ねんねんころりよ
結局、イデアは勇気に泳ぎを教えてもらったらしく、しばらくしたら、つたないながらも、クロールで泳いでる。
息継ぎもやってる気がするよ!なんて天才!
なんかいろいろすっ飛ばしてる気がしないでもないけど、慣れてくれればいいか~と思いながら、泳いだりはしゃいだりしている二人を見ていたら、いつの間にかプール終了時間になりそうだったので、二人に声をかける。
まだまだ泳ぎ足りなそうな二人に謝り、イデアには「今度はもっと広くて楽しい場所に連れていくから、機嫌直してよ」と言うと、関係ない勇気と二人で
「「じゃっ、それで手を打ってあげます」」
と、笑顔で返され苦笑い。
かなりうちの家族に慣れてきたなぁ~と思いながら、着替えてホテルの一室へ
待っていたのは、腹へり状態のカミサンでね、「おなかすいた、おなかすいた」と連呼するんで、ご機嫌をとろうとして深夜営業のファミリーレストランに行きたいと思ったら、車はモールの駐車場だ。もう出せないよ。
仕方がなく、近くのコンビニに行く。
最近はちょっと歩けばどこかのコンビニがあり、なんだかんだ食べるものがあるので、本当にありがたいと思う反面、気が付けばそれが当たり前になっているのはどうかな?と思うことがある。
ちょっと調べてみたら、1975年あたりから一部コンビニで24時間営業が開始された、なんて記事を見かけたので、それからいろいろな方が試行錯誤して、今の形ができてきたのかな?と思うと、なんとなくだけど、今深夜で働いている人に対して「開けていてくれてありがとう」って言いたくなる。
それぞれのお会計を終え、レンジでご飯を温めてもらってから「ありがとう」と言いコンビニを立ち去ろうとすると、レジにいた男性店員さんの視線の先にイデアがあった。
ちょっと気になっていたが、イデアが「ありがとうございます」って言うと、慌てて「あ、ありがとうございました!」と元気に答えたので、もしかしたら、「今日は美人さんにありがとう!って言ってもらえた!何か良い事ありそう」なんて思ってくれたも知れない・・・
笑顔は人を元気にする気がするんだけど、笑顔を忘れてしまった人って最近多い気がするので、もっともっと自然に笑顔が出るような環境になるといいなぁ~と、ちょっと真面目に思いながらお店を後にしたんだ。
コンビニから帰って来たら、みんなで買ったものを広げる。
サラダ ポテト 焼きそば パスタ ハンバーグと言ったものから、
ケーキ どら焼き シュークリーム エクレアなどのデザートまで、ちょっとしたものを食べれる分だけ購入。
カミサンと勇気がイデアにいろいろ食べてみて欲しいという希望があって購入したのがわかったので、俺は頼まず残り物を食べるつもりだ。
撮影で食べたっていっても、人に見られて食べるのは落ち着かないし、ゆっくりも出来なかっただろうから、せめて、今出来る事をと、二人が出した答えだから、俺は尊重するよ。
そんな、統一感のない食事をテーブルに広げて、みんなで取り皿を手に食べはじめると、イデアがぽろぽろ過去の話をしだす。
ワンプレートという古びた木の皿に、固いパンのかけらに、ごみのような野草。それに生臭いミルクが定番で、スクランブルエッグが入っている日は、何かのお祝いがあった日とわかる程度の粗末で粗雑な食事。
それを一人で黙々と食べ、空腹を我慢しながら寝て、朝早く蹴り起される毎日を思い出し、未だに昨日今日の出来事が夢の様であり、朝が来たらまたあの暗い部屋にいるのではないか?と思って怖くなってしまうと、ぽろぽろ涙を流すイデアに、家族ももらい泣きしてしまい、すっかりしょっぱい食事になってしまった。
当たり前だと思っている食事は、誰でも食べれるものではない。
それも当たり前になってしまっていたのだなと、止まらない涙を流しながら目の前のものを食べる。
今日の「ごちそうさまでした」は、今までの中で一番考えながら感謝した「ごちそうさまでした」になった気がしたよ。
その後、ベットに入ったイデアの方を見ると、カミサンがイデアのベットの中に潜り込み、頭をなでているのを見た。
何か話している気もするし、子守歌も聞こえる気がする。俺が勇気に歌っても元気になって全く寝なかった子守歌。
カミサンが歌うとすぐに寝ちゃったのを思い出し、そんなカミサンの安心感がイデアにも伝わってくれるといいなぁ~と思いながら、子守歌に釣られて俺も夢の世界へ・・・
ねんねんころりよ おころりよ
かわいこさんはよいこだ ねんねしな
かわいこさんは よいこだから
わるいゆめは あちらへどうぞ
よいゆめみて えがおでねんね
・・・・
・・・
きっとずっと笑顔で見ててくれてるんだろうなぁ、カミサン。
そんな様子を見ていたら、すぅすぅ寝息が聞こえてきたので、安心して俺もねるよ。
良い夢見れるといいな・・・イデア。
・・・・・
・・・
・・