63 ヘタレは悩む(ジル視点)
「あぁ、今日も言えなかった……」
ラスドレード国を整えるための仕事も一段落ついた頃、オレはとあることに悩んでいた。国王専用の執務室でオレは処理済みの書類に埋もれて頭を抱えていること。それは……。
そう、それはロティーナへのプロポーズである。
オレはロティーナが好きだ。恥ずかしいが初恋だ。これからもオレの隣にずっといて欲しいと思っている。
以前にも雰囲気の流れで「好きだ」と言おうとした事はあったがターイズたちに邪魔されてしまいそれからは色々あって言えず仕舞いだった。
だから、改めて告白してプロポーズしようと思っているのだが……。1度タイミングを逃しているせいか、やたら意識してしまってうまくいかないでいた。
せっかく貿易を口実に婚約指輪も取り寄せたのに!あの姫め、ロティーナを見て気に入ったらしくなにかとオレをからかってくるのだが、そのセンスだけは認めざるえないだろう。そしてかなりの商売上手だ。
「プロポーズが成功したら婚礼衣装はぜひ我が国に御依頼してくださいね♪サービスさせて頂きますわよ~」と見せてきたウェディングドレスのデザイン画はどれもすごく良かった。うん、……ロティーナが着たら絶対可愛いに違いない。だが、そのドレスを着てもらうためにはまず告白をしてプロポーズをしなくてはならないのだ。……もちろん断られたら全て終わりなのだが。だからこそ了承を得られるように
しかし、ドレスを着たロティーナの姿を想像したら余計に緊張してしまっていまだ告白すら出来ていない始末である。ターイズには「なにやってるんだ、このヘタレ陛下」と散々怒られたのは言うまでもない。
この3年の間に、ロティーナは聖女としてラスドレード国の為に頑張ってくれた。
何と言っても医学の進歩だろうか。それまで怪しい薬の開発しかしてこなかった研究者たちを説得してマトモな薬を作らせたのも凄いが、ロティーナから医学の知識を伝授され興味が出たようで医学の勉強のために留学したり薬草の研究をしたり……。ロティーナは「本で読んだだけの知識ですわ」と言うが彼女の愛用本『世界の薬草とその薬効~毒と薬は紙一重~』はその分厚さにゲッソリする程だ。しかもその内容を全て記憶しているなんてすごいとしか言いようがない。『人体の変化に関する原因と症状の1から1050まで』も凄まじい分厚さだったが。
そういえば、『素人でも簡単!ロープを使った罠100選』の本を「おすすめです!」と言っていたがあれはなんだったんだろうか……。
いやまぁ、それはいいんだ。とにかくロティーナのおかげで研究者たちにうれしい変化が起こったのだから。もう変な毒を作る必要がなくなれば無駄な争いも減るだろう。
ロティーナはあれだけ短かった髪もすっかり伸び、なんだか大人びてきた気がする。いや、あれから約3年も経つのだから当たり前か。最近は少し仕事に余裕もできて時々一緒に食事を取る時間も出来たのだが……自覚があるのかないのかオレを悲しげな顔で見てくるし、声をかけるとなぜか逃げる事も多かった。そんな中、やっとまともに話せるタイミングが出来たと勢いをつけて告白しようとしたら勢い余って舌を噛んでしまったこともある。あまりの恥ずかしさにその後まともに顔を見れなかったりもした。
だが、もうすぐ約束の3年が終わってしまう。ロティーナが帰ってしまったら次はいつ会えるかわからないじゃないか。こんなだからいつまでもターイズに「ヘタレ王」と言われてしまうんだ。そんな称号欲しくなかった。
「よし!……今度こそ言うぞぉ!」
「ちょっとまったぁぁぁぁぁあ!!!」
どがん!と破壊音と共に執務室の扉が開いたかと思ったら、そこには鬼の形相をしたロティーナの侍女であるアニーちゃんが仁王立ちしていた。手にモップを持っていたところを見ると掃除に来たんだろうが……その目は今にもオレを始末でもするかのように怒りに満ちていた。え、もしかしてなんか怒ってる?
「ア、アニーちゃん?ここ一応、国王の執務室なんだけど……ノックとか、ほら「不敬罪上等です!!」えぇえぇぇ?!」
そしてアニーちゃんはそのモップの先をオレに向け「お嬢様を悲しませる輩は、たとえ国王だろうと許しません!覚悟ぉ!!」と振り下ろしてきたんだけど……これ、どうしたらいいんだ?!




