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「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか契約聖女になってしまいました  作者: As-me・com


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7/9

7 やはり危険人物だったようです

「わ、私は────」


 空になったグラスを受け取ると、自分の手が震えている事に気付きました。きっと、このスパイだと自称する銀髪男がとても恐ろしい人なのだと本能的にわかってしまったのでしょう。


 部屋に不法侵入されたときも怖かったですが、今更になってその恐怖を思い出したのとこんな一方的な忠告をされる悔しさが込み上げてきたようで、涙が溢れそうになりました。でも、今の私は“ロイ”なのです。ちゃんと仕事をしなければ────。


「お客様ぁっ、こちらビールのおかわりでございます!」


 その時、私の手から空のグラスを奪い取り、代わりになみなみとビールが注がれた新しいグラスをどん!と私と銀髪男の間に置いた人物が現れました。


「他にもご注文があれば、わたしがお聞きしますから!だから────おじょ、ロイさんに手ぇ出したらぶっ殺しますよ!このナンパ野郎!!」


 そう言いながら銀髪男を威嚇し出したのは、エドガーを警戒して付いてきたアニーでした。さすがに毎晩はやってこないだろうからと説得したのですが、どうしてもついていくとトーマスの許可も貰って一緒にきてしまったのです。というか、トーマスまでもがついてくると言い出していたのでなんとかアニーだけにしてもらいましたが。さすがにトーマスまでもが私についてきたら、酒場でトラブルがあったと両親にバレてしまいます。


 ちなみに侍女のお仕着せではなく、酒場用のウエイトレスの姿をしています。本当は男装したがっていたのですが、アニーは私と違って胸が大きいせいで無理だったのです。私は……まぁ、布を巻いて誤魔化せばなんとかなるくらいですので問題はないのですが。いえ、それは置いといて。


「ちょっ、アニー?!お客様になんてことを……!」


 今の私はあくまでもバーテンダーのロイです。そしてアニーも今はウエイトレスという立場なのですから、お客様にこんな暴言を吐いてはお店の評判に関わってしまいます。せっかく勉強のために働かせてもらっているのに、私のせいでお店の経営が危うくなってしまったら大変です!


「へぇ……」


 銀髪男がアニーを見て、にんまりとした笑みを見せました。そのあまりに不審な笑みに、もしやクレームを訴えるつもりでは……?!と警戒してしまいます。酒場にやってくる男はエドガー程ではありませんが、多少気が荒い人間が多いのは事実です。さらにその相手が自分より弱い女性となれば強気な態度でむちゃな要求をしてくる場合もあります。そんなトラブルを避ける為に私は男装しているのですが、やはりアニーはなにがなんでも連れてくるべきではありませんでした。いえ、今はそんなことよりも、もしもこの人がアニーに何かするつもりなら全力で阻止します……!


「……ウエイトレスさん、面白いね!さすがはロイくん、人気者だなぁ。そんなに威嚇してこなくても、何もしないって。でもまぁ……」


 そう言って、銀髪男は新しいビールのグラスを受けとり、楽しそうに笑ったかと思うと────ビールを一気に飲み干し、空になったグラスを私の目の前に突き付けながら口を開きました。




「箱入りのお嬢様には荷が重いって話さ」





 その、真意が読み取れない笑みに私とアニーまでもが動きを止めます。この言葉でアニーにも私が女であることが彼にはバレているのだと伝わったのでしょう。両親との約束で酒場で働く事の条件に私の身元がバレない事は必須でした。アニーもそれはわかっているので複雑な雰囲気を読み取ったのか「ぐぬぬ」と口を紡ぎました。ここで変に事を荒立てても私にとって良い方向に行くとは思えなかったのでしょう。


 先程の忠告といい、一体この人は何を考えているのか。ただわかるのは、ものすごく馬鹿にされているということだけです。


 女だから。貴族のお嬢様だから。そんな私には何も出来ないのだからおとなしくしていろと……。


「…………」


 私が何も言えずにいると、銀髪男はまたもやにんまりと不審な笑みを浮かべると私の目の前にチャリンとお金を置きました。


「お会計、これで足りる?」


「えっ。あ、はい……」


 慌てて金額を確認すると、銀髪男はヒラヒラと手を振り「ごちそーさま」と店を出て行ってしまったのです。


「……あ」


 そのまま目を合わすこともなく去ろうとする銀髪男に、思わず「ま、待って……!」と手を伸ばしそうになりますがそれをアニーに止められてしまいました。そして急いで私を店の休憩室へと引っ張り込むと真剣な眼差しで私の手を握りました。


「……お嬢様、あの男は危険な気がします。あまり関わらない方がよろしいかと……。いえ、どうか危ないことはしないでください。アニーの一生のお願いです」


「アニー……それは……」


 戸惑う私はアニーに有無を言わさぬように「今日はもう帰りましょう。しばらくはお店に出るのもお止めください。もちろん執事長様にも報告致しますがよろしいですね?」と早口で捲し立てられ、あまりの悔しさに唇を噛み締めながら頷くしか出来なかったのでした。





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