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清き風の物語~見守っているからね~  作者:
第三章:プリセマリー救出作戦
18/50

3-4


 目の前で時計の針が無慈悲にチクタクと進んでいく。

 羽津香に与えられた時間は十五分。

 それ以上を過ぎると問答無用でルティルダを殺すと宣言されてしまった。

 ルティルダの首元にナイフを突きつけて彼は羽津香から視線を外さない。


「ねえ、清風。羽津香は一体どうすればよいのでしょうか?」


 手錠で繋がれた手で頭に埋め込まれて真紅石を何度も叩いている。

 コツンコツンとした感触が頭を刺激してきて、迷宮に陥りそうになっている思考に差し伸べられれる手を待っている。

 でも、残念なことに、清風は七美によって封印されている。

 清風の想いが羽津香に伝わす術は何一つない。

 真紅石から何度も、迷いに揺れている手の感触が伝わってくる。


「お願いしますよ、教えて下さいよ」


 時は過ぎていく。

 清風が封印されていようと、羽津香が悩み苦しんでいようと、七美が己の信念のために立ち向かっていても、時は同じように過ぎていく。

 だから、きっと今の羽津香に出来ることは、ただ待つことだけ。

 ちょっと悔しいけど、大嫌いだけど、清風と同じぐらいの繋がりを持っている彼女がやって来てくれるのを…………。


「さあ、時間だぜ。答えは出せたか?」


 きっかりと十五分後に、アクトリスは再び答えを尋ねてきた。

 でも、どちらかを選ぶかなんて、そんなの羽津香が選べるわけなんか無い。

 ゆっくりと首を横に振った。


「それはどういう意味だ?」

「見たままです。羽津香は清風の事が大好きですの………いえ、むしろ愛しているのです。そんな清風をみすみすあなたに差し出すなんて、絶対に出来ませんよ!」

「じゃあ、この女を見捨てるんだな?」

「いいえ。何かを犠牲にして誰かを守るなんて、そんなのは羽津香の大嫌いな七美の考え方です。羽津香は、清風もルティルダも両方、守り抜いて見せますよ」


 そう言って、手錠で繋がれた手で真上を指さした。


「でも、七美は、サルティナを全て抹殺しようとする、羽津香的には極悪非道な国王様なんですけど、その代わり、傷付いた国民は誰であろうと絶対に見捨てたりしない素晴らしい国王陛下でもあったりするんですよね」


 一蹴の枷が吹き荒れて、頬を強く撫でていく。

 それは意志の宿った風。

 守るべきモノをしかと選んでいる信念を抱いた風だった。

 鎌鼬が羽津香の手錠を断ち切ってくれて、アクトリスが手にしていたナイフをも両断した。

 そして、確かな足音が羽津香達の耳に届いてくる。


「その通りだよ。状況はよく分からないが、とりあえず、そこのキミ、彼女は怪我をしているのだろう。なら、早く手当をするべきだね。それに、彼は今すぐにでも病院へ連れて行かねば、不味い状況なのではないかい?」


 光の差し込んでいない暗闇から姿を現したのは、七美だ。


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