4話 反省会と今後に向けて
「全然ダメじゃねぇかァ!」
気さく友の叫びが、夕暮れ教室に響き渡った。
全ての作戦に失敗した五人は、再び空き教室にて作戦会議、という名の反省会をしていた。
「クッソ、アイツ強すぎだろ。いくら呪いで強くなってるとはいえ、コレじゃらちが明かないぞ?」
「途中から、中島も警戒しだして全然歯が立たなかったもんね」
「つうか何個かアホみてぇな作戦あっただろ」
「な、なんでやったって感じの作戦、ありましたよね…………」
ぐったり疲弊しきった五人は、アレが駄目だった、コレが駄目だったと話しながら、椅子の背もたれに身を預け天井を眺めていた。
何はともあれ、中島が厄介すぎて作戦は何一つ通用しなかったのだった。
「どうするこれから? 中島、『明日のデートの為にも早くて寝て万全の状態でいたいから』ってすぐに帰っちゃったけど」
アホ友が気だるげに発する。
「てかアレじゃね? もうバックレるとかでいいんじゃねぇ? 明日行かなくていいじゃん」
「………いいなソレ。てかそれじゃね? 適当な理由つけてバックレりゃいいじゃん!」
「あー盲点だったわ。源さんそれで明日頼むわ」
「うわぁ~オレらの苦労は何だったんだよ~」
四人がそんな会話をしている中、呼ばれた源は、ゆっくりと首を振った。
「い、いいえ、もし仮にここで逃げたとしても、こ、こんな状況が続いていけば、私はいつか必ず中島君の告白を受け入れてしまいます。きょ…………今日で確信しました。わ、私の忍耐力じゃ必ずそうなります!」
「とことん不甲斐ねぇなぁ」
「頼むから自信持ってくれって」
「で、ですので、覚悟を決めました」
―――ドン! 源は顔を引き締め、強く机を叩いて立ち上がった。音は大きくなって、四人の視線が源に集中する。
それから、源が宣言する。
「私は明日、必ず、中島君を振ります! その為に、〝魔法〟を使う事にします!」
「「「「ま、魔法?」」」」
源が頷く。
「せ、先日も言ったと思いますが、私は魔女の末裔です。家の倉庫には魔導の書があって、先祖の魔女が記した魔法の詳細が書かれています。その魔導書を読んで、少しだけですが魔法を覚えました」
「あー、なんだっけか。じぇしか? みたいな名前の人」
「ええ、『源・ランバート・ジェシ子』。彼女が残した魔法を、子孫である私も少しだけなら使えます。それを駆使して明日、中島君に対抗しようと思います」
真剣な表情の源。ウソを言っている雰囲気は無かった。
四人は一瞬固まってから、すぐに落ち着き友が、怪訝そうに聞き返す。
「ちょ、ちょっと。本当に言ってるの? 源さん、魔法なんて使えるの?」
「う、疑うのも無理もないと思います…………じ、実際、私も完璧に使いこなせる訳ではなく、そんなに多くの魔法が使えるわけではないのですが、まぁいくつかは、つ、使えます。魔法―――――――」
「ま、マジか。そんなオカルティックな事、実際に出来るんだ」
「いやまぁ、確かに呪いとか得意そうな見た目はしてるけど……」
「それは………あ~。確かに言われてみれば……」
「まぁ、そう考えると割と妥当……?」
「見た目がそうっぽいから……そういう事なのか?」
驚きを隠せない面々だが、源の呪われた日本人形みたいなTHE・陰鬱少女という容姿が、魔法が使える事実に妙な説得力を持たせたらしく。源は、(な、何故か凄い悪口言われてる気がする……)と結構落ち込んだのだった。
それはそうと、アホ友だけは純粋に、今後への疑問点を問うてきた。
「……で、でもさ。具体的にどうやって魔法で振るわけ? そんな魔法あるの?」
アホ友の疑問に、源は気を取り直して応えていく。
「そ、それは、か、感情を抑える魔法を使おうと思っています」
「「「「感情を抑える魔法?」」」」
「そ、そのままの意味です。対象の感情の起伏を抑える魔法。た、例えば、虫嫌いな人間に虫を見せても怖がらなくさせたり出来ます。こ、これを私自身に使えば、中島君への気持ちが無関心になって、ら、楽に振ることが出来ます」
「なるほど、めっちゃいいじゃん! これなら明日中島を振って…………ん?」
気さく友が言いかけて、動きを止め、眉を顰める。他三人も目を細める。
そして全員、違和感に気付き、源に怒鳴る。
「……いや使えよ⁉ いままでも⁉ なんで使わねぇんだよ⁉」
「ヒぃ、いいいいいや、そうじゃなくて! つつつ使えなかったんです! デメリットがあるんです!」
「デメリット?」
「は、はい、三つほどあるんです。ま、まず、この魔法は準備に時間が掛かるんです。普通の魔法なら数秒で使用できるんですけど、こ、これは特殊な呪符に魔力を込めて使う魔法で、そ、その魔力を込めるのに一時間ぐらい掛かるんです」
源の説明に、アホ友が頷く。
「な、なるほど? よく分からんけど時間がいるのk…………ん、一時間?」
頷き、言いかけて、眉を顰める。他三人も殆ど同じ行動をとる。
そして全員、違和感に気付き、源に怒鳴る。
「いや一時間でしょ⁉ 頑張ってよそんぐらい⁉ 朝にちょっと準備すれば良いじゃん⁉」
「い、いいいやでも! 朝って割と慌ただしくて時間なくないですk、」
「いや早起きすればいいでしょ⁉ なんでそこで努力しないのさ⁉」
「ヒぃ、ごごごごめんなさいごめんなさい! で、でもそれだけじゃなくて! この魔法、日中じゃないと効果が無いんですよ! 日の出から日の入り出ないと魔法が発動できないんですよ!」
源の説明に、威圧的友が頷く。
「あ、あ~そういう事ね。だから使えなかったと…………ん、日中?」
納得しかけて、言いかけ、眉間にしわを寄せる。他三人も同様。
そして全員違和感に気付いて以下略。
因みに当たり前だが、学校は大体、九時から十五時半までである。
「いや使えんじゃねえか⁉ ふざけてんのかテメぇ⁉」
「ひぃぃぃぃぃぃぃ‼ すみませんすみません‼ ででででも違くて! 最後のデメリットが厄介で使えないんです! 触られたら駄目なんです!」
「触られたら駄目?」
落ち着き友が反芻する。
涙目の源は、鼻をすすりながら説明する。
「た、他人に触れられたら、魔法が解けちゃって、三十分は使えなくなるんですよ! い、いつも中島君は私にボディタッチとかするんで、ぜ、全然使えないんですよ!」
「なるほどな。確かにアイツ事あるごとに源さんの手を握ったり抱き着いたりしてたな」
今迄を振り返ってみても、中島が源へ接触する機会は多々あった。
それを考慮してみれば、確かに魔法は使い物にはならないであろう。
つまり、と。落ち着き友は少し考えてから、話を整理し、予測し始める。
「なんとなく分かってきた。つまりその『感情を抑える魔法』は触れられたらアウトで、中島はボディータッチが多いから、明日は源さんに触れさせないように、俺達に妨害すればいい…………って感じか」
「あ、はい! そ、そうです! そんな感じです!」
理解してもらった事を嬉しそうにする源。
しかし、その説明に威圧的友は苦言を呈す。
「いや待ってって。簡単に言うけどムズ過ぎじゃん? 今日ですらアタシ達、アイツになんも出来なかったのに」
「そ、そこなんですが、それも魔法で何とか出来るかもしれません」
源は、「取り合えずこれ使いな」と威圧的友に渡されたポケットティッシュで鼻をかんでから、声を低くしてこう言った。
「三つほど、便利な魔法を使おうと思っています」




