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また泉に戻された。

隣に青が控えるように立っていたので、これからのことを聞くと、『とりあえず風御子様の準備が整い次第待機』とのこと。


それならまず服を着たい、というあたしの要求に、青は頷いた。

あまり話を聞いてくれないかも、という怖そうな印象だったけれど、意外と優しい…のかな。


「雲使いは伝統的に、古き守竜の髪で作られた服を着ることになっている。

だが風音は女子。

用意がないので、今回は特別に守竜様直々にご準備いただいた。

……大切にしろ」


ぶっきらぼうな言い方だなぁ。

青はあたしをそのまま泉に置いていき、しばらくして籠を持ってきた。


「きらきらしてる…草原色だわ」


籠から見える布を広げると、綺麗な色をしたワンピースだった。

すぐさま袖を通す。


「不思議。

…軽くって風みたい」


「雲使いの服はそんなものじゃよ」


青の後ろに老人が立っていた。

うちのじいちゃんより、年をとっているみたい。

元気そうに歩いているけど。


「ではウォゼフ、後を頼む」


青はまた泉に入り、風に消えた。

さっきの光の王宮に行ったのかもしれない。


さて、と声を上げてウォゼフは手を叩く。

急に風がそよそよと足元を舞いはじめる。


「次は風の基本的な使い方と雲読みの勉強じゃな。

シェルシェとわしで、まずは基礎を身につけてもらおうかの。


……できるまでご飯抜きじゃ」


ぱん、ともう一度手を叩くと、体が浮き、風に捕われた。


すごい、これが風を操る雲使いなんだろうか。

風に流されるままに、上空へとあがっていく。

今までいた地上よりも、はるかに標高の高い山の頂上に下ろされる。空気が薄い気がする。

頂上には小さな小屋があり、一面は緑の静寂だった。


「さて着いたからには練習してみようかの。

まず雲使い、その一歩は風を操ることじゃ」


ぱん、とまた手を叩くと、ウォゼフに呼応するように風が頬をかすめる。


「雲より先に、まず風を操ってもらわぬとの。

これができなくば、御子と力を合わせても、雲を操れぬのじゃ。谷の子らはたいていできる。

……さ、やってみよ」


ウォゼフはスパルタだった。

やれるわけないというあたしの言葉を、子供の駄々のようににこやかにいなし、強制練習。

一番怖い。

にこやかで柔らかな物腰だけに、心が読みづらい。


「わぁあ、すごいねー風音!

もう風を使うことができるんだぁ」


シェルシェがいつの間にか風に乗って、頂上にやって来ていた。

ここは太陽がずっと沈まないため、時間の経過が分からないが、きっと長い間手を叩いてきたんだろう、赤く晴れていた。

そのおかげで風が少し思った通りに吹くようになったけど。


「やっぱりウォゼフは厳しいよなぁー!

こんなん青が見たら怒られちゃうよぉ」


「そうかの。

どうせ出来る事なら、早いに越したことはなかろ」


にこり。

こ、この老人の笑顔には騙されないぞ…。

あたしはひそりと胸の内で誓った。


「風が使えるなら、雲を使うのも早そうだね!

正直これまでの雲使いより、勘もいいみたいだしねぇー」


ウォゼフの特訓のおかげかもだけどねぇ、とシェルシェはこそりと呟く。

老人は聞こえなかったのか、とぼけた顔で、そういえばと続ける。


「シェルシェ、おぬしは何しにここへ?

青殿にでも呼ばれたのかの?」


「ううん、青はまだ守竜様のとこだと思うけど」


シェルシェはあたしの顔を見て、可愛らしくウインクをする。


「風御子様が準備を終えられたから、こちらにお招きしたのぉ」


シェルシェの後ろに遅れて着地する、ガルダ。

無遠慮にあたしを覗く金の瞳。


「雲使い、遅いから我がわざわざ出向いてやったぞ」


偉そうに一言。


………殴りたい。



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