7話 誘い
「中島君――――――――っ‼」
彼女の、源さんの叫びが聞こえると同時に、僕の肌に電車のフレームが触れ。
――――ぴょん、そして僕は後方へと軽く跳んだ。
――――衝撃を殺す為、電車に衝撃が行かないように。僕は後方へ跳んだのだ!
跳んでまた数センチ距離が空き、それをすかさず埋めるように電車が迫る。
そして僕は、今度は電車にしがみ付いたのだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼」
電車がブレーキをかけ、速度がだんだん落ちていく。
僕は、驚愕しながら僕を見る運転手を安心させようと笑いかけ、そして気付く。
(そういう事だったんだね、源さん。今の状況で例えるなら、電車が僕で源さんが人間なんだね)
全力で電車が突っ込めば人は受け止められず、ペシャンコになってしまう。
大きな愛で闇雲に告白していた僕を、源さんが受け止め切れなかったように。
じゃあそうすれば良かったのか?
簡単だ。
「相手に合わせた、適切な告白をすれば良かったんだね! 源さん!」
完全に停車した電車から僕は離れ、全力で源さんの元へと向かった。
電車に轢かれたというのに心は晴れ渡たって、清々しい気分だった。
「な、中島ぁーー‼」
「生きてる⁉ ピンピンしてる‼」
「マジかよ、中島無事なんか⁉」
「勿論だとも、僕はこんなもんじゃ死なないさ」
駆け付けると、心配にしていた親友たちにそう言って安心させ、すぐに彼女の前へ。
彼女はしゃがみ込んで、俯いて、丸くなって、そして泣いていた。
「う、うぅ……な、中島君……」
「心配させてしまったね。怪我は無い? 本当に申し訳ない」
「そ、そんな! 謝らないでください! わ、私の不注意でこんな事に!」
「源さん」
涙でぐちゃぐちゃになっている顔を、そっとハンカチで拭いて、彼女の手を握った。
「へ、ちょ、ちょっと、中島君⁉」
「申し訳ついでにもう一つ、君にお願いしたいことがあるんだ」
唐突に手を握られ慌てふためく彼女に、僕は、心を込めて言う。
「突然ですまないが、今週末、遊園地でデートをしてくれないだろうか」
「…………へ、へ⁉」
「そこでもし僕がまだ迷惑であると思うのなら、君からは潔く引こう。だからお願いだ、もう一度チャンスをくれないか?」
真剣に彼女にそう告げる。長い前髪からちらりと目元が見える。
目元は赤く、綺麗で美しい瞳からは、まだ少し涙が零れようとしていた。
源さんも、唖然としながら僕の瞳を見つめていた。
ああ、本当に源さんは、綺麗できれいで。
僕は堪らなく彼女が愛おしい。
叶うなら、彼女と共に。
夕日は地平線へと傾き、もうそろそろ夜空が世界を覆う。
「…………は、はい。分かりました」
どうやら今夜は最高の気分で星空を眺められるらしい。
☆
「「「「――――はぁぁぁぁぁああああ?????????」」」」
デートの誘いに乗った源に、クラスメイト達四人は心底、吃驚したのだった。




