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ラブコメ主人公、ご乱心  作者: 本郷隼人
【第二章】中島の葛藤
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4話 中島モノローグ、そして決意する

 そして源の顔がだんだん紅潮していっているのにも気が付いた。


「は、はわ、はわわわわわわああああ⁉」


 ぷるぷる震えだして、興奮からか言葉にならない音を口からは溢れ出し、次第に。


「す、すすす…………」


 思わず告白を始めようとしていた。


「「「「み、源さん⁉」」」」


 状況のヤバさを実感した四人がすぐさまに駆け寄って、源から中島を引き剥がそうとする。


「おい中島! 何やってんだお前!」


「馬鹿馬鹿止めろ! 耐えろ源さん!」


 引き剥がそうとするのだが、


「え、ちょ、嘘でしょ離れないんだけど⁉」


「な、何だこの馬鹿力は……」


 四人がかりで中島を引っ張ってもびくともしない。岩に張り付いたフジツボぐらい剥がせないのである。


「源さん、悲しかったねぇ。でももう大丈夫だ。皆が、そして何より君の永遠のプリンスであるこの僕が、君を、離さないよ……………」


 ぎゅっと、徐々に力を込めて抱きしめる中島。


「す、すすすすす…………」


〝好き〟を伝えようとする源。

 つまりこれは、世界滅亡の条件に当てはまっていた。


 ―――ブーン、ブーンー、ブーン、ブブブブブーン。


 窓の外から、機械音とエンジン音らしき何かがした。

 大きな、オーケストラのように体の芯まで響くような、大きな音であった。


 その音にふと、四人は視線を外へ向けた。するとさっきまで晴天だった空は曇天のように暗かった。しかしその暗転は分厚い雲が覆っているせいで出来上がったものではなかった。


 巨大UFOである。ドデカい未知の円盤が、果てしなく続く青空を果てしなく覆っていたのである。


『――――地球人に通達する。我々はツヨイ~ゾ星人である。この星を滅ぼしに来た』


「「「「えっ?」」」」


 円盤UFOからアナウンスが鳴って、四人が呆気に取られる。


『あと一分で攻撃を行い、地球を消し去る。恐怖に飲み込まれながら死にゆくがよい。地球人よ』


「「「「え、あ、え?」」」」


 ブツリ。音声アナウンスが切れる音がした。


「「「「…………………………」」」」


 数秒固まってから、四人は、ゆっくりと中島と源に顔を向けて、叫ぶのである。


「「「「やめろお前らぁぁぁァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼」」」」


 必死に懇願しながら、力一杯、二人を引き剥がそうとするのだが、やはりびくともしない。それでも四人はやる。世界の存亡をかけ。四人は死に物狂いでやる。


「源さん、愛しているよ」


「すすすすすすすすすすすすすすす」


 セミのように鳴き出す源。そんな彼女を更に抱きしめる中島。


「耐えろぉぉぉぉおーーーーー‼ 耐えろ源ぉーーー‼」


「根性みせろよ‼ なァ‼ 源ぉ‼」


 気さく友に威圧的友が叫ぶ。懇願する。


「離れろ中島ァ!」


「なんでこんな、力強いのお前⁉ ふざけんなァァァ⁉」


 アホ友と気さく友も頑張って引き剥がそうとする。


 が、四人の抵抗空しく。どんどん抱きしめる力が強まっていく。


「源さん、好きだよ」


「す、すす……………ぅぅ……」


「一生愛しているよ」


「う、ぅぅぅ……」


 どんどんどんどん力が籠っていく。ぎゅっと、腕が源の身体に巻き付いていく。


「ぅ…………」


 どんどんどんどん、どんどんどんどん。締め上げるように。

 割と力がこもっているようで、源の身体からギシギシとまるで木が軋むような嫌な音が鳴っており、実際源の背骨が鳴っているようであった。


「ぽこぽこぽこぽこ……………」


「「「「ん?」」」」


 否。割と、というよりは、どう見ても凄まじく力が籠っていた。


「「「「………………あ、あれ?」」」」


 何故なら、口から泡を吹き始めたからである。

 そんな力で締め上げられているので、次第に海老反りになっていく源は、今度はガタガタ痙攣しだして。


「ぽこおっ‼ ぽこぽこぽこぽこぽこぽこぽぽぽぽぽぽ………ゴボぉ……」


 大量の泡を吹き、カクリっ、源の首が力尽きて倒れた。


「う、ウソだろおいおいおいおい」


「源さん⁉ ヤバい源さんが泡吹いてる‼」


「中島ぁぁぁーーーー! 死んじゃう! 源さん死んじゃうから!」


「源さん、好きだよ。源さん……死ぬまで、君から孤独をとおざけてみせるからね……」


 ―――――ぎゅぐ。追い打ちをかけるように、締め上げる。


「「「「中島ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーっ‼」」」」


 それからというもの、四人は必死になって中島の名を呼んだ。違和感に中島が気付いた頃には、源は幸せそうな顔をしながら気絶していた。巨大UFOは、騒ぎ散らかしていた合間に、いつの間にか姿を消していた。


 そして、源は中島へ保健室に連れていかれ、何事もなくベッドから目覚め、四人に心配され&告白しようとしていた事を散々叱られ、


「わ、私、また告白をしようとして………」


 と自責の念に駆られながら、無事に午後の授業を受けるのであった。


「……あれ、なんか体が軽いかも?」


 あと力強く抱きしめられたからか、胴体に蓄積されていた疲れがとれて、なんかスッキリした源であった。


 ☆


 僕、中島は午後の授業中、愛について考えることにした。

 愛とはなんだ? 多分何かを大切に想う事なんだろうなと僕の人生経験から推測することができるし、僕は源さんを心底想っているのだから、これは愛になる。

 いや、大切に想うだけが愛じゃないケースもあるか?


 例えばストーカーなどといった犯罪者。個人的にそこまで知識があるという訳ではないが、彼ら彼女らは好きな人の迷惑を省みずストーキングしたり、最悪その人を監禁とか殺してしまう訳である。全くもって酷い奴らではある。僕なら絶対にしないね、ストーカーなんてモラル無き人間がやる所業だ。


 いやまあ、そりゃ、ほんのちょっぴり源さんの情報を知るために彼女の家を捜索したりとか彼女を尾行したが、これは別にストーキングではない。僕と源さんの愛を育むため必要な、云わばそう、『テスト前の予習』だ。大切なことだ、彼女を堕とすという最終試験の為には。だから決してストーキングではない。


 すまない話が逸れた。つまり何が言いたいかというと、犯罪者が愛しい人へ悪列非道を尽くすのは、どう考えても大切には想ってないだろうという内容だ。『彼(彼女)を好きで好きでたまらない』という想い自体は存在すれど、『大切にした、幸せにした』という気持ちはなく、ただ私利私欲のために行動している気がしてならない。


 例えば、『自分の物にした』だとか『自分を見て欲しい』とか、そんな感情しかない。〝誰か〟ではなく〝自分が〟、が行動原理である。

 愛憎を抱いた犯罪者には一人称しか存在しないのではないか。


 いや、でも待てよ。彼女の為に行動して、結果それが犯罪か、犯罪にはならずともモラル的にアウトな行為という展開だってある。そういう事もある。

 うむ、難しい話だな。


 皆聞いてくれ、僕はいま、先生が黒板に書いた文章を板書しながら悩んでいる。


 ―――――源さんに、愛は伝わっているのか? 僕の好きという想いは、正しく伝わっているだろうか?

 もしや、彼女に迷惑を掛けているのではないか。

 だってそうだろ? 源さんは僕の愛の告白に何も返事をくれない。何か言おうとしても、おどおど震えているだけで何もない。どういう事だ?


 嫌われているかもしれない。怯えられているかもしれない。クソ、不安だよ‼ どういう感情なんだ源さん!


 やはり、怯えられている可能性はある気がする。さっきの昼休みだってそうだ。彼女を想うがあまり腕に力が入りすぎて、いつの間にか締め上げてしまっていたではないか。


 でもだって仕方ないだろ⁉ 源さん良い匂いなんだもん! なんかこう、防虫剤とか埃の匂いの中に、こう、なんて例えるべきか……フレグランスな香りが混ざってて、僕の脳味噌を刺激するんだ! 抱き心地だって良かった! 肉が無い骨と皮の細身な体躯をギュっと抱きしめると、何か滅茶苦茶に僕の身体にフィットするんだ! 採寸してないのにピッタリ服のサイズが合ってる感覚が分かるか? スーパーフィットネスミラクルガールって感じなんだぞ! はぁ⁉ つまりどういう意味だ⁉ 源さんが好きだって事だよ馬鹿者が‼


 いや落ち着け僕、そして言い訳するな。

 僕が源さんを締め上げたのには変わりないんだ。

 なんて野郎だろうか僕は。源さんは気にしないでと言ってくれたが、それでも自責の念が胸の内をぐちゃぐちゃにしてくる。

 僕の源さんを、大切に想っている、幸せを祈っている。


 彼女の為に、何かしたい。お詫びがしたいんだ。

 そして、愛を伝えるんだ。僕に出来る最大限の愛を伝えるんだ。


 その為にはどうしたらいい、告白か? いやだがしかし、今まで何回も伝えたが源さんは返事をくれていない。いつも僕に何か言うのを、そう何か躊躇っているように見える。

 じゃあなんだ、どうする。趣向を変えてプレゼントでもするか?

 しかしスルメや花束を贈っても返事は無かったじゃないか!


 でもそうだな。プレゼントは良いかもしれない。やはり気持ちを物で表すのは分かり易くて、つまり愛が伝わりやすい筈だ。

 じゃあ何が良い、愛を伝えるためのプレゼントは?


 ――――――アイツしかないじゃないか。愛のプレゼントの代名詞…………。



「結婚指輪しかないじゃないかァァァァァーーーーーーーっ‼」



 心の叫びが、教室に、廊下に、校舎全体に木霊した。

 この叫びは、僕にとって開戦の狼煙と同義だった。


 ――――――待っていてくれ源さん、すぐ指輪を君の左手薬指に嵌めるから。

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