3話 作戦開始!
【作戦その二・『それとなーく伝える作戦』(発案者 気さく友)】
これは、『さり気なく源さんがデートに行けないことを中島に伝える』というシンプルなものであるが、この作戦では注意事項があった。
――――犯してはいけない4つのルール、その二つ目『呪いの内容を運命の相手に伝えること』と四つ目『他者が伝言で、運命の相手へ源の愛を否定すること』である。
つまり四人は呪いの内容を知られたり、且つ『源さん、お前のこと嫌いだからデート行きたくないって~』的なことを言えば。忽ち世界は崩壊の一途を辿るのである。
(まあでも、こんぐらいなら注意しておけば大丈夫か)
(何も問題ない。予定通り『急な用事で源さんは行けない』って言えばいいんだ)
四人は意を決し、教室にいる中島へと話しかける。
「よ、よう中島! 元気してる~ぅ?」
「むむ、どうしたいきなり?」
中島の席を囲むように四人は、ぎこちない愛想笑いで中島と話す。
「いやぁ、ちょっとね。話さないといけない事があってさ」
「話さないといけない事?」
「源さんに伝言頼まれてさ。明日、急な用事が入ってデート行けなくなっちゃったんだって」
「ッ⁉」
「いや~、残念だったな中じ、」
瞬間、飛びつきように気さく友の両肩を掴んだ。
「なんだって⁉ それは本当なのか⁉」
「え、あぁ、源さんがそう言って、」
「なんだと⁉ デートに行けない⁉ 用事ってなんだ⁉ 外せないのか⁉」
ぐわんぐわん、中島が身体を揺さぶる。
「うわ、ちょ、中島⁉ 揺らすな馬鹿⁉」
「こうしちゃいられない! デートの為にも源さんに直接聞きに行って、可能なら僕が用事を済ませなければ!」
「「「「――――ッ⁉」」」」
しまった。と云わんばかりに四人は止める。
「いや、駄目だって! それは駄目だって!」
「ナニ? 何が駄目なんだ!」
「いやさ、その、詮索されたくない的な? 用事の内容をさ?」
「源さんがか? じゃあ君達も知らないのか?」
「う、うんうん! 知らないんだよねぇ俺らも!」
うんうんと必死に頷く四人を見て、
「…………いや嘘だな?」
「「「「え⁉」」」」
中島は何か怪しいと気付き始めた。
「何か、誤魔化しているな? 少し、いやかなり怪しいぞ? 何を隠している?」
「い、いやぁ~。そんな事ないけどな~」
「そうそう! 『ホントは源さんをデートに行かせたくない』とか、無いから!」
刹那、その場の空気が止まった。
「あっ、あっ、お前、あっ」
「え、何、なんか変な事…………あっ」
アホ友は、自分が失言をしていたのを、数秒遅れて気が付いた。
「――――――行かせたくないんだな? デートを?」
「「「「………………………………………」」」」
キレ気味に、中島が問いかけてくる。
「どうして、行かせたくない? 言ってみろ」
「へ、あ~、えっと」
「言ってみろ」
高圧的に顔を近づける中島。近づけられ、気押されたアホ友は、最大限その小さな脳味噌でこの場の切り抜け方を思考する。
(どうしよどうしよ、なんて言えばなんて言えば。なんて言えば中島は納得する? なっていえば…………てか顔近っ! なんなんコイツきもっ! もうちょっと距離とって欲しい……ん、距離? ハッ‼)
考えて考えて…………そして、結論に至る。
そして、アホ友は咄嗟に呟く。
「なんか、距離、置きたいって源さんが言ってたから…………」
「…………距離だと? つ、つまり、源さんは俺のことを嫌っているのか?」
「へ?」
瞬間、スマホから地震速報のアラートが鳴り始めた。
そしてアホ友は気付いたのである。自身がルール四つ目を破っている事に。
それからは、全員で何とか中島の誤解を解いて、世界滅亡を回避した。
そしてアホ友は他三人に散々罵詈雑言を浴びせられ、叱られた。
【作戦その三・『プールに落として風邪をひかせる』(発案者 落ち着き友)】
今はまだ五月中旬であり、水遊びをするには相当肌寒かった。
しかもこの日は上着が欲しくなるほどに気温が低く、こんな日に外で水浴びなんかしたら体調不良まっしぐらな程であった。
ので、中島をプールに中島を落として風邪を引かせようという作戦が出した。
「で、でも中島君をプールに落とすのってどうするんですか?」
源は疑問に思ったが、作戦の内容は割とシンプルで。
「何ぃ、源さんがプールに溺れているだって⁉」
という事を中島に伝えるだけであった。
「そうなんだ中島! 俺達四人とも全員泳げない(嘘)から、助けに行ってくれ!」
「任せろ、トウっ!」
まんまとハマった中島は、外に設置された、水温の低い校内プール(アホ友と威圧的友が大量に買っておいた氷入り)へとダイブしていった。
「よし、これでいいだろ」
「だね~。水めちゃめちゃ冷たいし、これなら風邪ひくでしょ」
五人は遠巻きに、中島が必死に水中を探す様子を眺めていた。
「…………あのぅ」
「ん、どうしたの源さん?」
「疑問なんですけど、本当にこんなので風邪なんて引くんですかね? 今の中島君って凄まじい身体能力なのに」
「「「「…………あっ」」」」
結果、引くような兆候は見せなかった。
「おーーーーい! どこだ源さーーーーーーーん!」
というかピンピンしていた。元気よく源を捜索している。
「つ、次の作戦、行きましょうか」
苦笑いで、源はそう言った。
【作戦その四・『中島を倒す作戦』(発案者 威圧的友)】
そのままの意味である。
「よお、中島ぁ~~~~」
四人はそれぞれ、釘バットや辞書、椅子などの鈍器を手に中島に歩み寄る。
「むむ、どうしたんだい皆? 険しい顔して」
「中島ぁ、個人的な恨みとか全然ないけど、アンタには病院送りになってもらう事になった」
「……えーと それはどういう?」
四人はその手に持つ〝エモノ〟を構えた――――――――――――――。
「………こういう事だよ! 行くぞォォォォォーーーーーーー‼」
威圧的友の雄叫びに、他三人が呼応する。
「やっちまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーー‼」
「うおおおおおおおおおおおお‼」
「死ねオラぁぁぁァァァァァァ‼」
そして、四人は中島に襲い掛かり、
「うべっ!」「ぐはっ!」「ぎゃ!」「うっ!」
返り討にされるのだった。
(な、なんでやろうと思ったんだろう…………)
そんな四人の有志を遠巻きに眺めながら、源は不思議そうにするのだった。
そんなこんなで。その後もあの手この手で作戦を実行していった五人だったが、全て悉く失敗。
放課後になるまで、遂に中島とのデートを反故にする事は出来なかった。




