら考えろ!って、自分で自分に言ってたね」


「ゆうくんからは、笑顔を教わりました。楽しかったら笑えばいいんですよね。私には最初わかりませんでした」


・・・・


画面の中でイデアが泣いている。


抱きしめてあげたいけど、いないんだよな。


「私はこれから、元の世界に戻り、みんなの笑顔を取り戻します。何が出来るかわからないけど、やりながら考えます。お父さん」


「信じてやれば出来ますよね、お母さん」


「安心出来れば、また、一緒にみんなで笑えますよね、ゆうくん」


「お母さんから預かった品物は、入り口の人に預かって貰いました。」


「お洋服は、ください。辛いとき、負けないような大きな幸せを洋服と一緒に持っていきたいんです。ごめんなさい」


「そろそろ私は行きます。」


「ショッピングモールの皆さん、コンビニのお母さんにもありがとうと伝えて下さい。」


「沢山の幸せをありがとうございました」


・・・・・


その言葉を最後に、イデアの手が画面に迫り、映像は途切れた。


・・・・・


ばかやろう!!!!


ばかやろう!!・・・・・


ば・・・・っきゃろ・・・・・・

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