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清き風の物語~見守っているからね~  作者:
第二章:学園潜入調査
13/50

2-6


 太陽は落ちて、空は夜天に変わっていた。

 まるで清風が閉じこめられている世界のように暗くて、寂しくて、誰に声も何処無いかのように、全ての希望を飲み込んでしまうかのような夜空が視界一面に拡がっていた。


「………やっぱり、いたのね」

「それは、もちろんです。あなたにはお聞きしなければならないことが、沢山ありますからね」


 病院の入り口を見るとそこにはリティルダが立っていた。

 もしかして、最初に出会った時のようにいきなり戦闘になるかもと思っていたけど、意外なことにリティルダは羽津香の顔をみるなり、いきなり頭を下げてきたんだよ。


「え? ええええええ、いきなりどうされてのですか?」

「ありがとう。アクトリス先生に聞いたわ。あなたが……真瀬を……救ってくれたんだよね。本当にありがとう」

「え~~と、羽津香は別に何もしていませんよ。ただ、倒れたイフエティーさんを見てどうしたら良いか分からず、アクトリスさんを呼んだ。ただ、それだけで、そんな頭を下げられることなんて、何一つしてないのですよ」

「それでも、もしその場にあなたがいなかったら、真瀬は道ばたで死んでいたかもしれない。本当に、ありがとう」


 暗い夜空の下でも、リティルダから零れて落ちている涙が見て取れる。

 みんなは、前に話したことちゃんと覚えているかな。

 この世界の住民にはそれぞれ漢名と呼ばれる名前を持っている。

 そして、漢名で呼び合うのはその人達が親しくて、心を許しあっている証なの。

 だから、男女で漢名を呼び合っているのは、兄妹かもしくは夫婦。あるいは未来を誓い合った恋人達ぐらいなんだよ。

 そして、イフエティーは男の子で、リティルダは女の子だけど、二人ともお互いを漢名で呼び合っている。

 つまりは、そう言うことなんだよね。


「ですから、お礼を言われる程のことではないです………でも、出来ればあなた達の全てをお話しして頂けないでしょうか?」


 頭を下げていたリティルダの肩がピクンと跳ね上がった。

 そのままの状態で固まっていたリティルダだけど、ゆっくりと顔を上げて意を決した表情で羽津香のことを真っ正面から睨み付けてきた。


「あなたはもう……真瀬の友達なのよ?」

「はい。出会ったばかりですけど、親友ですよ」

「そうっか………なら、お願い。ここは真瀬を救うためと思って、私を見逃して。どうせ、生贄はサルティナなのよ。サルティナが死んだ所で誰も哀しまないわ!」


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