十三
雲使いになって、村を助けたかった。
じいちゃんの約束だから。
でも自信なんかなかった。今も無いけど。
本当に雲を使えるのかわからない。
さっき雲を使ったのは、笛を吹いたから。
じいちゃんからもらった笛。
この笛をガルダも皆知っていた。
シェルシェはとぼけてたけど、エンの口振りからして多分知ってることなんだと思う。
笛の前の持ち主は、いなくなった。
どうしてなんだろう。
何があったんだろう。
だから、
「ガルダ、の親友?」
ガルダは夜空を見上げながら、黙る。
目を閉じると、また風が吹き荒れた。
近くの崖に降り立つと、あたしの手を離す。
「…あいつはもともと、姉上と契約を結んでいた。
姉上はちょうど風巫女になるに、ふさわしいご年齢だったから。
我はまだ産まれたばかりで人の形を留めることも出来なかった」
ガルダは話す。金の瞳を伏せたまま。
まるで月の光が反射してるみたいに、綺麗。
「あいつは王宮に入る前から、姉上と信頼しあっていた。
姉上は少し戯れが過ぎるが、あいつは真面目で姉上をいつも諭していた。
姉上はあいつの言うことしか聞かなかったよ。
……渋々という態度だったがな」
信頼し絆で結ばれた二人。雲使いは二人で一つ。
それは悪いことなの?
「お母上は何度かご忠告されていたようだが、既に遅かった。
……姉上は、あいつのことが好きになってた」
「それが、なんで…」
伏せられた金の瞳が、濁ったように見えた。
「あいつには、下界で心を残してきた者がいたからだ」
「…………」
「それに恋心など抱いてしまえば、純粋な信頼関係は壊れてしまう。
姉上も解っていた。だから苦しまれた…もちろんあいつに否があるわけじゃない。
誰が悪いわけじゃない…」
恋が叶わないことが分かっていて、好きになってしまうのはどんなに辛いだろう。
あたしはまだ辛くて悲しい程、誰かを好きになったことはない。
「でも話は、雲使いとの絆の崩落だけじゃない」
ガルダはさらに悲しい目をして語る。
「姉上は想いを抑えることがどうしてもできず…
…自ら御命を絶たれてしまわれたのだ」
「えっ……!」




