内緒話と契約と その1
あれから、緊張の糸が切れてしまったのか?イデアはそのまま寝てしまい、撮影は中断。
俺の身勝手な行動から撮影が中断されてしまい、スタッフの皆様には申し訳ないことをしてしまったと、その場で謝ったのは良いが、これからどうしようかと思っていたところ、「イデアさんが映らない撮影を終えてしまうので、大丈夫!ただ、明日は大変ですからよろしく頼みますよ!お父さん!」とスタッフさん。
女性スタッフさんとカミサンでイデアの衣装を脱がし、寝ているイデアを背負って家まで帰ろうとしたら、スタッフさんが「近くのホテルとってあるのでそちらまでどうぞ~」との事。
迷惑かけっぱなしなので、あとでまとめてお金を支払おうと思いながら、言葉に甘えてそのままチェックイン。
ベットにイデアを寝かせて、残り三人でダーッと床に寝そべり大の字になる。
「疲れた・・・けど、なんか嬉しい気がする・・・」
「疲れたけど・・・いっぱいいろんなことあって楽しい・・・」
「なんか大変なことになった気がするけど、なんとかするさー」
三者三様、ちょっとずつ言葉が違うけど、思いは同じようだ。
自分の子でない人間を迎え入れて、新しい生活を送る。
15才と言う難しい年の女の子を相手に、自分は何が出来るのだろう?
さすがに受け皿を用意して、はいさよならと言うわけには行かないし、そんなことはしないけどね。
そもそも、カミサンに何も相談しないで、どうしよう・・・なんて思っていると、カミサンがぼそっと、
「お店の人に囲まれた時、自然と「私の娘が怖がってるから辞めて!」なんて出ちゃってね。なに自分勝手な事言ってるんだろう?って思ったんだけど、まーくんも一緒の気持ちだったなんてね、嬉しいよ」との事。
そんなカミサンの言葉をもらって、ほっとしたのも束の間。
イデアが
・異次元から来た=身元不明者であること。
・身元不明者を保護し、養女として向かい入れる。
最初のハードルから高そうなのに、それプラス、彼女が社会に出るにあたってもいろいろなハードルがあるんだよな・・・ま、まぁ、何とかするけどさ。
何より、泣き疲れて寝てしまったイデアから何も答えを貰っていない。
さすがにあの様子から、断られる事は考えたくないけど、きちんと返事貰ってから先に進みたいからな・・・
あっ、そう言えば、広報さんと企画部さんに挨拶出来てない!
さすがにこれは失礼だ!
今の時間は20時。
ショッピングモールが閉まるのは、たしか21時だったはず!
今なら間に合うはず!行かねば!!!
そう思ったら、いても立ってもいられず、カミサンと息子に断りを入れて走り出す。
ホテルからショッピングモールまでは、目と鼻の先だったんだけど、広報さんと企画部さんに、スタッフの方は何処だ?!電話も忙しそうで出れないらしいから、あたりをつけて探すと、
あ、いたっ!
あ、俺、手ぶらだ!
あ、丁度よいところにドーナッツ屋さんが!
飲み物もあればいいかな?
こんなんでお詫びにもならないとは思うけど、あちらが一段落ついたら声をかけよう。
そう思って目立たない場所にいると、撮影スタッフさん達の声が聞こえてきた。
「それにしても、あの親子さん、良かったですね」
「流石に最初、いきなり何すんの?なんて驚いたけど、本当に感動しちゃったよ」
「あ、もしかしたら、最初っから旦那さん、ここで言おうとしてたのかもな?こちらの都合を考えて予定をずらしてくれたのかもな。後できちんと謝らないとな・・・」
・・・ホント、すごい良い人だ・・・
「そう言えば、お母さん、イデアちゃんの服買おうとしてモールに来たのに、バタバタして何も買えてない見たい・・・」
「Tシャツにステテコだからおかしいと思ったんだけど、あれ、旦那さんのモノなんだって!どうにかしてあげたいね・・・」
ホントこんな良い人達の仕事邪魔して、なんと言えばいいのか?と思いながらも、やっと話しかけられる雰囲気になったので「あの・・・皆さん、今日は大変申し訳ありませんでした。良かったらこれ、皆さんで食べてください」と、おずおず話す俺に、何故か慌てる皆さん。
突然あんな事になったので、予定を狂わせてしまったので、申し訳なく思ってると、「イデアちゃん大丈夫ですか?」と広報さん。
取り敢えず、今はぐっすり寝ているので、カミサンにお願いしているむね話をすると、もし良かったらイデアと自分たちの関係を教えてくれないか?と聞かれた。
企画部さん、広報さんはファンタジー好きっぽいので、後で話そうかと思ったんだけど、撮影スタッフさん達はどうかな?・・・うん、ここは人柄にかけてみるか。
「私もまだバタバタしていて、混乱しているところで、まだお話出来ないこともあります。あと、他言無用でお願いしたいのですが、良いでしょうか?」と話すと、回りを見た企画部さんが、「では、場所を移しますか」と提案してくれたのでお願いする。
丁度イデアたちが着替えていた、ちょっとしたスペースが空いていたようで、そこにあったテーブルと椅子を適当に並べて座り、各々がドーナッツ片手にこちらを見ているので、今までの事を話していく。
見知らぬコンビニで買った有料くじの景品から、彼女が出て来た事。
異世界で奴隷として生きてきたらしい彼女に、ここで楽しく暮らしてもらいたいと願っている事。
彼女が出てきてまだ2日しか経っていないため、いろいろ準備しようとしたら、今回の出来事があり、本当にバタバタしてしまっている事。
自分でも未だに信じられないけど、イデアのためには信じたいと思っているからね。
でも、他人に言ってもなかなか信じてもらえないもんだよな、普通。って思っていると、一同驚いてはいるものの、どこか納得しているような雰囲気もあり、さすが俺みたいな一般ピーポーと違うなぁ~と感心しちゃったんよ!
さて、この人達、何処まで信じてくれるんだろう?