【プロローグ】狂ってしまった理由
やあ、僕は中島。高校二年生の男子高生。
早速で悪いんだけど、世界で一番、源さんを好きなのは誰だと思う?
そう、僕――――ッッ‼
源さんを心の底から愛しているのは、この、僕ッッッ――――‼
どれぐらい好きか? っていうと…………う~~~ん、表現方法に悩んでしまうなぁ。
そうだなぁ、大きさ的には銀河級で、深さ的にはマリアナ海溝を余裕で突き抜けるレベルとでも言えば分かるだろうか?
いや、ちょっと待て。これじゃあまるで伝わっていない気がするな。全然駄目だ。ご理解いただけていない。肉の入ってないシチューとか、ピクルスの無いハンバーガーとか、そういうレベルで味気ない。酷すぎて石器時代レベルの表現って感じだなぁ~~…………。
――――よし、ならば数値で表してみよう。人への感情を数値化するのはどうなのかという気持ちもあるが、実際こっちのほうが分かり易いだろう。じゃあ例えば、ラブラブな恋人同士の、相方に対する愛の大きさが100%だとしよう。
相思相愛、「パートナーがいなければ死ぬ」って感じのを想像してみて欲しい。じゃあ僕の源さんに対する愛の位は? 500? 1000?
おいおいおいおい、違う違う違う違う。な訳ないだろって。想像しろって方が難しいのは分かるが、僕から源さんへの想いはそんなカスじゃないんだ。甘く見すぎじゃないか?
ん? じゃあ数値はいくつかって?
―――――5000京%だ。
いや、ウソウソ(笑)。すまないちょっと流石にこの数値は可笑しい。すまない嘘をついた。本当は無量大数%を超えるかもしれない。それぐらい好きなんだ。僕のラブリーヴィーナスこと源さんをね。理解した?
ん? 「おいおい中島、その源さんって人は誰なのかい」って?
たっは~~~~(笑)。すまないすまない肝心な所が抜けていたよ! 肉やピクルスを抜いていたのは僕のほうだったって事ね! いや失敬失敬!
そうだった、説明しないといけないな。そうだよな~~~~~。説明しないと。
…………いけないが、しかしどうしたものか。彼女の魅力を伝えるとなると世界中の樹木を伐採しないと紙が足りない。電子端末で描こうとしても全ネットのクラウドをパンクさせる分量が必要不可欠だろう。
まあ、仕方ない。不服だが簡潔に僕と彼女の出会いを話そう。
それは今日の朝。通学中の僕は駅のホームにて電車が来るのを待っていた。
ホームには通勤するサラリーマンだとかOLだとか、僕と同じような学生も大勢いて、いまかいまかと電車を待っていた。
そんな中、電車に乗るために形成された列に並んでいると、だ。目の前に一人の女子高生がいた。
僕と同じ制服を身に纏ったその少女は、絹の様な綺麗で長い黒髪をひらひら風に靡かせ、芍薬の佇まいで電車を待っていた。その若干猫背な背中は、実に慎ましく、そして守ってあげたい可憐さがあった。
―――して、運命の瞬間はすぐに来た。
少女のポケットから、ひゅるり、ハンカチが一枚落ちた。花びらのようだった。
瞬時に少女はハンカチを拾おうとする。
が、次の瞬間、背負っていたリュックのチャックが開いたままだったので、どじゃあ~~~ん。中身を全部ぶちまけてしまったのだ。チャックが開いている事に気付かないとは、う~~~ん、ドジっ子という奴か。可愛いねぇ。
真後ろにいた僕はすかさず拾うのを手伝う。彼女も「すみません、すみません」と必死に謝りながら(天使のさえずりの様な声だった)拾う。筆箱に、ノートに、財布に、お弁当箱。あらゆる物を二人で急いで拾う。フフフ、初めての共同作業ってやつ。
そして、そして、だ。
それは、拾っている最中に起きた。
僕が手に取った定期ケースを彼女に渡した瞬間、彼女の幼くも可愛らしい顔を。そしてその目が見えた。
長い前髪で隠くし、更に眼鏡をかけたその目を。
髪の合間から、レンズ越しからちらりと覗かしたその綺麗な目を。
そして、身体全体に電流が流れる感覚がした。
ずぎゅーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっと恋に落ちた。
そう彼女、源さんという愛の底なし沼へ、底を目掛けてダイブしたんだ。
それから僕はその初めての感覚に混乱して、居ても立っても居られなくなって、走り出したんだ。
そして飛んだんだ。猛スピードで駆け抜けんとする通過列車へ。そして轢かれた。滅茶苦茶吹っ飛んだ。吹っ飛んで駅の近くにある川に落ちて、そのまま溺れそうになりながら流されていったんだ……………。
そして、なんと後から調べて分かったんだが、なんと源さんは僕の隣のクラスにいるらしい。
つまり運命だ。そう、これは神からの贈り物なんだ。これは「源さんと結ばれろ」というお告げなんだ。これは最高だ。これは、〝祝福〟なんだ。
嗚呼、あの綺麗な二つの瞳。長いまつ毛。それを隠すように伸びる長い前髪。その前髪からチラつく丸眼鏡。宝石のような光沢のロングヘア。白すぎる素肌。華奢な体躯に若干猫背な姿勢。細い腕と脚。か細い音色を奏でる声。綺麗な顔の輪郭。耳。唇。全体的な陰湿さも愛くるしさもある不思議な雰囲気。守らねばならない女性。生き物。生命。存在。女神。可愛い。可愛い。可愛い。かうぃぃいい。
ああ、ああ、ああ、好きすぎる。好きすぎる。全ての災厄から守ってあげたい。そして世の中の全ての幸福をギュっと濃縮したような特大の幸福を生涯を掛けて永遠に贈りたい。
ああ、源さん。好きすぎる。付き合いたい。
結婚を前提に、付き合いたい。
一生を、いや輪廻転生その全てを共にしたい。
ストックしてるのでしばらくは毎日投稿する予定です。時間は決めてません。




