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6話 もっと他に方法あっただろ

 確かに、話が本当なら、源一人だけではダメだろうなと四人は感じた。何故なら源は見た目からして頼りなさげだからである。


 いやそもそも、こんなに泣き叫んでいる時点でメンタルも弱そうだし、押しも弱そうだし、告白を断れる度胸は皆無そうに見えた。中島のあの猛アプローチを考えれば折れて告白を受け入れそうである。


 しかし手伝えと言われても、何をすればいいというのか? 中島が告白しようものなら力尽くで止めるとかだろうか。中島を説得しようともそのルール? により世界が滅んでしまうリスクもあるのなら、一筋縄ではいかないだろう。


 どうしたものかと四人は互いを見やった。全員一様に、『どうしたものか』って顔をしていた。そりゃ誰もがそうなるのであった。


「――――はぁ、付き合ってらんない。話し終わったんならアタシ先教室戻るから」


 源の隣のベッドに腰掛けていた威圧的友が呟くと、呆れた様子でから立ち上がった。どうやらシビレを切らしたようである。


「お、おいちょっと待ってよ」と気さく友が制止を呼びかけるが、威圧的友は反論する。


「なに? まさかその子の話信じんの?」


「いや、そうじゃないけど、お前その態度は……」


「うっさいなぁ! そんな馬鹿馬鹿しい話に付き合ってる暇ないっての! 第一そんなことで世界が滅ぶわけないから! 全部その子の妄想でしょ!」


 悪態をつきながら保健室のドアに手を掛ける威圧的友。威圧的友のそんな威圧的な態度に、気さく友が若干切れ気味になる。


「はぁ? じゃあ中島の件はどう説明すんだよ?」


「そ、それは…………なんか、アレだよ、頭とか打っただけとかでしょ! 屋上のアレだって、気のせいでしょ !たまたま綺麗に着地できたとか、多分そんなんでしょ!」


「はぁ⁉ あの高さでそんな訳ねぇだろ⁉ お前中島並みに頭湧いてんだろ!」


「あ゙ぁ⁉ なんだお前ぇ殺すぞ⁉」


 顔を近づけ睨み合う二人。緊張感が部屋中に伝わる。

 そして二人は、何故か一瞬動きが固まった。保健室が少しの間、シーンと静まり返る。


「…………そういや中島遅くね」


 威圧的友が思い出したかのように呟く。中島が飲み物を買いに行ってから、もう随分時間が経っていた。

 一応この保健室から一番近い自動販売機は昇降口前に設置されたものだが、そう時間が掛かる事は無い、筈である。わざわざ学外のコンビニにでも買いに行ったのだろうか。

 その疑問はすぐに晴れた。


 ―――ガンッ! ドアが勢いよく開かれた。


「源さんお待たせ! 猛ダッシュでアルプス山脈の天然水を汲んできたよ!」


 …………全身がズタボロでずぶ濡れの中島がそこに立っていた。両腕には大量の、ラベルが貼られていないペットボトルの山を抱えている。


「お、お前どこまで行って、」


「? だからアルプス山脈だ! 源さんには綺麗で栄養がありそうな水を飲ませるべきだと思ってさ! 少し時間が掛かってしまったが!」


「「「「は?」」」」


 気さく友が、いや、中島のクラスメイト達は唖然としている。

 それに見向きもせず、中島はただ一点、愛しの源に大きく笑って、ペットボトルを差し出す。


「さあ源さん、じゃぶじゃぶ飲んでくれ! 日本海を渡り、ユーラシアを全速力で突っ切って取って来たんだ! まだ冷たい筈だよ!」


「…………………………………」


 源は中島に狼狽を滲ませ、そして同じく狼狽中の他四人に目線を向ける。すると少し口元を強張らせてから、そして、覚悟を決めた表情へと移り変わった。


「み、皆さんが信じられないのも無理ないと思います。わ、分かりました。証拠を見せます」


 源は四人にそう言ってから、スッと立ち上がった。


「なっ、中島君、大事な話があります」


「ん? なんだい?」


 源は、深く、ふか~~く深呼吸をする。

 そして、意を決する。


「な、中島君。あっ、あの」


「?」


「わ、私!」


「っ⁉」


 たどたどしく話す源の表情を、頬の色を見て中島は気付く。源の顔が紅い。そしてこの緊張しているような、しかしどこか照れているような、恥じらいの態度。姿勢。

 つまりだ。つまりこれは、この状況は…………。


「ま、まさか源さん⁉」


「わ、私、貴方の事が、そ、その……」


「み、源さん―――――――――っ‼」


 告白。その場にいた誰もがその単語を脳裏に過らせる。

 そう、そのピンク色に満ちた空気感は、傍から見ると手に汗握るその行為は、好きな人へ自身の愛を伝える告白のそれ。源から中島へ愛の告白をしようとしている。そう感じ取れる。


「わ、私……!」


「み、源さん!」


 学校で、女子生徒が男子生徒へ想いを伝える。甘酸っぱい青春の眩しさ。学生の輝き。その一ページ。誰もがドギマギするような光景。宝石の様なシチュエーション。


((((ま、まさか…………コイツ!))))


 しかし、そんな照れくさい状況下に他の四人は、別の意味でドギマギしていた。

 フラッシュバックするのは、源の先程の話。


「わっ、私は、あ、貴女の事が!」


 中島と源が結ばれると世界が滅ぶ。


 刹那、その場にいた誰ものスマホが鳴った。



 ――――ピぃー‼ ピぃー‼ ピぃー‼ 地震です‼ 地震です‼



 視界が揺れた。地面が、全てが激しく揺れた。


「うおぉ⁉ え、地震⁉」


 四人は咄嗟に身を低くする。ベッドが、薬品の入った棚が、机や椅子が。保健室が大きく揺れた。


「ちょ、大きい大きい!」


「ひえぇぇぇぇ⁉」


 四人は各々警戒態勢に入る。机の下に入ったり、布団に包ったり、棚が倒れないように支えたり。


 ―――――だが中島と源は違う。まだ〝告白〟をしていた。


 それこそ必死になって、お互いがお互いを見つめ合っている。


「み、源さん‼」


「あ、あ、貴方と‼」


「いや、ちょっと⁉ 何やってんの二人共隠れなって⁉」


 机の下に入った威圧的友が叫ぶが見向きもしない。二人だけが世界から遮断されたみたいに周囲の状況から浮いてる。


「ね、ねえ皆な外見て! めっちゃ雨! 大雨振ってる!」


 布団に包まったアホ友が指を差す。棚を抑えている気さく友が叫びながら、


「は⁉ 何言ってんだ⁉ 今日は一日中晴れだって天気予ほ、」


 窓の方を見ると大雨が降っていた。ゴロゴロ雷も鳴っていた。

「いやマジか」


 数秒前まであんなに晴天だったのに、面白いほど土砂降りになっていた。


「貴女と‼」

「源さん‼」


 二人は気にせず、まだやっている。


「み、皆! ニュース! このニュース見て!」


 床に突っ伏していた落ち着き友が、大音量でスマホを見せる。

 映像は、マイクを持ったリポーターの男性が、一生懸命、浜辺で叫んでいる。


『ただいま、世界中にて大地震と大雨と雷が発生しています! 世界各国の海岸からは500メートルの大津波が押し寄せて来ています! あ、たった今入った情報によると、地底人の大群が政府に宣戦布告をしてきたそうです! 繰り返します! 地底人が宣戦布告をしてきました! あっ、これもう完全に世界の終わりですね! 絶対そうですよね! 泣きそうです! 皆さんさようなら! 以上最後のニュース速報でした! うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!』


 スマホから、映像と音声が途切れた。


「「「「⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉」」」」


 四人は、パニックになった。脳の思考が一瞬停止して、そしてハッと気づいて、すぐにこの状況の原因に叫ぶ。


「す、す、す‼」


 源に対して大声で叫ぶ。


「「「「やめろ源ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおーーーーーー―‼‼‼」」」」


「す、すすす、す………‼」

「源さん‼」


 期待する中島。

 源が、告白する。

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