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「起きよ、雲使い」


目を開ける。青く晴れた空が見えた。

ガルダの声がしなければ、きっと天国だと思っただろう。

体を起こすと、崖が見えた。

一面の緑が、一面の土と岩山になっている。

赤茶色の土の山が隆々とそびえていた。


「ここは…なに、山のてっぺん?」


「お主の寝ている間に、我はそこらを飛び回ったが、ここは特殊な地形だ。

まるで皿の上のようだな」


皿?

どんな地形なんだかよく分からないけれど、ウォゼフがここに下ろしたことに間違いはないんだろう。

じゃなければ、こんな土くれしかないとこに飛ばすワケがない。

できなければ帰さない、という明らかな脅迫。

…やるしかない、か。


「風御子のガルダは雲を操る方法、守竜様から心得ているよね?」


ダメ元で聞いてみる。

予想通り、ガルダは首を横に振る。


「いや。…何も知らぬ」


「そうだと思った…。

ちなみにさ、あたしじゃだめでしたーって、なったら今度は誰かがまた選ばれたりするの?」


いや、と小さく呟くガルダ。


「雲使いと風御子の契約は一度きりだ。

だめだから穴埋めする、なんて簡単なシステムではない。

だからもし…お主がいなくなったら……我はずっと雲使いを持てない」


「責任重大なのね。

雲が操れなかったらあたしたち、用ナシなワケだ」


そうだ、とガルダは頷く。

土の上にまた横になる。

空に漂う雲の群れを見て、ため息。


あのどれかを使って、谷に雨を降らせる…か。

雲を動かすだけでなく、雨も呼ばなきゃなんて無茶だ。

…ここに来てから無茶ばかりだ。


「あたしはまだ中学生なんだけどね…」


「前から気になっていたのだが、ガクセイとはなんだ?」

「人間は大人から勉強しなさいって言われてるの。

中学生ってのは、なんつーか……階級みたいなものかな」


ほう、と頷くガルダ。

どうせ分からないだろう。

竜と人間の世界のシステムは違う。


……ああ。

青の言っていたことが少し分かった気がする。


「オトナになるために、人間は勉強するのか?」


「んー…心や頭の大人なら、そうとも言えるわね。

あたしは早く大人になりたいわ」


大人になって、村の皆に恩返しがしたい。

あたしを育ててくれたのは、この村だから。

ガルダは遠くを見るような目で相づちを打つ。


「…『オトナになりたい』か…」


誰に呟いてるのだろう。

ガルダも偉そうにしてる奴だけど、悩む事とかあるのかな。


ま、とりあえず雲を動かす練習をしなきゃ。


「ウォゼフが言うには、

『雲の群れから動いてくれる雲を探す』、だったっけ……」


全部に同調することは、なかなか至難の業なんだろう。

なんせ…意志持つ雲を意志により動かす、のだから。


横になったまま、雲の群れをじっと眺める。


「どれを動かせば良いのかなぁ」

ため息。

長い練習になりそうだった。


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