序章Ⅱ
全世界で勃発し、過去最大規模の被害を生んだ第三次世界大戦の引き金となったのは、資源の枯渇と食糧難によるものであった。全世界の科学技術が進歩し、人間の生活が近代化を進めるに従って、資源の枯渇による問題はより可及的に進み、もはや対処のしようがないほどに深刻なものとなっていた。並びに食糧難も全世界に広まり、見過ごせない社会問題となっていた。
各国の、民衆の限界に達した不安や怒りは、やがて暴動という反政府活動として政府に対して圧迫を始め、ついに国は生き延びるために戦争を起こさざる終えなかった。
初めは一発展途上国で始まったこれらも、火種が移るように次々と全世界へと広がりを見せ、過去最大規模の一般民を巻き込む大戦にまで至った。
これにより、全世界の人口約70億人のうちの約7割、49億人を超える人々が命を落とした。
日本もそれは例外でなく、全人口約1億人のうちの八千万人が命を落とした。
人間はまたしても、過去と同じ過ち、惨劇を繰り返してしまったのだ。
しかし、人口の大きな減少に伴い、資源の枯渇や食糧難などの社会問題は大きく緩和された。
それでも、再び同じ過ちを繰り返さないためにも、全世界各国の間で平和条約が結ばれた。
また、世界各国の首脳会談が開かれ、その結果、ある結論が打たれ、それを今後の世界の情勢を調節するための解決策とし、全世界を対象としたあるプロジェクトが開始された。
それが個人ナンバー制度―――
これは、各国を対象に”国民に順位をつける”というものだった。
この政策に対して世の中では賛否両論であったが、最終的には持続可能な社会を築くためには必要な政策とされ全世界で可決された。
やがて現実に実施された個人ナンバー制度は、政府の発表通り国民に順位をつけた。
国民の脳内に、あるチップが埋め込まれ、それを宇宙衛星がデータとして読み取ることで、国民に順位をつけた。
国のあらゆる場所に設置された監視カメラが脳内のチップを読み取り、その映像と個人データを元に衛星へと送られた情報が”いかなる善行、いかなる悪行を行ったのか、今後の社会に対して果たしてどんな影響を及ぼすのか”を計算して国民に数字がつけられていくのである。
よって国民の数字は次々と移り変わるのである。
また、この個人ナンバー制度に伴い新しく設置された監視カメラにおいては、プライベートの侵害を防ぐために、衛生にのみ情報が開示される秘匿情報とされ、政府でさえも、何人も情報を開示することは不可能とされた。
そして、これらの制度の取り決めの目的は、よりよい未来を築いていくためとされた。人間同士が互いの差を知った上で、闘争本能を燃やさせ、また切磋琢磨させることで、社会の貢献度という非常に実質的な題材を元に競わせ、社会の進歩を目指すのである。
また、この制度の効果を最大限に発揮させるために政府は個人ナンバーの可視化を制定した。
これにおいては国民のうちで反対的な意見が多かったが、政府が半ば強引に可決とした。
そして最後に、政府は、国を大きく三つの区画に分けた。
首都を中心に第Ⅰ区画、第Ⅱ区画、第Ⅲ区画とされ、第Ⅰ区画に立ち入れるのが個人ナンバー1~100,000、第Ⅱ区画が100001~10000000、第Ⅲ区画が10000001~、とされた。
そしてこれら区画の何が違うかというと、それは”優先度”の違いであった。