いしころ
老人は縁側に座っていた。
天気の良い日は、いつも縁側で日の光に当たるようにしていた。
ふと、家の前の通りを歩く子供の姿が目に入った。
「あれくらいの頃もあったな。」
老人は自分のしわくちゃな手をみて少し笑って言った。
そのまま、手を胸のあたりまで持ってきてこぶしを作った。
グッと少し強めに握り、幾分でも昔の自分の手に近づけようと試みるがやはり昔の様には握れない。
そういえば、昔は若い才能を例えて、ダイヤの原石なんて言ってた事があったな。
老人はそっと目を閉じ、陽だまりの中で少し昔を思い出してみた。
あの頃はみんな自分の才能をダイヤの原石を探していた。
その当時に私が見つけたものは、少しばかり絵が描けるという原石だった。
それを友人達と原石だの夢だの、あれやこれやと語りあった。
私の勝手なイメージだが、あれはちょうど心臓の上くらいにあると思っていた。
原石を探し見つけた人達は、磨いて光らせた。
最初は磨けば磨くだけ光り輝いた。
人は単純だからそれに喜び、必死に何度も磨いた。
すると突然、いくら磨いても変わらなくなってしまう。
皆、飽きてしまう。
諦めの悪い私は、もう少し…もうちょっと…と磨き続けてしまった。
あまり様子は変わらないが、少しも気にならなかった。
いつしか輝く事よりも磨く事が目的になっており、さらに止められずに続けた。
磨き過ぎてしまったのだろうか、原石は小さく鋭く尖りはじめた。
それでも磨くことを続けていると、遂にそれは下に伸びて心臓に突き刺さった。
これはとても痛かった。
血は流れ落ち、胸は痛くて苦しい。
ここまで磨き続けていた人達も、この痛みと苦しさには手を止めた。
私はそれでも痛み苦しみ血を流しながら磨き続けてしまった。
いつしか原石は、真っ赤に染まったダイヤになった。
今になって疑問に思う、これには価値があったんだろうか。
老人の手から力抜けて、だらんと下がった。
縁側に真っ赤な石が落ちた。
才能って・・・原石ってなんだろうと思って書いてみました。
結果、よくわからなくなりました。