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いつの日だったか、父に「お前は駄目な子だ」と怒られた。
僕は素直にそれを受け止めた。僕は、駄目な子なんだと。
父は教師だった。しかも、有名な教師だった。
当然偉い。
偉くて有名な父が言うことは絶対で、僕はいつも黙って従った。
でも成長するにつれ、自分の心を持った。
全部父の言うままなのはおかしいと思った。
嫌だった。
上から目線で物事を話す父は嫌いだった。
だから切った。
先生や他の親たちのおかげで、父は一命を取り留めた。父が助かるか助からないかは、別にどっちでもよかった。大事なのは、このハサミは人体も切断できるということが分かったことだ。
切れるんだ。人も。
僕は少しぞくっとした。
父は片腕が無いまま教師を続けていた。
人体も切れるということが分かったので僕の心は満たされた。
*
僕の夢は、宇宙飛行士になることです。
宇宙飛行士になって地球を一度にみたいのです。
遠近法の法則です。
*
僕はそんな作文を担任に提出しに行った。
遠近法なら、何でも切れるはずだった。
地球を真っ二つにしたらどうなるんだろう。
切れるかな。切れればいいな。どうなるのかな。楽しみだな。ちょっと怖いな。マグマとか、ぶわーってなるのかな。
あぁ、楽しみだ。
その日まで、夢が叶うときまで、このハサミは仕舞っておこう。
僕は机の引き出しにハサミを入れ、そっと閉めた。
期待と興奮の混じった感情が押し寄せてきた。
僕はベットに仰向けになり、静かに目を閉じた。