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ラブコメ主人公、ご乱心  作者: 本郷隼人
【第一章】ラブコメ主人公、覚醒
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8話 自制心の低さ

 中島は、暴走しまくっていた。


「ふはははははは! 源さん、君が欲しそうにしていたぬいぐるみは片っ端から取ったぞ!」


 ゲームセンターではクレーンゲームの景品を片っ端から取りまくり源にプレゼント。


「このぬいぐるみ達を僕だと思って毎晩大切にしてくれ。愛してるよ源さん」


「ズキューン! ………あ、はいよろこn」


「あ!えーと、源さんぬいぐるみ恐怖症ってさっき言ってたから全部オレらで山分けな!なぁ!」


 源がメロメロになり、地震が起きながらも、気さく友がと咄嗟に嘘を吐いて事なきを得た。

 かと思えば今度はショッピングにて。


「このワンピースは細身な源さんに似合うな。むむむ、こっちのネックレスと合わせれば最強に可愛いぞ!付けてあげよう!ほら!」


「え、ひゃ? 顔が、近っ、イケm」


「あーそれはセンスねぇ!そのネックレスはセンスないからこっちのネックレスの方がいいよ!ね!だから離れなって中島ぁ!」


 源が赤面し、大雨が降り始めたが、首元にネックレスを付けようとしてきた中島を必死にアホ友が牽制し。

 かと思えば今度はカフェにて、


「スイーツ代は僕が全部払おう。金は安心してくれ、アルプス行ってる時にマフィア壊滅させて警察に懸賞金貰ったんだ。さあ、好きなだけ頼みな源さん」


「や、やさしい、すk」


「源さんダイエット中だからぁ‼ そんなに食わないからぁ‼」


「え、でも源さんやせ、」


「500%‼ 体脂肪率500%超えだから‼」


 と、直径十センチの雹が街中を襲いながらも、落ち着き友が叫び。

 かと思えば帰り際。


「源さん、別れのキスをするね。ほら、目を閉じて」


「ひゃ、ひゃいよろk」


「いややらせねぇよ⁉」


「「ぶべぇ⁉」」


 威圧的友が中島と源の顔面に拳をぶち込んで事なきを得た。


 なんてやり取りを他にも沢山していたので、


「お前ちょっとは耐えろやァァァーーーーーーーーーーっっっ‼‼‼」

「ひぃぃぃぃぃぃいいいいいいいい」


 中島が先に帰った後、クラスメイト四人に源はブチギレられ、泣かされたのだった。


「テメぇ自制心弱すぎだろぉ‼ どんだけ中島に絆されてんだよぉ‼ 殺すぞぉ⁉」


「世界⁉ 滅ぶんじゃないの⁉ ねえ⁉ お願いだからもう少し耐えてよ⁉ ねぇ⁉」


 気さく友は源の胸ぐらを掴んで怒鳴り散らかし、アホ友は懇願しながら涙を流す。

 威圧的友と落ち着き友は「コイツ本当にチョロすぎだろ」「いっそホントに殺した方が早いかもな」とこそこそ話していた。

 源は泣き叫んで、ひたすら必死に謝るしかないのだった。


「うへぇ……疲れたぁ……」


 そして夜、色々疲労困憊な源は自室のベッドに寝っ転がった。柔らかいシーツが、疲れが蓄積した体の重さに吸い込まれるように凹む。

 部屋の勉強机には、中島に買ってもらった大量のスルメが山盛りになって置かれている。その高さとしては丁度幼稚園児ぐらいだろうか。賞味期限までに食いきれる自信がない。


「うえええ、これからやっていける気がしないぃぃ…………世界滅んじゃうぅぅ……」


 脳内で今日の出来後を振り返りながらボロボロ涙を溢す。本日何回目の涙だろうか。


「お、可笑しい……いくらなんでも私、中島君に惚れすぎてる……絶対何かおかしいってこんなの………」


 独り言が零れる。中島の名を口にして、反射的にその人の顔がチラついた。

 挙動不審で、スキンシップが多くて、とんでもない事言ってるのに、嫌悪感が全く湧かない。あの笑顔と声を感じると勝手に胸が高鳴る。体が震えたかと思えば緊張で石造みたいに動かなくなり、名前を呼ばれるたびに頬が熱くなるのが分かった。


 これが恋か。運命か。愛しの人に尽くされるのがこんなに幸福なのか。

 あの人に行動されるといちいち脳がショートされそうで、一般人としてのコミュニケーション能力が著しく削がれていく。いや、コミュニケーションは元からあまりないのだが、いつも以上に無くなるというか。


 何というか、彼と接していると頭が馬鹿になるのである。人間如何こうより、チンパンジー並の知能になって『中島君、カッコいい。好き』という単語しか脳内に残らないのである。他は一切なくなるのである。


 嗚呼、やはり思考が可笑しい。色々と運命の恋のせいで、自分自身が可笑しくなってしまっている。そのせいで放課後は自制心が欠落し、あんな簡単に絆され、後手後手に回ってしまったのだ。ノータイムで好きだのカッコいいだの言ってしまいそうになったのだ。


「……いや、待てよ? 本当にそうか? 恋のせい? 呪いのせいなんじゃ?」


 そうだ、そうかもしれない。これはひょっとしたらまだ自分自身が知らない魔女の呪いがあって、そのせいで自分はあんなに中島にドギマギしているのかもしれない。でなければ自分があんなに煩悩を我慢できない人間ではないか。そうに違いない、なんかこう『運命の相手に必要以上に惚れてしまう呪い』みたいなのを大昔の魔女は源家に掛けたのだ。きっとそうである。


 確かに男子への免疫は無い源でも、流石に可笑しいのではと考え始めていた。


(そうだよ呪いだよ! 多分、文献にも記述されてたけど、うっかり見落としてしまったんだ! うん、そうに違いないよ! 早速読み直さないと!)


 ベッドから起き上がり、勉強机の引き出しに仕舞っていた源家に関する文献と、スルメを齧りながら魔導の書を何度も読み返した。


「……………………」


 そんな呪いは無かった。

 源は落胆する。ただ単に中島の事が、滅茶苦茶に好きになってしまったのだった。


(が、頑張ろう。ぜ、絶対になんとか耐え抜かないと! や、やってやるぅ!)


 そして、中島と結ばれないようより一層の決意を胸に、心強くあろうと意気込むのだった。


 ☆


 だがそう簡単にはいかない。

 一方その頃中島は、パソコンと睨めっこしていた。


「このままでいいのか中島。本当に源さんへ愛が伝わっているのか? いいや伝わってない! 彼女へ特大の愛をダイレクトに伝えねばならんのだ!」


『恋人 愛を伝える 方法』でネットサーフィンをひたすら行う中島。眼が血走っている。

「むむむ、これは………………なるほど、推し活かぁ。これはいいかもしれない」


〝推し活特集〟と題されたサイトを、中島は熱心に眺め始める――――――――――。


 ☆


 そして、翌日の学校。源のクラスにて。


「これが僕の最大限の君へ伝える愛‼ 源さんは僕の最推し‼ 好きだァ‼」


「は、はわわわわわわ」


 中島はバラの花束を手に源へ、膝まづいてプロポーズする。笑顔の源さんがプリントされたTシャツを着て、源がプリントされた缶バッチが大量に装飾されてた痛いバッグ………つまり痛バを肩にかけ、最大限愛を表現している。


(こ、こんなに私を愛してくれてる‼う、嬉しい……‼)


 自分をアイドルのように崇める中島に、心中かき乱される源。顔がすごく赤い。そしてどこか嬉しそうである。昨日の決意は完全に崩落していた。


「付き合ってくれ源さーーーーーーーーーー―――ん‼‼‼‼‼」


 赤面している源に、中島は叫ぶのであった。


 そして、この後生徒指導の先生に呼び出されこっぴどく叱られるのであった。

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