ショッピングモールの妖精 その2
「「えっ?俺らも出るんですか?」」
イデアが撮影用の衣服などを準備している間、撮影について詳しい話をしたいと言う事だったので、カミサンと一緒に話を聞いて驚いた俺ら二人。
あ、息子はさすがに飽きたとふてくされてたので、どうしようか?と思っていたところ、スタッフの方が有料のアスレチック施設に連れ出してくれると言うことだったので、お願いしてしまいました。
すまん、息子や。
撮影するにも、俺 イコール おっさんと、言いたくないけどおばさんと言われてもおかしくない年齢のカミサン、そして息子。
容姿も自信があるわけではないので、見栄えが良いとは言えないなと思い、撮影には付き添ってるだけだと思ってたんだけど・・・
「イデアちゃんが安心して笑顔ではしゃげるは、あなた方と一緒にいる時だけだと思いますし、親子でも楽しめるって言うのがコンセプトですから丁度いいんですよ」と広報さん。
ま、まぁ、最悪イデアが映ってる部分だけ使って貰えればいいのかな?と思い、カミサンに同意を得ようとすると、カミサンは絶対に映りたくないとの事。
いろいろ話した結果、三人ともイデアと一緒に行動するが、カミサンは絶対に顔だしNG。息子も極力出ない方向で、俺はCMの邪魔にならなければ何でも良いと言う事になった。
なので、俺も簡単に衣裳合わせと、顔の細工をされちゃったりしたわけですよ。
イデアより先に準備が終わった俺を見て、カミサンは「惚れ直した!」とバシバシ体を叩き、アスレチックから戻った息子は大爆笑! なんでやねん!
そんな事をしてるうちに、準備が終わったらしいイデアがこちらに向かって歩いてきたんだけど・・・こりゃ・・・びっくりだね!
そこには本物の妖精がいたのよ!
白と薄いピンクを基調としたふわふわしたワンピースと、白いローヒールだけなんだけど、元から持ってるふわっと広がる白いしっぽと、頭にある耳が強く印象に残るような感じ。
本人がすり傷を多く持っているのと、冷え対策から長めのストールをまとうような感じで身に着けていたのも、また神秘的な雰囲気を出しているように見えたんだ。
身長は170cmくらいあるはずなんだけど、イデアの内面を見ているからかもしれないけど、無茶苦茶可愛い!って思っちゃったんだよね。カミサンごめんよ。
あ、軽くお化粧もしてもらってるんだね。
ナチュラルメイクってやつか~印象が柔らかくなったのは、そのせいなんだね。良かったね!良い経験が出来て~なんてイデアに言うと、
「わたしなんかが、こんなにいろいろして貰ってもいいんでしょうか?」と何故かしょげてる。
わたし"なんか"じゃないの!
イデアにしか出来ないことだから、あれだけ必死にお願いされたんでしょ?あの人達の必死な想いに答えたいと思ったのなら、自分が出来ることを一生懸命すればいいの!
ま、まぁ、今回は「楽しんで!」って言ってくれてるんだから、思いっきり楽しんじゃえば良いじゃん!何も難しい事考えることないよ!俺らもついてるからね。
そう言うと、吹っ切れたようで笑顔を取り戻したイデア。
考えて見たら、奴隷として長い事こきつかわれてたから、自分に対する評価って低いのかもしれないな?
素直でよい子だから、これで自分に自信がついたらもっと人に愛される人物になれるかも知れない。
偶然とは言え、良い経験をさせることが出来て良かったなぁ~なんて思ってると、カミサンがうんうん頷いてる。あれっ?また声に出てた?キャー恥ずかしい☆
で、そんな我が家族・・・もうイデアも家族って事でいいや~・・・が一通りの準備を終え、撮影班と一緒に歩くと、ちょっと有名人になってしまったかのような錯覚をしてしまって、思わず笑ってしまう。
今回、主役はイデアとショッピングモールなんだからこっちがしっかりしないといけないな。
今回の撮影は、ショッピングモールに設置されている全てのモニターと、ショッピングモールの公式サイトで見れる、ショッピングモールの紹介を主としたものらしいが、場合によっては没になる可能性もあるから、いろいろな可能性を試したいという広報さん。
気楽にやってくださいよーなんて言ってくれるんだけど、移動するのに、広報さん企画部さんコンビ、カメラさん照明さん、そのアシストにお二人ついて総勢10名で移動するのはやっぱり緊張するし、気をつかっちゃうね。
一応スタッフの皆さんには家族で「今日はよろしくお願いします。ご迷惑おかけしないように頑張ります」って言ったら、笑顔で「いっぱい楽しんで良い笑顔見せてくださいね。それを撮る環境を作るのは私たちの仕事ですから、あんまり周りを気にしないで、いつも通りショッピングモールを楽しんじゃいましょう!」なんて言ってくれる。なんていい人達だろう!ホント頑張らないとなぁ。
まぁ、ここでの俺の役割は「妖精にせがまれて、ショッピングモールを案内する近所のおじさん」らしく、ショッピングモールどころか、この世界の事をよく知らないイデアに、いろいろ見てもらいたいなぁ~と思っていた思惑と一致していたので、丁度いいや~なんて思っていたんだ。
この際あまりカメラを気にしないで、本当にイデアにいろいろ見てもらうような感じで接するか~なんて思い、イデアを見ていると、ぼーぜんとしてるのよ。
カミサンと撮影前に話したんだけど、ショッピングモールに入った時から、あまりの広さと、異世界生活とのギャップに呆然としてしまっていたから、言葉通り「ひっぱりまわした」らしいので、この反応は当然だなぁ~と思い、俺も言葉通り「ひっぱりまわそう」と思ったんだ。
「立っててもしょうがないし、おなかも空いてるでしょ? いろいろあるから見てみようよ」
そう言って、イデアの手を引っ張って行き、フードコートから案内する。
「お腹がすいたら笑顔出ないっしょ? 美味しいもの食べよっか?」
「はい!いっぱい食べたいです!いっぱい案内してください!」
うん、良い笑顔!
さて、気楽に楽しく行きますか~