◇ ◇ つづき ◇ ◇
◇ ◇ つづき ◇ ◇
ところ変わって王城です。
卒業記念式典はあのあとつつがなく終了いたしました。
ちょっと無理やりでしたけど。
そして今回の一件の関係者は全員王城に呼ばれたわけです。
私と、私の家族。つまり公爵家の当主と公爵夫人も呼ばれました。
普通に面会できましたよ、とても怒ってらっしゃいました。
他にも殿下の側近とその家族。あと、殿下が言った『証人』とその家族もいつの間にやら王城に集められていたようです。
軽い聞き取り調査があって、その日は王城の客間でお泊りをして、翌日、私たちは王陛下、王妃陛下の前で控えております。
他にも呼ばれた者は全員居並んで控えておりますね。
もちろん殿下も同じ位置に。
両陛下は変わらず凛々しいお顔で玉座に並んでいらっしゃる。
名君として結構名高いご夫婦なんです。なんでご子息がこんなにバカなんでしょう?
その陛下が声を上げました。
「昨日の王立アカデミーの騒動に関しては、まず、王族の長として遺憾の意を表明する。
この後、順次、諸々処理していかねばならぬので、しばし付き合われたい」
陛下が一同を見回します。緊張感がすごいですね。
「まず証人などの喚問は後にして揺るがない決定事項のみを先に発表しよう。
まず、我が王子、アングとクラウディア公爵令嬢との婚約は取り消しとなる。
そしてアングとアイリス男爵令嬢との婚約を認めることとする」
これには会場がざわめきました。
皆さんそういうことになるとは思わなかったようです。一部を除いて。
「あっ、ありがとうございます。父上!」
「私たち幸せです」
中でも大喜びしている二人。そして
王子の側近たちも顔を見合わせてよしよしとうなずきあっています。
私も衝撃を受けましたけど、王妃様の顔を見て考えを変えました。彼女の顔はとても冷徹だったのです。
その王妃陛下が続けます。
「綸言汗のごとしという言葉があります。
王族たるものが、公衆の面前で宣言した言葉を取り消すことは許されぬことです。
よって、アングが宣言した婚約破棄も婚約の宣言も取り消すことはできません」
その声は、私にはとても怖いものに聞こえました。
「ですので、他の部分を整えることとします」
「うむ、この決定に伴い、アングの王太子の身分をいったん剥奪する」
「は?
父上何を言って…」
「当然だ。我が国は王と王妃が等しく統治者として権限を持っている」
そうです。だから王妃《《殿下》》ではなく王妃《《陛下》》なのです。
「お前は第一王子であり、暫定王太子として認められていたのは妻となるクラウディアが王妃として十分な才覚を持っていると認められていたからだ。
彼女は王妃教育においても十分すぎる成績を残している。
対してお前が妻にと望んだアイリスは何の教育も受けていない。
王妃として認められるはずがなかろう」
「そそそそそっ、そんな…私が、私が王太子でなくなるなんて…
いけません、父上、そんなことはあってはならないことです」
国王様、面白そうににやりと笑いました。
「何を慌てているか、この国の法によってそう決まっておるのだ、例外は認められない。
それにお前は昔から人の話を聞かぬ。
余は一旦と言ったぞ、逆に言えばその娘が王妃として十分な資質を認められればお前が王太子でも問題はないということだ」
「あっ、なるほど、そういうことですね」
殿下はあっけらかんと言いました。あからさまに安心しています。
こんなにおつむが軽い人だったのですねぇ。そちらの方がショックです。
アイリス嬢は少しは分かっているみたいですね。不安そうな顔をしています。
「ゆえに、お前に成人のお披露目、つまり来年の新年を迎える日までに、そなたが責任をもってその娘に王妃教育を施さねばならない」
あと九か月ぐらいです。
「これはそなたの責任においてそなたがなすこと、またそれによって発生する費用もそなたが出すのだ」
「え? なぜです? 普通王妃の教育は国の役目のはずでは?」
「うむ、その通りだ。
議会が選任し、王家が認めたクラウディアであれば国が負担するのは当然であろう。だがアイリスを選んだのはそなただ。そなただけがアイリスを選んだ。
そなたが出すのは当然というもの。
残り九か月だ、全力で当たらねば到底間に合わんぞ」
王太子には王族の義務が発生する分、歳費が認められています。
でも、王太子を退くのなら王子用の歳費ですから、あまり余裕はないですよね。きっと。
「わかりました父上、私が彼女を立派な王妃に育ててみせます」
王子が立ち上がり胸を張ります。
足元にはそれを見上げるアイリス嬢、そして後ろに跪いて王子をたたえる側近たち。
ここだけ見ると絵になる構図ですね。
「さて、では、この後はそのほうらが起こした騒ぎの裁きをつけていくか。
では、まずアングよ、なぜそなたは勝手にクラウディアとの婚約を破棄したのだ?」
「え? それは決着したのでは?」
「何を寝ぼけている。何も決着などしていないだろうが、王族の言葉は撤回できない、そのこととそなたがやったことの責任とは別の事だ。
はよう答えよ」
殿下ははたと膝を打ち、誇らしげに答えました。
「クラウディアがアイリスに対して陰湿ないじめをしていたためです。
あんな女は王妃にふさわしくない」
むかっとしますね。




