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清き風の物語~見守っているからね~  作者:
第四章:帰還 そして、平行線
24/50

4-1


 フォルッテシモ神国の王都に入るには当然ながら検問所を通らなくては駄目だよ。

 今も検問所の前に旅行者や行商人の人たちが列を連ねている。

 羽津香の力なら検問所にいる騎士団と対等以上に渡り合えるから、検問を力業で突破することも可能だ。

 でも、騒ぎが大きくなって七美とか出てきたら事態の収集が付かなってしまう。


「それで、言われたとおり、馬車を持ってきたけど、どうするつもりなの? そのサルティナを隠して、密入国させるつもりなの?」

「はい、その通りです」


 そう言った羽津香は、ルティルダに秘密の木の実を見せつけた。

 その木の実は、清風が数多の失敗を乗り越えた先に見つけ出した、まだ王都の誰も知らない秘密の木の実だったよ。




 ガッタンゴットンと響いていた振動が止まったかと思うと、如何にも重装備な騎士団の人たちが馬車を取り囲んできた。


「この馬車の積み荷は何だ。フォルッテシモ神国に入るための目的は?」


 予想通り、不審の瞳をぎらぎらさせて騎士団の人達が羽津香の事を見ている。

 ここしばらくは描写していなかったから、もしかしたら忘れている人もいるかもしれないけど、羽津香の体には三つの宝石が埋め込まれている。

 みんな、ちゃんと覚えていてくれたかな?

 おへそに付いている蒼天石に、胸の谷間についている黄金石に、額の真ん中にある真紅石の三つ。

 その効力は、マスターにそれぞれの部位の羽津香の感覚を共通させることが出来ることなんだけど、今、ここで大事なのは、その能力じゃない。

 宝石そのものだ。

 この前は隠すことなく堂々と学園に潜入したけど、流石に額に埋め込まれた真紅石って、かなり目立つ。

 しかも、今回の相手は騎士団。

 額を見られた日には、一発で羽津香の正体なんてばれてします。

 そのため、目立ちすぎる額を隠すために、今の羽津香はローブを目深に被って、口元だけ出してる状態だ。

 あからさまに、私は怪しいモノですって行っているような格好だけど、仕方ない。


「積み荷はこの木の実です。正式には発見されていない種類ですので、名前はまだないはずです。目的はもちろん、この木の実を使って、このフォルッテシモ神国で一発千金ですよ」


 積み荷いっぱいに詰め込んだ木の実を適当に掴み取ると、騎士団の人たちと、隣に座っているルティルダに配っていく。

 みんな初めてみる木の実なので、だれも食べようとはしない。

 毒味はサルティナであった清風がその体で実戦して確認済みだから、大丈夫だっていうのに、みんな心配性だ。


「それでは、いただきま~~~す」


 バクリと羽津香は木の実を食べた。

 うん、スープにいれても美味しいけど、そのまま食べても、ぴりっとした辛さが効いていて美味しいよね。


「あ、結構いける………」


 隣にいるルティルダも予想外とばかりに目を見開いている。

 騎士団の人たちも初めて食べる食感にご満悦みたいであれやこれやと騎士団同士で感想を言い合っている。


「これって、お酒と飲むと相性抜群なんですよね。だから、居酒屋を主にして売り込んでいこうかと思ってます」


 お酒に合う。

 羽津香の誘導に見事騎士団の人たちは釣られ、生唾を飲み込んだ。


「どうです。この木の実、そこの森で拾ってきたから、元手はただみたいなモノですから、少しばかり如何ですか?」


 差し出した袋を拒める訳なんてない。

 騎士団は嬉しそうに袋を受け取ると、夜の宴会に想いをはせたかのように瞳を輝かせていた。

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