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ラブコメ主人公、ご乱心  作者: 本郷隼人
【第三章】阻止しろ!カップル成立デート!
22/30

6話 コードネーム

 デート当日。

 遊園地の入り口付近にて、物陰に隠れた男が一人。


(こちら、コードネーム・『タコさんウインナー』。現在ゲート前にて中島を待っている源さんを確認。オーバー)


 タコさんウインナーこと気さく友は、遊園地に入るためのゲート前に居る源を、静かに見守りながら、右耳に手を当てそう心の中で念じる。

 すると、


(こちらコードネーム・『コイントスマスター』。了解、こちらも所定の位置に着いた)


 コイントスマスターこと威圧的友の声が、気さく友の脳内に響いた。


(オーケー分かった。しかし凄いな、マジでテレパシー出来てるじゃん)


(なんか変な薬渡された時は疑心暗鬼になったけど、ホントに意思疎通できるとわ)


 二人は、心の中でそう会話する。


 一時間前。クラスメイト達四人は、源さんにある物を渡された。

 それは緑色の小さな錠剤で、ラムネの様な見た目のそれを四つ掌に載せていた。

「これは何だ」と不思議がる四人に、源は、


「て、テレパシーが使えるようになる錠剤です。ま、魔法で造ったもので、これを飲んだ者同士は、一日だけテレパシーが使えます」


 と説明し出す。何でもこれを五人全員で飲み、常に会話出来る状態にするという。


「つ、使いたい時は右耳に手を触れて、あ、相手の事を念じればその相手に言葉が通じます。こ、これがあれば電話要らずで、デート中に皆さんと会話出来ます」


「「「「めっちゃ便利じゃ~~~ん」」」」


 というわけで、四人と源は錠剤を飲んだことにより、テレパシー能力が使用可能になっていたのだった。


(おーい、他二人は所定の位置に着いたのか? 『三浦海岸』と『イケメンキャラが人気投票上位に来るの許さない侍』は返事してくれ)


(ごめーん、こちら三浦海岸! 丁度今着いたところだったから連絡遅れた!)


 三浦海岸と呼ばれたアホ友が慌てて返事をする。気さく友はおいおい頼むよ~と溜息を吐いてから、反応のないもう一人のコードネームを叫ぶ。


(そんで? イケメンキャラが人気投票上位に来るの許さない侍は聞いてんのか⁉ 自分の持ち場に居んの⁉)


(あーごめんごめん、こちらイケメンキャラが人気投票上位に来るの許さない侍。ポップコーンとジュース食ってて両手がふさがってたから応答できなかった。もう食べおわったから問題ない。オーバー)


(いや満喫してんなよ)


 気さく友は、気の緩んでいるイケメンキャラが人気投票上位に来るの許さない侍こと、落ち着き友にツッコミを入れ。


(…………つうかお前のコードネーム長くね?)


 そこにもツッコんだ。


(てか何だよその名前?)


(いや、だって可笑しいでしょ⁉ 少年漫画で、凄いキャラ立ってて滅茶苦茶頼りになる三枚目キャラより、なんかそこまで魅力もない顔が良いだけの敵キャラとかが人気投票でトップ3入りとかしてんのさ⁉ ちゃんと漫画読んでたのかよ⁉ ふざけすぎだろ‼)


(ふざけてんのはお前だよ。長いから人気投票侍とかでいいな)


 コードネーム・『人気投票侍』になった落ち着き友は、テレパス越しから謎にキレ散らかす。

 因みに、何故こんなコードネームなどで互いを呼び合っているのかというと、アホ友が「スパイみたいな行動するんだからコードネームとか付けた方がカッコイイじゃん! だからコードネームで呼び合おうよ! ねぇねぇ考えようよコードネームぅ!」と子供のように駄々をこねた為、渋々、各々呼び名を考えさせられたのだった。


(おーい『特級呪霊』! 全員準備OK! あとは中島を待つだけ。今んとこの調子どう?)


 源ことコードネーム・『特級呪霊』は、気さく友の思念を受信し、すかさず自身の右耳を触れる。因みにこのコードネームの名付け親は威圧的友であり、理由は『死んだらそうなりそうだから』である。


(こちらコードネーム・特級呪霊。了解しました。こちらは問題ありません。感情も、特に何も湧いてきません。感情を抑える魔法の効果は問題なく作動しているみたいです)


 淡々と抑揚のない声が気さく友の脳内に響く。


(そっかそっか。ホントになんも感情もない感じ?)


(〝全く無い〟という訳ではありませんが、心の起伏はあまり感じられませんね。強いて言えば、物欲が働いてない状態というか……例えるなら、凪が吹いてる気分です。実際特級呪霊と呼ばれても、あまり悲しくはなりません。普段なら就寝前に大号泣モノですが)


(え、あぁ、そう……)


(これならデートにつまらない反応をして、中島君の心をバキバキにへし折って再起不能になるぐらいこっぴどく振るという最終目標も達成できますね)


(ま、まぁ何はともあれ、それなら良かったよ。期待してるわ)


 感情を抑える魔法、の効果であろうか。少しドライな印象を受ける。というより何か機械的というか。まるでAIと会話しているような、とにかく冷酷な怖さを今の源から感じた。気さく友は少し心配になるが、当の源本人が問題ないと言っているので大丈夫なのだろうと納得する。


 それと、特級呪霊という流石に酷いコードネームを付ける威圧的友を後で少し怒ろうと、気さく友は思った。


「おーーーい、源さーーーん」


 すると、遠くから中島が走って来た。スッと気さく友は、見つからないよう更に物陰に身を潜める。

 中島は源に駆け寄って、


「すまない、待たせてしまったね」


 申し訳なさそうに一言謝ってから。


「しかし三十分前なのにもう居るなんてビックリしてしまったよ。ははは、そんなに今日のデートが楽しみだったかい?」


 と嬉しそうに笑う。

 イケメン顔から放たれる甘い微笑みは、いつもなら源を一瞬で惚れさせ、情緒を可笑しくさせるだろう。

 だが、今日の源はやはり一味違った。


「―――――いいえ、そこまで楽しみにはしてません。それよりさっさと行きましょう」


 きっぱり一閃。中島を冷徹に切り捨てる。

「えっ」


「どうしたんですか? 入らないんですか?」


 呆気に取られる中島を置いて、先に入場ゲートを通ろうとする源。中島の表情は、まさに鳩が豆鉄砲を食ったように目を丸くしていた。


「あ、いや、そうか。すまない源さん、行こうか」


 中島はそう言って源に近寄ると、手を差し出す。


「事前に言った通り、今日は僕がエスコートするよ! さぁ、手を取って!」


(っ!)


 この行動に、気さく友の表情が険しくなった。

 感情を抑える魔法は、『触れられると魔法が解け、三十分使えなくなる』というのが源からの事前説明である。

 普段の源なら、勢いに気圧され手をつないでしまうだろうが…………。


「――――結構です。あと今日一日は私に触れないで下さい。無闇に触られるのは、好きではないので」


 しかし、今日の源は強い。またもやキツめの一言を中島に浴びせる。


「な⁉」


「さ、行きましょう」


 二度目のクリティカルヒットには流石の中島も堪えたようで、ぷるぷると震え出した。

 対し源は、中島に振り向きもせず、背を向けながらパーク内へ入場してしまったではないか。


(うおスゲぇ! めっちゃやるじゃんか! あの源さんが中島に冷淡な態度取ってる! 魔法スゲぇ!)


 気さく友のテンションが上がる。これはひょっとすれば、本当に中島を振れるかもしれない。そんな希望も湧いてくる。

 が、そうそう甘くもなさそうで。


「ふ、ふふふ…………ふははは! いいじゃないか! 何だか不機嫌そうだが、そんな君も素敵だね、源さん! 俄然やる気が湧いてきた! 待ってくれ源さーーーん!」


 中島は、一人やる気を燃やし始め、源の後を追うのだった。


(…………そう簡単には行かないか。しぶといなアイツ。特級呪霊! 作戦通り、乗るアトラクションが決まったら報告して! そしたら他の三人がそこに向かって、中島を妨害するから!)


(了解です)


 気さく友の指示に、源が無機質に返答する。


「よっし、今日で中島を元に戻すからなぁ~」


 そして、テレパスを終えてから、気さく友は小声で呟き、気合を入れた。


 ここから、五人と中島の熾烈な戦いが始まるのである。


 ⭐︎


 全体の作戦はこうである。

 この遊園地は日本でも有数のテーマパークであり、とても広い面積を有する。

 遊園地は、中央に聳え立つお城を軸に、北エリア、東エリア、西エリアの三つに分かれている。その各エリアにはアホ友、落ち着き友、威圧的友を一人ずつ配置する。


 中島と源さんの行き先が決まり次第、源から、他三人へ連絡を送る。

 そして、連絡を受信した他三人の誰かが、中島を襲うという算段である…………。

 一応、中島と源の動向を、気さく友が偵察役として監視。状況を逐一他三人へ知らせる。


(完璧な作戦、とは凄い程遠いけど。まぁ急ピッチにしては及第点だろ)


 デートを監視中の気さく友が、心の中で呟く。現在二人は中央のお城付近におり、どのアトラクションに乗るかを話し合っている様子だった。

 パーク内は週末ということもあり人々で賑わっている。全体の比率としては子ずれの家族とカップルがやや多いだろうか。そんな中でコソコソと物陰から偵察している気さく友は少し浮くが、世界の命運の為、致し方なしと割り切っていた。


「源さん、どこか行きたい場所はあるかい?」


 自信が監視されているとは露知らず、中島は源に問いかえる。


「いえ、特には」


「そうか。なら、最初はお化け屋敷というのはどうだろう? 何やらここのお化け屋敷は有名らしい。怖い系は大丈夫かい?」


「まぁ……嫌いではないです」


「そうだね! 下調べで知ったけど、源さんは確か怖いモノが好きでホラー映画やホラーゲームは数多くプレイしてて! ホラー系のリアル脱出ゲームも興味あるけど人混みがオバケより苦手だから行けなかったらしいね!」


「なんでそんな事まで知ってるんですか」


 源が聞き返す。感情を抑える魔法を使っている筈だが、心なしか困惑しているようにも伺えた。気さく友もそれにドン引きしつつも(へー源さん怖いモノ好きなんだ。まぁあの容姿だもんなぁ)と若干失礼なことを想いながら納得していた。


 因みに、今日の源の服装は、訳の分からない英文が書き連ねてあるダサい赤Tシャツの上に紫色のパーカーを羽織り、下はしわしわの膝丈程ある白いスカートである。


 おおよそデートに着ていくコーデではないクソファッションであり、この服装で中島が幻滅してくれないかと故意に気さく友達が着せたのだが、中島は「幻想的で素晴らしい」と先程褒めていた。幻想的なのは中島のセンスである。


「よし、じゃあお化け屋敷に行こうか」


「分かりました」


 二人が移動を始める。源は中島に悟られないよう、さり気なく右耳を触った。


(こちら特級呪霊。今、お化け屋敷に向かっています)


 テレパスが、忽ち四人の頭に響いた。


(了解、お化け屋敷か)


(確か東エリアだっけ? となると担当は……)


(…………俺だな。よし、任せてくれ皆!)


 東エリア、ベンチに座っていた落ち着き友が立ち上がる。お化け屋敷は東エリアの端の方に位置している。


(タコさんウインナー、今、二人はどこら辺に?)


(こちらタコさんウインナー。今ちょうど東エリアに入った。すぐにお化け屋敷に向かってくれ)


(ラジャー。なんとか中島を仕留めてみる)


(無茶はすんなよ。最悪、源さんを他人に触れさせなければいいから)


 そんな気さく友のテレパスを聞くや否や、落ち着き友はニヤリと笑った。まるで悪戯っ子の様な微笑である。


(任せてくれ。お化け屋敷なら、あの作戦が使える)

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