二
先生に見つからないように列から離れるのは割と簡単だった。
事前に調べていたらしい男子の後に付いていき、大人コースに足を踏み入れる。
他のみんなの声が遠くに響いている。
えっちゃんとあたしは手をつないで、周りをきょろきょろ見回していた。
コースは割と緩やかで、たまに急な坂があるくらい。
「あのでっかい木の付け根に洞窟があってな。
そこが秘密の場所なんだ」
地図を持って歩く一人が自慢げに指を差す。
その方向には、確かに大きな太い木が生えていた。
けれどそこはかなりの急斜面で、地面に這ってあるねっこや木の枝を掴んで、ようやくたどり着けた。
「暗いねぇ…」
「わくわくすんじゃん!行こうぜ!」
暗くて、じいちゃんが背を少し曲げて入るくらいの天井。
ずんずんと進んでいくに連れて、いよいよえっちゃんと手をつないで、二人並べなくなるくらい横幅が狭くなった。
私が自然と最後尾になり、暗がりの中、進む。
「あ、光だ!」
前方に洞窟の出口が見える。
向こうはどんなだか逆光で見えない。
ふと―――
『女の子じゃねーか』
声がして、振り返った。
「ほんとだぁ」
「…信じがたいのぅ」
言葉を失う。
あたしは今まで暗い洞窟を歩いていた。
それなのに今は、
草の上に立っていたのだ。
「…………、え」
混乱する。
まるで白昼夢みたい。でもどっちが、夢?
洞窟?それとも今が?
「マジかよ」
「だが、反応は続いている。
この子が……そうだ」
それぞれ口にする男の人達。
彼らは四人だった。
一人は、あたしより少し上の男の子。
一人は、じいちゃんよりもっと年をとっている白髪の老人。
一人は、髪を一つに結んだ、赤髪の男の人。
最後の一人は、怖い目をした男の人。赤髪の人とさほど変わらない年みたいに見える。
その四人が、一斉にあたしへ視線を向けている。
値踏みするような目。
「…あの」
「皆それぞれ一言あるかとは思うが、彼女が女神のご意志だ」
いたたまれなくなって、声を出したのに。
強い目をした男の人が周りをなだめるように言う。
でも…何を言っているのか、理解ができない。
女神って……
「彼女こそ、女神と心通わせし
《偉大なる雲使い》だ」
そして彼ら四人は、あたしに向かって頭を下げた。




